あとがき



 現実と虚構を織り交ぜた物語があります。
 例をあげるならば、架空の物語に登場する実在の地名、実在の人物、実在の先端科学技術……そして、実在の神話。
 現実に存在するものをフィクションに登場させることによって、想像の産物である架空の世界は、より強い説得力と奥深さを持つようになります。
 このシナリオでも、日本神話とキリスト教の歴史をクトゥルフ神話に織り交ぜることで、架空の存在である野中一族の実在感を高めるよう試みられています。

 実在の歴史や神話とクトゥルフ神話の関連性を見いだし(もしくは、こじつけ)、シナリオへ反映する試みは古くからされてきました。シナリオ集「療養所の悪 魔」に掲載されている「モーリタニア号」やキャンペーンシナリオ「黄昏の天使」などは、その良い例でしょう。
 この手法はシナリオに説得力や奥行を持たせるのに、非常に効果的な手法です。それが、相手であるプレイヤーの興味ある題材であれば、そ れはなおさらのことです。
 なにも難しいことを言っているわけではありません。
 すでに完成したシナリオのどこかに、現実感を持たせる何かをスパイスとして挿入するだけで良いのです。
 それは、歴史や神話に限ったことではありません。
 実在の人物や、実在の地名、最近ニュースになった出来事でも良いのです。
 たったそれだけのことで、そのシナリオはこれまでよりもぐんとリアリティを持つことになるでしょう。

 また、そうした手法のお手本として、本シナリオは諸星大二郎先生の作品に強く影響を受けております。諸星大二郎ファンならばニヤリとさせられるようなシー ンが、いくつかシナリオ内に 見いだすことが出来るはずです。

 では、みなさんのゲームが、正気度に満ちたものでありますように。

内山靖二郎  

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