第
一章「さあ、アルファコンプレックスの幸福な一日が始まった!」
さて、市民を作成してもらいましょうか?
プレイヤーA:ダイスはなにを使うんですか?
20面1個です。
プレイヤーA:それだけですか?
これまでの数多くのダイスを使い分けてきたゲームとは大きく異なり、パラノイアではプレイヤーの負担を極力減らそうと努力しています。
プレイヤーは私が命じたときに、命じた回数だけ20面ダイスを一個振ればいいのです。
その目に応じて、すべての判定は私が公平に下します。
信じなさい、コンピューターは友達です。
さあ、ダイスを振りなさい。
−−−キャラメイクのシーンは上位クリアランスに属する情報が含まれていため削除−−−
完成しましたか?
全員:はい、UV様。
では、みなさん自己紹介をして下さい。
以降、プレイ中にみなさんはアルファコンプレックスの市民となりきり、互いの市民の名前で呼び合わねばなりません。
それ以外の名で呼び合うことは反逆です。
わかりましたね、市民?
全員:はい、疑いようもなく理解できました。UV様!!
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名前:MO−R−ISE−1 サービスグループ:HPD&MC 秘密結社:イルミナティ パラノイアは今回が初めてという初心者。 思いつきと勢いで行動する傾向があり、そのような性質はパラノイアでは長生きできないこと請け合い。 プレイヤーの年齢も一番若く、「若さ故の過ち」を色々と披露してくれる。 本来ならば、格好のスケープゴートとも言えるのだが、今回はどちらかというと勢い余って仲間を振り回していることが多い。 |
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名前:Rese−R−VED−1 サービスグループ:テクニカルサービス 秘密結社:プロテック 当ホームページの絵描きさんの一人で、真性のゲーマー。 当然、パラノイアは慣れたもので、マイペースな性格もあってか、常に飄々とアルファコンプレックスを生きている。 しかしながら、反逆を見逃さないめざとさは恐るべきもの。時にはゲームマスターも気付かなかったような反逆を指摘して、アルファコンプレックス に血の雨を降らすことも…… 冴えたギャグを飛ばしてくれるのだが、さらっと小声で呟くだけなのでうっかりしていると聞き逃してしまうことが多い。 |
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STAR−R−INN−1 サービスグループ:HPD&MC 秘密結社:コミュニスト 彼もまたパラノイア初心者。 普段は真面目なように見えるが、お馬鹿なゲームをやりだすと歯止めが利かなくなるバカプレイヤー。 星の巡りが悪かったのか、今回のプレイでは序盤から、いろいろとトラブルに巻き込まれている。 もっとも、秘密結社がコミュニストに決定した瞬間、急に生き生きしだすところはパラノイア適性が高いのかもしれない。 それにしても、このキャラクターの反逆的な名前はどうにかならないのだろうか? |
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名前:Tokyo−R−OSE−1 サービスグループ:アームドフォース 秘密結社:アンチ・ミュータント ゲームマスターである私に、いろいろと妙なことを吹き込んでくれる悪友。当ホームページの名付け親でもある。 パラノイアはすでに経験済みで、ゲーム中は無闇にレーザーガンを振り回し、インフラレッドを虐待する危険なトラブルシューターと変貌する。 ただし、あまりのあっけらかんとした態度のため、ちっとも陰惨さがないのはプレイヤーの人徳ゆえなのか…… ハニワのような自画像はなんか不気味ではあるが、実に幸福感がにじみ出していて秀逸と言えるだろう。 |
よろしい、ではシナリオを始めます。
みなさんは、いつものように仕事へ出かける前の朝食をいただくため、食堂に集まっています。
食堂は収容人数3000人ぐらいの、カマボコ型の天井をした、とてつもなく広い体育館のような場所を想像して下さい。
その中央を長いベルトコンベアーが貫いており、その上にはポリカーボネートの皿に乗った灰色のペーストが並んでいます。
これがアルファコンプレックスにおける主食です。
直に匂いを嗅ぐと涙が止まらなくなる強い刺激臭と、スチールのスプーンすら溶かす強烈な味がしますが、食べてもすぐには死なない程度の安全性は保証されてい
ます。
腹を空かせた市民達は、コンベアーに群がり皿を受け取ると、思い思いのテーブルについて食事を始めます。
食べ慣れていない市民などはスプーンをペーストに長く漬けていたため、スプーンを溶かしてしまうなどといった粗相をするものもいましたが、食事はおおむ
ね……失礼しました、完璧に幸福に進んでいきます。
STAR-R-INN-1:いやぁ、コンピューターのくださるお食事はいつ食べても美味しいですね〜
Rese-R-VED-1:当然だね。疑いようもなく、我々は幸福だ。
食堂には、より幸福に食事を楽しめるよう、娯楽としてテレビまで用意されています。
コンピューター万歳!
全員:コンピューター万歳!
Rese-R-VED-1:それにしても、いったいどんな番組が流されているのだろう?
ちょうど食事時の人気番組である「電子顕微鏡の世界」というのが放映されています。
この番組は、様々な金属の電子顕微鏡の映像を延々と流し続けるというもので……ちなみに、今日のテーマはベリリウム(原子番号4の元素。記号Be
原子量9.013)です。
Tokyo-R-OSE-1:すばらしい! なんておもしろい番組なんだ。
Rese-R-VED-1:いよいよ、明日は「ホウ素」か、いゃあ〜、楽しみだなぁ!!
STAR-R-INN-1:まったくです。こいつぁ目が離せませんね。
市民、幸福そうですね。
全員:当然です。幸福は義務です。
よろしい。
さて、楽しい番組も終了し、HPD&MCによるコマーシャルが流されます。
MO-R-ISE-1:コマーシャルなんてあるんですか?
プロパガンダの手段として、コマーシャルは実に効果的なものなのです。
なにしろ、コマーシャルのほうが番組以上に内容のありますから、市民達もより真剣に見てくれるのです。
Tokyo-R-OSE-1:なるほど……
Rese-R-VED-1:では、HPD&MCのすばらしいコマーシャルを幸せそうに鑑賞しよう。
……では、こほん。
「日々、技術革新を続けるアルファコンプレックス!!
(果てしない長さのベルトコンベアーに流れる集積回路の回路を、一本一本ハンダづけしている、数千人インフラレッドの群れが映し出される)
その最新技術の粋を集めたマシーンたち!!
(ずらりと並んだ流線形の未来カーの映像)
唸るエンジン、燃え上がる原子炉!!
(インフラレッドたちがにこやかに笑いながら、ウランをスコップで未来カーの原子炉へと放り込んでいる)
過酷なコース、目にも止まらぬスピード
(未来カーに跳ね飛ばされるインフラレッドたち。下に「進路妨害は反逆です」とテロップが流れる)
第8回・走っていればこの世はユートピアレース
いよいよ、明日開催!!」
MO-R-ISE-1:なんすか、これは?
Tokyo-R-OSE-1:聞いてのとおり、走っていればこの世はユートピアレースのコマーシャルだろう?
Rese-R-VED-1:おい、ちょっと待て。なんか反逆の匂いがしないか?
STAR-R-INN-1:なんですとっ!?
Rese-R-VED-1:コンピューター様に管理されているアルファコンプレックスは完璧のはず。つまり、いつでもどこでも、ここはユートピアのはずだろ
う!
他の市民達:もちろんそうだ!
Rese-R-VED-1:それなのに、「走っていればこの世はユートピア」とは、いったいなにごとだっ! 走っていなければ、この世はユートピアではないと
でもいうのか?
他の市民達:おお〜っ(笑)
Rese-R-VED-1:HPD&MCは、いったいなにを考えてこのようにコマーシャルを作成したのか? 責任者出てこいっ!(ドンとテーブルを叩く)
……ちょうど、きみたちの友人にHPD&MCに所属する市民が二人いるようですが?
Rese-R-VED-1:おお、そうだった。
STAR-R-INN-1:わわわわ、私ですか?
MO-R-ISE-1:わたしらは、悪くないですよ。
Tokyo-R-OSE-1:反逆者はみんなそう言うんだ。レーザーガンを構えます。
すみませんが、市民には、まだレーザーガンは支給されておりません。
Tokyo-R-OSE-1:おっと、いけない。では、みんなで吊し上げよう(笑)
すると、レッド様であるTokyo-R-OSE-1の呼びかけに賛同したインフラレッドのクズ達は、殺気立った顔で二人を取り囲んでいきます。
STAR-R-INN-1:くっ、こうなったら……石を投げつけて、テレビを破壊します。
Tokyo-R-OSE-1:な、なんてことを!(……にしても、アルファコンプレックスに石なんてあるのか?)
STAR-R-INN-1:反逆的なテレビは私が破壊したっ! よしっ、きみたちっ、これからHPD&MCに乗り込んで、あのようなコマーシャルを作成した反
逆者を処刑しに行こうじゃないか!
きみの言葉に感銘したインフラレッド達は拳を突き上げて「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!!」と賛同の叫びを上げています。
STAR-R-INN-1:では、インフラレッドの集団を食堂の外まで誘導したら、こっそりと人混みに紛れて元の食堂へと帰ります……あ〜、やっと静かになっ
た。
MO-R-ISE-1:ええっ、いっしょに行かないんですか?
STAR-R-INN-1:ん、なんのことかね?
Rese-R-VED-1:たくっ、しゃあしゃあと戻ってきやがって。
STAR-R-INN-1:さて、早速、新しいテレビを運んでもらうようHPD&MCに連絡を入れておきましょうか(笑)
HPD&MC職員:ちわっす、テレビをお届けにあがりました。
STAR-R-INN-1:あ、そこの壊れたテレビと交換しておいてください。
HPD&MC職員:わっかりました〜 で、ご請求書のほうは、こちらで?
STAR-R-INN-1:お金を取るのんですか?
HPD&MC職員:あたりまえでしょう(きっぱり)。
STAR-R-INN-1:うむむむ、食堂の責任者を呼びましょう。
食堂の市民:そのテレビはHPD&MCが管理しているものだから、我々は関係ないよ。
HPD&MC職員:と言っておりますが……
STAR-R-INN-1:そんな〜
HPD&MC職員:ところで、いったい誰がテレビを壊したんですか?
市民全員:こいつですっ!(プレイヤー全員がSTAR-R-INN-1のプレイヤーを指差す)
HPD&MC職員:だったら、あなたがクレジットを払うのが当然でしょう?
STAR-R-INN-1:し、しかし、このテレビは反逆的な内容の……
HPD&MC職員:……ちょっと、テレビをつけてみましょうか?
テレビにはインフラレッドのクズ達が押し寄せているHPD&MCの入口の映像が映し出されます。
IRのクズ:あのコマーシャルは、あきらかにコンピューター様への反逆である。責任者を出せっ!
IRのクズ達:そーだ、そーだ!
HPD&MC職員:市民、ちょっと思い出して下さい。あのレースの名称は「第8回・走っていればこの世はユートピアレース」でしたね?
IRのクズ:そのと〜りっ!
HPD&MC職員:市民、このレースの名称は、今回が第8回ということからもわかるように、すでに7回もコンピューター様の認可のもとに開催されてきたの
です……
IRのクズ:うっ……
HPD&MC職員:もし、このレースの名称が市民の言うとおりに反逆ならば、コンピューター様がそれを見逃すでしょうか? しかも、7回も!?
IRのクズ:そ、それは……
HPD&MC職員:このようなまっことくだらない言いがかりで、このセンターに集団で押し寄せるとは……あなたがた、反逆者ですね?
……ZAPZAPZAP
HPD&MCに押し寄せていたインフラレッドのクズたちは、あちこちから飛び交うレーザー光線によって皆殺しにされていき、テレビカメラは、その凄惨な有様
を克明に流し続けています。
MO-R-ISE-1:す、すばらしい光景ですね……
Rese-R-VED-1:まったくです。反逆者が消えていくのは、この上ない幸福です。
HPD&MC職員:……さて、市民STAR-R-INN-1……さきほど、なにか言いかけていたようですが?
STAR-R-INN-1:い、いえ、なんでもありません。いったい、おいくらでしょうか?
HPD&MC職員:300crです。
STAR-R-INN-1:うっ、全然足りない……
HPD&MC職員:では、あさってまでに、きちんと振り込んでおいて下さい。
STAR-R-INN-1:わ、わかりました……
HPD&MC職員:仕事は終わったので、失礼します。
STAR-R-INN-1:……いったい、どうしたらいいんだぁ。
Tokyo-R-OSE-1:おやっ、市民……不幸そうですね?
STAR-R-INN-1:とんでもないっ、わたしは常に幸福です。あたりまえじゃないですか!
Tokyo-R-OSE-1:ならいいんです(笑)
さて、食事の時間が終了して、ほんのわずかな時間ですが食後休憩となりました。
Rese-R-VED-1:おお、休憩時間をいただけるなんて、すばらしい。コンピューター様に感謝しつつ、幸せそうに休憩を楽しむとしましょう。
MO-R-ISE-1:ああ、幸せだぁ〜
すると、食堂の片隅でレッドクリアランスの市民を中心として、なにやら盛り上がっている連中がいます。
Rese-R-VED-1:なにやってるんだ?
Tokyo-R-OSE-1:のぞいてみましょう。
彼らはテーブルの上に合成チョコレートを無数に並べて、なにやら熱心に討論をしています。
市民A:やはり、Aだろう。
市民B:いや、Dだ。
市民C:まてまて、Bのほうが横にすると車に似ているだろう? Bで決まりだっ!
市民D;それを言うんだったら、Cのほうが丸くてタイヤに見えるぞ。
市民A;Aの鋭角的フォルムは、驚異的速度を約束してくれているとは思わないか?
STAR-R-INN-1:……なにを話しているんだ、彼らは?
Rese-R-VED-1:さぁ?(なんか反逆的な匂いがするなぁ)
Tokyo-R-OSE-1:市民、いったい何をしているんです?
市民A;やあ、市民。これは新しい合成チョコレートの分配方法を試しているところです。
Tokyo-R-OSE-1:チョコの分配方法……?
市民A;一度、こうやって私が市民達からチョコレートを集めた後、ランダムな数量配分でチョコレートを配り直すんです。
MO-R-ISE-1:なんのこっちゃ??
市民A;ランダム要素としては、今度のレースの結果が使用されます。具体的に言えば、レースで一位になるマシンを選んだ人は、ここに差し出したチョコレートの
3倍を分配されるのです。しかし、一位以外のマシンを選ぶと、0倍のチョコレートしか分配されないってわけなのです。
Rese-R-VED-1:ふ〜ん、なるほどねぇ(それってつまりレース賭博じゃないか? 危ないことやってるなぁ)
STAR-R-INN-1:おおっ、なんて斬新な分配方法なんだ! ぜひ、私も参加させてください。(こうなったら、これで稼ぐしかないっ!)
MO-R-ISE-1:あ、自分もやってみたいっす!
市民A;もちろん、かまいませんよ、おふたりさん。
STAR-R-INN-1:えっと……で、どんなマシンが参加するんですか?
市民A;AとBとCとDです。
STAR-R-INN-1:……それだけですか?
市民A;我々のクリアランスに伝わっている情報はこれだけです。
Tokyo-R-OSE-1:ちょっとコンピューター端末でレースの情報を調べてみましょう。ポチポチっと……
コンピューター:あなたのクリアランスでは、これ以上の情報を御利用することはできません。
Tokyo-R-OSE-1:ありがとうございます、コンピューター!(だめだこりゃ)
市民A;どうしますか、市民?
MO-R-ISE-1:じゃあ、Aに賭けてみようかな……
市民A;市民、賭けとはなんですか?
MO-R-ISE-1:あ、しまった……
……ZAPZAPZAP
MO-R-ISE-2:どうもどうも、さきほどは失礼しました。
Rese-R-VED-1:ここに長くいるのは危険じゃないのか?
STAR-R-INN-1:えっと……私はランダム要素としてAを選択して、有り金全部のチョコレートを預けたいと思います。
市民A;では、確かにお預かり致します。
STAR-R-INN-1:くぅ〜、ほんとうにいいのか、これで?
Tokyo-R-OSE-1:おや、市民、不幸そうですね?
STAR-R-INN-1:いえっ、疑いようも無く、私は幸福ですっ!!