第 三章・ULTRAVIOLETよりの補足


 やっと、長かった前フリも終わり、ゲームも本編に深く関り合いのある展開を迎えます。
 それがブリーフィングというイベントです。
 これは、私がUVをするパラノイアでは絶対に外すことのできない、実に楽しいイベントのひとつです。
 新米の市民にとってはブリーフィングという言葉自体、馴染みが薄いかもしれませんが、その言葉を辞書でひいてみると、「空軍における(作戦開始の直前に与え る)戦況要約;(一般に)簡単な報告[指令],(報道官などが,新聞記者に対して行う)状況説明」といった内容の説明がされています。
 パラノイアでも、同じような意味でこの言葉は使われており、作戦開始前に市民たちに行う仕事の説明といったイベントとして、ブリーフィングは処理されます。
 市民はブリーフィングルームという部屋に呼び出され、そこでブリーフィングオフィサー(依頼主のようなものです)にミッション(仕事です)を任命され、市民 たちはやっと栄えあるトラブルシューター(冒険者、もしくは探索者のようなものです)となることができるのです。

 さて、ブリーフィングではミッション任命の他にも、もうひとつ、重要なイベントがあります。それはMBDの決定です。
 ルールブックによるとMBDは選択ルールらしいのですが、私の場合は必ず使用することにしています。それほど、愉快で幸福なルールなのです。
 MBDとは、簡単に言えばトラブルシューターの職業のようなものです。
 チームリーダー、装備係、記録係、撮影係などなど、ミッションをスムーズに遂行し、またその様子をコンピューター様とブリーフィングオフィサーへしっかり報 告する為、トラブルシューターチームの中で役割分担をするのです。
 もちろん、たとえミッション遂行中であろうと市民としての基本的義務を忘れてはなりません。そのため、それらを監視する清潔係、幸福係といったものにも人員 が割り振られます。
 コンピューター万歳!
 なお、MBDについてもっと詳しいことを知りたい方は、馬 場秀和ライブラリの「魅惑の海外RPG達:ユーモア/パロディ」の中にある「パラノイア紹介」を参照すると良いでしょう。

 では、基本的な話はここまでにしておいて、もう少し実践的な話に移りましょう。
 ブリーフィングの最大の特徴は、市民が嫌でも自分より上位クリアランスの市民であるブリーフィングオフィサーと接触を持たねばならないこと……

……ZAPZAPZAP


……失礼しました。上位クリアランス市民と接触することが嫌なはずがありません。
 言い直しましょう。
 ブリーフィングの最大の特徴は、市民が光栄にも自分より上位クリアランスの市民と謁見できることです。
 UVにとって、ブリーフィングオフィサーを演じる事は実に楽しい時間です。もちろん、UVが楽しい時間は市民にとっても楽しい時間のはずです。信じなさい、 疑うことは反逆です。
 通常のプレイでは、市民は極力上位クリアランス市民との接触は避けるものですが(その理由はわかりますね? もちろん、些事で上位クリアランス市民のお手を わずらわせたくないからです)、ブリーフィングのときだけは別です。市民たちはミッションの情報を少しでも引き出そうと果敢に上位クリアランスであるブリー フィングオフィサーに質問をしてきます。
 そんな市民達に対し、UVはできるだけ偉そうにふんぞり返り、市民の言動に反逆的な要素が含まれていないかどうかをじっくりと観察していればよいのです。
 生身のブリーフィングオフィサーはコンピューター様以上に危険な存在です。彼らは事あるごとに賄賂を要求し(賄賂は反逆です、市民)、ブーツを舐めることを 強制(これは反逆ではありません)します。一方、コンピューター様には懐も足もありません。つまり、その分だけブリーフィングオフィサーのほうが危険というわ けです。このことをUVは忘れないでください。
 コンピューター様には悪意はありません。しかし、ブリーフィングオフィサーは悪意と私利私欲を持って……

……ZAPZAPZAP


 失礼しました。
 ブリーフィングオフィサーを含めて、アルファコンプレックスのすべての市民は、反逆者以外の市民全員が幸福になるよう日々業務に勤めております。
 ところで、ブリーフィングオフィサーを演じるUVは、市民の態度に応じて、情報を細切れにして、湾曲させ、誤解を招くように、軽く油で炒めて、専門用語を交 えた、難解な言葉で、小出しにするべきです。
 アヒルのような愚鈍さで質問を聞き間違い、ヘビのような執拗さで賄賂と生け贄を要求してください。
 与える圧力は大きく、情報は少なく。これが基本です。
 それでも市民たちは、ブリーフィングオフィサーに質問を続けるはずです。ここで情報を得ることができなければ、この先、どれだけのクローンナンバーを増やす ことになるかわかったものではないからです。
 少なくとも、ブリーフィングルームではミッションに関係することでクローンナンバーを増やすことができます。これは練り歯ミガキ粉に爆殺されるよりは、よほ ど有益なように思われます(実を言えば、些細な違いなのですが)。そのため、市民たちは薄氷を踏むような思いをしながらも、ブリーフィングオフィサーへの質問 を続けようとするのです。
 こうしてUVは、危険を承知で獲物が自分の口の中に飛び込んで来るという喜びを合法的に味わうことが出来るというわけです。
 コンピューター万歳!
 これで、市民もブリーフィングが必要であることがわかっていただけたかと思います。

 さて、そんな楽しいブリーフィングですが、少々、問題もあります。それは、さきほど述べましたMBD試験です。
 ルールブックには、愉快なMBD決定試験用紙(もちろん英語ですが)が付属しており、この試験を受けさせることによって市民の適性(と、反逆者ではないか) を調べるのです。
 この試験の時間は市民にとって非常に愉快で幸福な一時なのですが、一方、UVにとって市民たちが無言で試験用紙と格闘しているのを見守るのは、やや退屈(反 逆的とまではいかずとも)な時間です。
 しかし、だからといって試験を省略してしまっては、市民の幸福な時間を奪い取ってしまうこととなり、明確な反逆と言えるでしょう。
 そこで、私は心理試験を応用した、新型MBD試験を提案します。
 例えば、「あなたは右手にフォークを持っています。さて、左手には何を持っているでしょう?」といった質問をして、その答えに応じて適性のMBDを決定する のです。
 あとは、UVの胸先三寸で市民の適性MBDを決定してください。「右手にフォーク、左手にレーザーガン」という市民にはイクイップメント・ガイ、「左手に電 動ハブラシ」という市民にはハイジンオフィサーといった具合です。そして、気に入らない回答をした市民には、なんやかんやと難癖をつけて処刑してあげれば、こ れまで通りスリリングで幸福なMBD試験も演出できるはずです。
 もちろん、あなたが毎回、ルールブックに付属しているような素晴らしい試験を準備することが出来て、それでいて市民たちが試験を終了するまで待ち続けること に苦痛を感じない辛抱強いUVであるのならば、この方法は使う必要はないでしょう。


 では、今回のリプレイを参考にしてみましょう。
 あれだけ言っていたにもかかわらず、私の演じるブリーフィングオフィサーは、実に簡単にミッション情報を市民に伝えています。
 これは、これまで延々と述べてきたことに相反する行動です。
 いったいどういうことでしょうか!?

 これは、別に、私が急に慈悲の心に目覚めたからというわけではありません(常に私は慈悲深いUVです)。
 理由は単純で、ここであまり時間を使うと、これから先に用意したシナリオのイベントに使う時間が少なくなってしまうと考えたためです。よって、少しばかりブ リーフィングのシーンを省略したのです。
 このように、UVとは実に気紛れな存在であるということも、市民は理解しておくべきでしょう。

 では、今回はこれまで。
 市民の幸福を祈ります。
 幸福は義務です。


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