第 四章・ULTRAVIOLETよりの補足


 ようやくのことでブリーフィングを終了して、めでたくトラブルシューターとなった市民たちは、いよいよ任務につくわけですが、任務の第一歩は酒場での情報収 集でも、事件現場の検証でもなく、装備品の支給を受けることとなります。
 どんな優秀なトラブルシューターであっても、レーザーガン無しではミッションをクリアーすることはできません。
 また、ミッションの内容によっては、一般には出まわっていない特殊な装置、重要施設への立入許可書、予備の歯ブラシといったものが必要不可欠となってくるこ ともあります。
 そのため、トラブルシューターたちはこれらの支給を申請をするため、PLCなどを訪れるのです。
 しかし、そこにはコンピューターや上位クリアランスに匹敵するほどの障害(なぜ、前述のふたつが障害なのですか、市民?)が待ち受けています。
 それが、お役所仕事です。


 例えば、みなさんも実生活にてちょくちょく体験したことがあるだろうと思うのですが、難解でまわりくどい文章で書かれた分厚い手引書を渡され、わずかなミス も許されない完璧な申請書を作成した上、中東の紛争地域へ迷いこんでも完全に自分の身分と立場を証明できるだけのありとあらゆる公的書類を用意し、ミノス王の 迷宮のごとき役所内部をさ迷い、時間内に指定された場所を探しあて、無礼極まり無い役人の態度に対し、従順で礼儀正しい国民をオスカー並の演技力で演じ、岩に 苔のむす長い時間を待たされたのち、やっと一ヶ月分の公営駐輪場の使用許可書を発行してもらうといったことです。
 もう少しわかりやすく説明すると……
 延々と待たせる。
 難解な書類を書かせる。
 態度悪く接する。
 難癖をつける。
 これらは、すべてお役所仕事です。
 賢明な市民ならば、これらの仕事とUVの仕事に多くの共通点を見出すことでしょう。
 このことからも、パラノイアとお役所仕事が切ってもきれない関係であることは伺えると思います。

 さて、実戦的な話に入りましょう。
 結論から言えば、レーザーガンを突きつけない限り、お役所仕事を実践するPLC等の職員が、市民に対して有益な動きを見せることはありません(レーザーガン を突きつけた瞬間、相手が有益な動きを見せるか、逆にレーザーバズーカーで吹き飛ばされるかはやってみなければわからないことです)。
 よって、職員を演じるUVは、市民の申し出に対し、まず「申し訳ありませんが、それはできません」と答えるべきです。「なぜできないのか?」という理由は、 「できません」と答えてから考えても遅くはありません。反逆者は、まずレーザーガンを撃ってから尋問をするのと、同じ要領ですね。
 実際、理由はどんなものでも良いのです。
 それどころか、くだらないもの、つまらないもの、納得できないものであるほどよいと言えるでしょう。
 なぜなら、下手に納得のできるもっともな理由を答えてしまうと、市民たちは次の手を打ちようがなく途方に暮れてしまうだろうからです(途方に暮れることは反 逆です)。
 市民に尻尾をまいて逃げ出されるよりは、いろいろと知恵を絞り果敢にアタックしてもらったほうが、UVとしても相手のしがいもあるというものです。逃げる獲 物より、向かってくる獲物を撃ったほうが楽しいものであることは、賢明な市民ならば同意してくれることと思います。


 ところで、今回のリプレイでは、ストーリー性といった概念はすっぱりと無視して、PLCの次はHPD&MCへといった具合に、似たような展開が何度も繰り返 されています。賢明な市民ならば、このリプレイは文章構成がまるでなっていないと感じたことでしょう。
 しかし、実際のプレイでは、このリプレイに記した内容の数倍の手間がかかっています。プレイ時間でいえば、約90分強。キャラクターメイキングの時間を除い た今回のゲームのプレイ時間は4〜5時間ですから、なんと1/4近くが装備支給などということに費やされていることになります。
 しかしながら、これが時間的に長いと判断するのは、やや早急と言えましょう。
 私としては、パラノイアのゲーム全体の展開からして、装備の支給が終了すれば、ひと山終了したといった気持ちになります。
 ファンタジーRPGで言えば、すべての情報収集が終了して、いよいよラスボスが待ち受けるダンジョンへ潜ろうか、といったところでしょうか。
 パラノイア的に言えば、「準備は整った。あとは派手に殺すだけだ」といったところですね。
 さて、このころになると、プレイヤーのほうもいいかげん無意味に非協力的な職員たちの相手をするのにうんざりしているころなので、今後につながるメインのイ ベントではUVの思惑通り、自殺的とも思える無謀な行動をしてテーブルに笑いをもたらしてくれるものなのです。
 なにしろ、面倒な準備は終わったのです。あとは、残ったクローンを派手に消費して、このゲームの目的である馬鹿げた大騒ぎを楽しめるというわけです。
 すなわち、今回のリプレイであるような、延々と続くお役所仕事との戦いは、ぎりぎりまでプレイヤーたちにフラストレーションを溜めさせることによって、今後 のシナリオのクライマックスを盛り上げるための前準備といえるのです。


 といったわけなので、賢明なUVとしては、いらだつ市民たちの険悪な視線など気にすることなく、椅子にふんぞり返って丹念に自分の爪を磨いていれば(もしく は、鼻毛を抜いていれば)良いでしょう。
 それが今後の展開をより面白くするための、唯一無二の行動なのです。
 疑うことは反逆です。

 では、今回はこれまで。
 市民の幸福を祈ります。
 幸福は義務です。


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