第 六章「華麗なる無駄な努力」


キャラクター・プレイヤー紹介
自画像
名前:MO−R−ISE−3
サービスグループ:HPD&MC
秘密結社:イルミナティ

MBD:ハッピネスオフィサー

 今回は、各市民の得意技能を紹介。市民たちが、どのような技能を必要と思い修得しているかを見ることで、このパラノイアの世界観の一端をするこ とが出来ることと思います。なお、技能のルール解釈には、私の主観が入っていることを断っておきます。

 彼の得意技能は車載武器と、偽造。
 ほぼすべての手続きに、各種様々な書類が必要となるアルファコンプレックスにおいて、迅速なミッションを遂行するためには、時として書類の偽造 というものも必要となってくる。
 ただ、わからないのが車載武器の技能。レーザーガンならばアルファコンプレックス中に満ちているが、あまり市民が車載武器を手に入れると言うこ とはない。したがって、こんな技能をとっても無駄となることが多いのだが……おそらくこれは、今回のシナリオをプレイする前にチキチキマシン猛 レースのビデオを見せたことによる影響かと思われる。
 
名前:Rese−R−VED−2
サービスグループ:テクニカルサービス
秘密結社:プロテック

MBD:C&Rオフィサー

 アルファコンプレックスを飄々と生きる彼の得意技能は、賄賂と爆破技術。
 賄賂は偽造よりは安全な世渡り術であるが、最大の問題点はクレジットがないことには役に立たないということである。実際、この技能に成功したと しても要求される賄賂をとても払うことが出来なく、そのまま自滅するというパターンも多い。
 逆にクレジットが十分にあれば、この技能は必要ないという考え方もある。なにしろ、賄賂というものは必要以上に払ってもあまりバチの当たらない ものであるからだ。
 もっとも、十分なクレジットなど手にしたことがないというのが市民の声だろうが……
STAR−R−INN−2
サービスグループ:HPD&MC
秘密結社:コミュニスト

MBD:ハイジンオフィサー

 コミュニストである彼の得意技能は、コミュニスト・プロパガンダである。
 他人にコミュニストの思想を啓蒙するという技能であるが、どちらかといえば洗脳するといったほうが正しい。
 まるで伝染病のように市民の脳にコミーの危険な知識を植え込み、どんどんとその勢力を広めていくという……他の市民にとっては恐怖の的の技能で ある。
名前:Tokyo−R−OSE−2
サービスグループ:アームドフォース
秘密結社:アンチ・ミュータント

MBD:チームリーダー

 我らがチームリーダの得意技能はペコペコすること。つまりは、頭を下げて、上司の靴をなめるための技能だ。
 多くの市民は誤解しているだろうが、ペコペコするにも高度な作法が必要なのだ。
 頭を下げる角度、回数、タイミング。靴のなめるときの舌使い、音の立てかた、唾液の分泌量など、実に複雑なものである。
 それらを上手くこなすためには、この技能が必要というわけだ。実にパラノイアらしい技能で、私のお気に入りのひとつである。

 さて、みなさん幸福な朝がやってまいりました。

全員:幸福そうに起きましょう!

 よろしい。
 では、みなさんの参加する「走っていればこの世はユートピアレース」のコースが発表されました。
 コースはV字型をしており、コースの全長は20キロメートルです。
 折り返し地点で係員の市民より通過証を受け取り、ゴールまでたどり着いてください。近道をしようとしても、この通過証が無ければゴールは無効となるので注意 してください。

全員:了解です!
Rese-R-VED-2:(コースをじっと見つめて)諸君、このコースを見て判明したことは、我々は右にしか曲がれなくてもオッケーだということだ。
MO-R-ISE-3:おおっ、素晴らしい!
Tokyo-R-OSE-2:サポートとして別の車が追走することは許されているのでしょうか?

 大丈夫です。
 このレースはアルファコンプレックス内の施設をコースに利用したもので、普段は市民たちの奉仕の場となっている場所を走り抜けることになります。そのため、 コース上に市民が迷い出ることもありますが、進路妨害は反逆ですので安心して走ってください。

Tokyo-R-OSE-2:なるほど、わかりました。
MO-R-ISE-3:それに、我々にはブルー様の紋所がついておりますよ!

 レースカーの車体は赤く塗ってありますが、もし蒸発してもブルーのエンブレムだけは燃え残ることでしょうね。

MO-R-ISE-3:はははは……(乾いた笑い)
Rese-R-VED-2:ところで、スタート時とゴール時では、同じ車体でないといけないのでしょうか?

(少し考えてから)当然です。少々の変形は誤差の範囲ですが。

STAR-R-INN-2:素晴らしい!


 ここで他の参加者たちも判明します。
 エントリーナンバー1番は、トラブルシューターの搭乗するマシンです。
 形状は赤いカウンタックのようなもので、小型のコンピューターが搭載されております。

 エントリーナンバー2番は、ザ・キング・オブ・ブラック号。
 闇に包まれた謎のマシンです(形状は狂った犬型ロボットで、お腹に原子力のマークがでかでかと描かれている)。

STAR-R-INN-2:これは……なんちゅーか。イヤなマシンですね。

 エントリーナンバー3番は、ファイアーボンバー号。
 新型エンジンを積んだハイテクマシンです(形状はSLのような形をしている)。

MO-R-ISE-3:この機関車の後ろに書いてある「999」の数字は?

 999番目の試作機であるという意味です。

MO-R-ISE-3:なるほど(笑)
Rese-R-VED-2:こいつぁ、強敵だぁ!(Rese-R-VED-2は秘密結社よりの命令で、このマシンを優勝させなくてはならない)
Tokyo-R-OSE-2:クリアランスは何なんだろう?
MO-R-ISE-3:車体が黒いから、インフラレッドですよ。
Tokyo-R-OSE-2:それはやりやすい(笑)

 最後、エントリーナンバー4番は、赤きプロレタリアート号。

全員:(苦笑い)
Tokyo-R-OSE-2:これは……反逆ではないんですよね?
Rese-R-VED-2:プロレタリアート……よく意味のわからない言葉だ(笑)
Tokyo-R-OSE-2:それにしても、すごい。三倍速そうですね。

(赤きプロレタリアート号はヤンマーの燃える男の赤いトラクターに酷似しているため、その写真は肖像権の関係上公開できない。ただし、赤いトラクターと違う点 は、ボンネットに士官用の角がついていること。この角の効果により、このマシンは三倍の速度で走行するという噂があるが、当然、噂は反逆である)


Tokyo-R-OSE-2:では、チームメンバーの編成を考えよう。
MO-R-ISE-3:そうですね。
Tokyo-R-OSE-2:まずは、マシンに乗る市民がひとり。そして、折り返し地点で待機している市民。サポートカーに乗る市民が数名というところで……
STAR-R-INN-2:あの、サポートカーで我々のマシンに追いつけるのでしょうか?
全員:………(しばしの沈黙)

 先回りをしたほうが無難でしょう。

Rese-R-VED-2:だったら、わざわざ苦労して車を調達してきた必要性が……

 何かあったとき、コースがV字型をしているのでショートカットすることができます。

Rese-R-VED-2:なるほど。サポートカーはショートカットしてもいいんですね。
Tokyo-R-OSE-2:あたりまえだろう。では、肝心のドライバーの選択だが……

(市民たちの、誰一人も自動車を運転する技能を持っていないのである。3回に1回成功するぐらいの成功率であるSTAR-R-INN-2か、一番成功率が高い という厳しい状況)

Tokyo-R-OSE-2:ここはひとつ、バナナバズーカーを車に搭載して、MO-R-ISE-3にドライバーとなってもらおう。
MO-R-ISE-3:な、なんでですかぁ〜
Tokyo-R-OSE-2:もう一度、繰り返す。レーサーになってもらおう!
MO-R-ISE-3:わ、わかりました! チームリーダーの命令は絶対です!!(ハツラツとした口調で)

(MO-R-ISE-3はなぜか車載武器の技能が高いため、マシンに搭載することによって必然的に車載武器となったバナナバズーカーを有効利用するという口実 から、強引にドライバーに任命されたのである。さすがはチームリーダー。あざとい手段を使う)

Tokyo-R-OSE-2:さて、他に我々がやることは……
Rese-R-VED-2:当然、撮影さ!
Tokyo-R-OSE-2:うん、C&Rオフィサーの当然の職務だね。
Rese-R-VED-2:そんなわけで、私は折り返し地点にて待機させていただきます。
STAR-R-INN-2:なぜ、そんところで?
Rese-R-VED-2:疑いようもなくトップでやってくるはずの我らがマシンを、地平線の彼方からという斬新なアングルで撮影するのです。

 それは素晴らしいですね。

MO-R-ISE-3:それより一緒に乗って撮影した方が良くないですか?
STAR-R-INN-2:そうそう、地平線からならばコンピューター様のカメラでも撮影できますよ。やはり斬新なアングルを求めるならば、マシンに同乗せね ば……
Tokyo-R-OSE-2:では、MO-R-ISE-3とRese-R-VED-2がマシンに乗るということで決定ですね。
STAR-R-INN-2:疑いようもなく!(笑)
Rese-R-VED-2:ああ、なんて幸福なのだろう……

STAR-R-INN-2:では、私はゴール地点にて疑いようもなくトップを爆走してくる予定の我らがマシンを待ちかまえるという役で……
全員:おーい!
Rese-R-VED-2:せっかく清掃車に乗っているんだから、カーリングのように我々の進む先を磨いていくというのはどうだろう?
MO-R-ISE-3:すぐ追い抜いてしまいますよ(笑)
Tokyo-R-OSE-2:ところで、コミーたちが我々のレースを妨害できないように、コースに爆発物を仕掛けておくというのはどうかな?
MO-R-ISE-3:素晴らしい、ではさっそく私はトイレに……(MO-R-ISE-3は背中に巨大な爆弾を背負っている)
Tokyo-R-OSE-2:しかし、どうやって火をつける?
MO-R-ISE-3:アルファコンプレックスにはライターは無いんでしたっけ?
Rese-R-VED-2:我々は導火線の長さの心配をしているのだ。(MO-R-ISE-3の所持する爆弾は導火線が数秒で燃え尽きてしまう特別製なのであ る)
MO-R-ISE-3:あ、そうか。(実にアホだ)
Tokyo-R-OSE-2:自動発火装置を作るというのは……無理か(笑)
STAR-R-INN-2:ゴシゴシボットに命じて、火をつけてもらうというのは?
Rese-R-VED-2:そんなに便利に使えるものなのか?
STAR-R-INN-2:「ゴシゴシボット君、あの汚らわしい導火線を焼却処分してしまってくれ」とお願いするのです(笑)
Rese-R-VED-2:それじゃあ、一緒にゴシゴシボットも爆発してしまうじゃないか。
STAR-R-INN-2:そうですね。(ケロッとした顔で)
Rese-R-VED-2:おまえには、ゴシゴシボットに対する愛が無いのか?(笑)

 市民、あまりゴシゴシボットに頼っていると、いつか手ひどいしっぺ返しが帰ってくることをお忘れ無く……

MO-R-ISE-3:しょうがないですから、とりあえず車に積んでおいて、相手に投げつけた後、レーザーガンで撃つことにしましょうよ。
Rese-R-VED-2:そーするかー

 レーススタートまで一時間を切りましたが、コースの下見には行かないでよろしいのですか?

Tokyo-R-OSE-2:おお、急いで行こう。


 では、スタート地点に到着しましたが、なぜかこのあたりの床は非常にきれいに磨かれており、チリひとつありません。

Rese-R-VED-2:なんでだろう? まあ、先へ進もう。

 さらに進むと、徐々に通路が狭くなっていきます。
 そして、いきなり開けたドーム状の場所に出ます。
 ここはアルファコンプレックスの市民たちに広く愛されている食事を日々生産している、フードバットと呼ばれる食料工場です。
 床は無く、部屋のすべてが巨大な桶となっており、その中には市民たちの一般的な食事である灰色のゲル状の物体が、不快な刺激臭を漂わせながら、ブクブクと泡 立っています。
 時々、天井に開いたシューターから黒い服や、赤い服を着た、見慣れた人型の物体がボトボトと落ちて、灰色の物体の中へと沈んでいきます。

全員:…………(苦い沈黙)
MO-R-ISE-3:私は何も見ませんでしたよ!
Tokyo-R-OSE-2:ああ、そうだね。
STAR-R-INN-2:我々のマシンにはホバリング機能はついているのでしょうか?

 ついていません。

Tokyo-R-OSE-2:では、どうやってここを通り抜ければいいのでしょうか?

 知りません。

全員:…………(またもや沈黙)

 市民、不幸そうですね?

全員:そんなことはありません!
Rese-R-VED-2:うーん、どうやっていいかはわからないが、とりあえず先へ進もう。
STAR-R-INN-2:そんなんでいいんですか?
MO-R-ISE-3:我々はスピードを落として、他の車がどうやって先に進むかを見てから行くというのはどうでしょうか?
STAR-R-INN-2:おお、ナイスなアイデアだ!
Tokyo-R-OSE-2:でも、我々のマシンはスピードを落とすことは出来ないんだよなぁ〜、なんでかは言えないけど……(トラブルシューターのマシンは スピードを落とすとメルトダウンする危険性があるのである。それに気づいているのは、Tokyo-R-OSE-2とRese-R-VED-2だけなのだ)

 では、市民たちが折り返し地点へと近づくと、通路を巨大なゴシゴシボット、通称モビーディックが塞いでいます。
 どうやら今回の栄誉あるレースのコースを清掃するために、特別に呼ばれたゴシゴシボットのようです。
 その大きさは通常のゴシゴシボットの20倍はあり、トラブルシューターの乗っている清掃車など一瞬で粉々にしてしまうほどの清掃力を持っています。
 それは非常にゆっくりと――具体的には時速2センチの速度で床を掃除しています。

Tokyo-R-OSE-2:……床が削れそうな鈍さだ。
MO-R-ISE-3:通り抜けることは出来ないんですか?

 毎秒3万回転している床磨きブラシの間をすり抜けることが出来れば、通り抜けることは出来ます。

MO-R-ISE-3:…………
STAR-R-INN-2:とてもレース開始までに掃除が終わるとは思えませんね。
Rese-R-VED-2:まあいい。他に通路はありますか?

 コースから外れますが、サポートカーのショートカット用の通路ならあります。こちらから折り返し地点へ向かうことは可能です。

Rese-R-VED-2:では、その通路を利用しましょう。

 折り返し地点には、栄養ドリンクがずらりと並べられており、奥には大会委員長が鎮座しております。

STAR-R-INN-2:栄養ドリンクって……マラソンじゃないんだから。
Rese-R-VED-2:ドライバーが飲むんだろう。
MO-R-ISE-3:さすがはアルファコンプレックスのレース。素晴らしい配慮です。
全員:幸福だなぁ〜
Tokyo-R-OSE-2:大会委員長に挨拶もしておこう。
MO-R-ISE-3:クリアランスは何色ですか?

 グリーンです。

MO-R-ISE-3:グリーンですか……
Rese-R-VED-2:途端に口数が少なくなったな。
STAR-R-INN-2:よけいなことは言えませんからね。
Rese-R-VED-2:ここは軽く流して、先へ進もう。
Tokyo-R-OSE-2:(コースの地図を見ながら)この四角い部屋はなんだろう?

 ああ、市民。そろそろ時間がやって参りました。
 スタート地点に集合してください。
 パパラパッパラララパ〜

MO-R-ISE-3:ええ〜っ、まだ何にも下調べしてませんよ〜
STAR-R-INN-2:正確には、下調べをしたが、何の役にも立っていない(笑)
Tokyo-R-OSE-2:とりあえず、最初のフードバットだけでもクリアーする方法を考えねば。
STAR-R-INN-2:高速で進めば、水上だって走れるのでは?
Tokyo-R-OSE-2:ゴルフの水切り打法だね。
Rese-R-VED-2:あれはボールがトップスピンをしているからであって……
Tokyo-R-OSE-2:マシンもトップスピンさせれば(笑)
Rese-R-VED-2:死んでしまうわ!
MO-R-ISE-3:私の爆弾の爆風で吹き飛ばされた勢いで、フードバットを飛び越すというのはどうでしょうか?
Tokyo-R-OSE-2:我々のマシンの耐久性は?

 カウンタック並です。

Tokyo-R-OSE-2:駄目だ、そりゃ。
Rese-R-VED-2:そうだ、カウンタックならガルウィングを開けば空を飛べるはず!

 飛びません。

Rese-R-VED-2:じゃあ、リアウイングもつけて……
Tokyo-R-OSE-2:うんうん、ガルウィングだけでもすごいのに、リアウイングまであれば、そりゃあもう飛ぶしか(笑)

 飛びません。

Tokyo-R-OSE-2:ちぇっ!
Rese-R-VED-2:大規模なテロ活動が発生して、大量に人死にが出れば、フードバットが一杯になって通れるようになるのでは……?
STAR-R-INN-2:それいいですね(笑)
MO-R-ISE-3:怖いこと考えるなぁ。
Rese-R-VED-2:まあいい、とにかく万全の準備をしておいたということにして、レースに参加しよう!
全員:うん、そうしよう!

(結局、何にもしてないじゃないか……)


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