第 八章・ULTRAVIOLETよりの補足
とうとう、このパライノアリプレイも最終回となりました。
今回のリプレイではデブリーフィングというものを扱っています。
デブリーフィングでは、これまで斬新なアングルでトラブルシューターの奉仕を撮影してきたC&Rオフィサーのビデオと、市民たちの奉仕状況を記録していたロ
イヤリティオフィサーの記録用紙がブリーフィングオフィサーに提出されることとなります。
ブリーフィングオフィサーはその記録を参照して、今回のミッションにおいて反逆的行動を行った者はいないかをチェックし、該当者がいた場合には、その市民を
速やかに処刑します。
こうして、トラブルシューターの中から反逆者がいなくなり、ブリーフィングオフィサーの破壊衝動が満足した時点でデブリーフィングは終了します。
ただし、今回のリプレイでは、このデブリーフィングがだいぶ省略されています。
その最大の理由として、今回のトラブルシューターチームにロイヤリティオフィサーがいなかったことがあげられるでしょう。
トラブルシューターの活動報告をするロイヤリティオフィサーがいなければ、せっかくのデブリーフィングも退屈なものとなってしまうことでしょう。
しかし、これは偶然ではありません。
私は意識してトラブルシューターがロイヤリティオフィサーとならないようにしていたのです。
ちなみに、MBDは6種類あるので、今回のように4人プレイヤーだった場合、2つのMBDがあまることになります。そういうとき、私はロイヤリティオフィ
サーを優先して外すようにしています。
その理由について説明しましょう。
ロイヤリティオフィサーについて知ることは、デブリーフィングについて知ることにつながるからです。
ロイヤリティオフィサーはミッション中のトラブルシューターの行動を記録します。
多くのロイヤリティオフィサーは反逆を目撃しても、その記録を残すだけです。彼らの仕事は報告であり、反逆者の処理はデブリーフィングにおいてブリーフィン
グオフィサーが為すべき事だからです。
もちろん、明白な反逆(見逃せば、自分が反逆者となりかねないもの)に対してはレーザーガンで対応をすることでしょうが、反逆であるかどうかの判断が微妙な
場合、ロイヤリティオフィサーは記録することに留めておきます。もっとも、その末尾は「以上のように市民○○の反逆的傾向は高いと考えられます」と締めくくら
れていることでしょうが。
疑心暗鬼の強い市民(すなわちほとんどの市民)は、ロイヤリティオフィサーのメモ用紙に自分がどのように記録されているか関心を持つことでしょう。
その記録を奪うために、最初は優しく、後に激しく、チョコや賄賂、レーザーガンなどでロイヤリティオフィサーに迫るはずです。
ところが、やがて市民は気づくことになります。
「どうせ、ロイヤリティオフィサーの記録によって処刑されるのは、デブリーフィングのとき一回だけではないか。だとすれば、ロイヤリティオフィサーに対する労
力(賄賂やレーザーガンのエネルギーパック)をもっと別のところに使用すればよいのではないだろうか」
これはとてもゲーム的ですが、冷静な判断です。
いかに鬼のようなブリーフィングオフィサーといえども、ロイヤリティオフィサーの記録中で市民が3回反逆していたから、3人のクローンを処刑するということ
はありません(おそらく)。
どんなに反逆をしていようが、クローンが1人処刑されれば、笑ってすべてを水に流すのがパラノイアの潔いところだからです。
つまりはどんなにロイヤリティオフィサーに弱みを握られていようが、増えるクローンナンバーは最大で1しかないということです。
そして、開き直った市民は、デブリーフィングでロイヤリティオフィサーの報告によりクローンナンバーがひとつあがることはしょうがないと考えるようになるの
です。
どうせデブリーフィングが終わればゲームは終了なのです。たとえ市民のクローンが全滅したところで、少々、帰りの荷物をまとめるのが早くなるだけなのですか
ら……
かくして、ロイヤリティオフィサーの脅威(価値と同意語です)は低くなり、ひいては彼の活躍の場であるデブリーフィングの脅威(価値と同意語です)も低くな
るというわけです。
もちろん、有能なロイヤリティオフィサーは自分の脅威(くどいようですが、価値と同意語です)を高める奉仕をプレイすることが可能かもしれません。
しかしながら、今回のリプレイでは、肝心要のロイヤリティオフィサーが存在していないので、結局、デブリーフィングがおざなりに処理されていることはやむを
得ないことなのです。
なお、蛇足ですが、アルファコンプレックスには鶏も卵も存在しません。
それに、ゲームが終盤に近づけば近づくほど、市民は自分のクローンに執着しなくなるものです。そんな市民を相手に長々とプレイをしていても、さほど盛り上が
りません。
そんな状況でのデブリーフィングならば、さっさと終わらせてしまうほうが良いというものです。
デブリーフィングが終わったら、今度は闇のデブリーフィングとも言える秘密結社の指令に関する処理です。
ここでも市民たちは処刑される危険があります。
その対象となるのは、秘密結社の指令を達成できなかった市民たちです。
しかしながら、幸運にも秘密指令を達成した市民には、ブリーフィングオフィサーよりも気前の良い報酬が待っているものです。
なにしろ、コンピューターへは無料奉仕が当然ですが、より俗的な存在である秘密結社は互いの利益関係によって成り立っている場合が多いからです。そのため、
成功者にはそれ相応の褒美が待っているのです。
それに、普通、市民は別々の秘密結社に属しているものです。
よって、ひとつの秘密結社から報酬を与えれば、必然的に市民ひとりに報酬が与えられることになります。
これはパラノイアにおいてとても大事な「ひとり勝ち」というシチュエーションを作り出すのに簡便で効果的な方法です。
UVはひとり勝ちした市民を褒め称え、優遇してあげてください。
そして、他の市民たちには、劣等感と屈辱を植え付けてやってください。
このようなプレイを続けている限り、市民たちは協力という言葉を学ぶことはないでしょう。つまりはいつまでもアルファコンプレックスにはパラノイアな市民が
蔓延し続けるというわけです。
コンピューター万歳!
では、これですべてのUVよりの補足が終了しました。
以後、これをすべて読んだUVは完璧な奉仕が可能となることでしょう。
……はて?
UVはすでに完璧なのですから、この記事を読んで完璧になったUVは、それ以前はいったい如何なるUVだったのでしょうか?
まあ、いいでしょう。
では、市民の奉仕に期待します。
幸福は義務です。