このシナリオの最大の敵である、忌まわしきチョー=チョー人は意外なところに隠れています。
(本シナリオより抜粋)


1,はじめに

 このシナリオは「クトゥルフの呼び声・改訂版」に対応したものです。
 シナリオの舞台は、現代日本の普通の住宅街です。季節はやっと涼しくなり始めた初秋のころです。
 プレイヤーキャラクター(以降、探索者)は二人から四人ぐらいを推奨します。ただし、探索者が二人だけの場合、クライマックスの戦闘バランスが厳しいものに なるので、探索者の戦闘能力に応じて敵の耐久力を減らすなどの対応をしてください。
 探索者の自宅の隣家がシナリオのメインの舞台となります。キーパーは前もって、プレイヤーにそのことを伝えて、誰がその探索者の役をプレイするか相談をして 決定しておきましょう。
 もし、新しく探索者を創造するのならば、探索者の自宅をアパートにして探索者たちがその住人であることにしたり、もしくは全員が近所同士であるといった具合 にすると良いでしょう。
 このシナリオの醍醐味は、普通の日常の隣で神話的事件が起きているといったものです。そのため、一緒に探索する仲間も、大学教授や私立探偵といったいわゆる 探索者的な仲間たちではなく、ただのお隣さんというようにしたほうが、普通の人々の日常という雰囲気を高めてくれることでしょう。
 また、このシナリオでは《英語》の技能が重要となります。キーパーによっては、義務教育を完了した現代日本人の《英語》の基本成功率値が0%であることを不 自然と感じることでしょう。その場合は、中学校を卒業した探索者は《EDU》×1の《英語》を基本成功値として持っていることにしても良いでしょう。


2,あらすじ

 探索者の家の隣家は、ほとんど人の気配のしない空き家同然の家でした。
 ある日、この家でミイラ化した死体が発見されます。この死体は忌まわしきチョー=チョー人が5年間もの長きにわたってチャウグナー・フォーンとの接触の触媒 として利用していたものだったのです。
 ミイラが役に立たなくなったため、チョー=チョー人はこの忌まわしい儀式を次の段階に移そうとします。それは、ミイラとなった男の一人娘を新しい犠牲者とす ることです。
 チョー=チョー人の呪文の影響で、その娘は惹きつけられるようにして死体の見つかった家で暮らすこととなります。しかし、すぐに彼女は、様々な奇妙な出来事 と遭遇します。
 やがて、探索者はその娘から相談を受け、この事件の真相を探ることとなります。
 探索者は隣の家というゾッとするほどに身近な場所で起きる神話的事件を調査し、狙われた娘を守り、チョー=チョー人の陰謀を暴かねばなりません。
 これまで通りの平穏な生活を取り戻すため、迷惑な隣人には断固とした対応をとるべきでしょう!


3,NPC紹介(ここをク リックすると印刷用の大きなイラストになります)

増田孝則(ますだたかのり)没年50歳 哀れな犠牲者

 若いうちに多額の遺産を継いだことが、彼にとっては不幸の始まりでした。
 もともと怠惰で世間との関わりを嫌っていた彼は、遺産を食いつぶすことによって生活を続けてきました。
 財力に物を言わせて若く美しい女性と結婚し、可愛い一人娘も授かりましたが、この幸せは長くは続きませんでした。
 財産以外に魅力のない彼に妻は愛想を尽かし、娘を連れて家を出ていってしまいます。このことは、彼にとって人生を狂わすほどに辛いことでした。
 悲しみに暮れた彼は、娘を取り戻すために、よりによってあの忌まわしいチョー=チョー人の呪術師と契約を結んでしまいます。そして、これこそが 彼にとって人生最大にして最後の不幸だったのです。
浅井寛子(あさいひろこ)18歳 微妙な年頃の大学生

 今年、大学の英文科に入学したばかりの若い女性です。
 7歳のときに両親が離婚して以来、母親に育てられてきましたが、大学に入ったのをきっかけに一人暮らしを始めて親離れをしたいと考えています。 しかし、過保護な母親に反対されており、二人は反発し合っています。
 自分が世間知らずであることを恥ずかしく思っており、なんでも社会勉強だと考えて積極的に行動しようと考えていますが、無理をしていることは傍 目から明らかです。
 将来は通訳として世界中を飛び回りたいと考え、まずは英語を猛勉強しているところです。

STR10 CON11 SIZ9
INT10 POW8  DEX10
APP14 EDU12 SAN40
耐久力10 ダメージボーナス なし
技能:英語70%、図書館40%、説得50%
浅井千寿子(あさいちずこ)45歳 人生に後悔する中年婦人

 美しい中年婦人ですが、心労のためか顔色の冴えなく、地味な印象を受ける女性です。
 増田孝則の元妻です。増田孝則とは12年前に離婚しました。
 離婚の際、財産家の夫から多額の慰謝料を受け取ったため、生活するには不自由はありませんでした。
 言い寄ってくる男はたくさんいましたが、娘のことが気にかかり再婚をすることもなく、ただただ娘の成長を見届けることだけが生き甲斐の人生を 送っていました。
 ところが、最近、娘との行き違いが多くなり寂しい思いをしています。
 慰謝料を頼りに生きていく母親の姿が、娘の教育上よくないのかとも思い、生活費には不自由していないにもかからず、数年前から知人に紹介しても らった事務の仕事をしています。
 現在は、探索者の家から数時間の距離にある、郊外の高層マンションに暮らしています。

STR7  CON8  SIZ10
INT12 POW10 DEX7
APP16 EDU14 SAN50
耐久力9 ダメージボーナス なし
技能:隠れる50%、信用60%、法律40%


4,シナリオの導入

 探索者の自宅から、このシナリオはスタートします。
 この自宅の場所は、ごく普通の住宅街の中であるほうが、シナリオの雰囲気を高めてくれるでしょう。
 自宅は一戸建てでも、アパートでもかまいませんが、高層マンションなどの探索者の部屋が二階建て以上の高い位置にある家はお勧めできません。

 探索者が夜に自宅でくつろいでいると、隣の家から妙な物音を聞きつけます。
 この時間は夜であれば何時でもかまいませんが、もし、探索者が深夜まで起きているようなタイプの人物であるなら、深夜1時〜2時といった、本当の真夜中のほ うが望ましいでしょう。

 物音は「ホーウ、ボホーウ」といつた、低い角笛を吹いているような音です。それほど大きな音ではないので、テレビなどをつけていればまったく気にはなりませ んが、静かにしているとそれは途切れることなく聞こえ続けてくるため、ちょっと気になります。
 この物音は、休むことなく、かなり長く続きます。
 例えば、好奇心に乏しい探索者が気にしないでいても、数時間後、寝ようとしたときにも、まだその物音がするといった具合です。キーパーは最初は軽く演出し て、そのあと、しばらくしてからまだ角笛の音が聞こえてくるというように演出することで、この音の不思議さを強調することができます。
 もっとも、このイベントは単なる序章でしかないので、「ある晩、こんなことがありました」といった程度に、さらりと流してしまってもよいでしょう。

 隣の家の住人について、探索者は何も知りません。それどころか、人が住んでいるのかどうかすらはっきりしないほどです。
 近所の人の口に、その隣家のことがのぼることもなく、空き家と思っている人がほとんどです。
 ただ、隣に暮らしている探索者は、滅多にないことですが、カーテンの閉まった窓に、オレンジ色の明かりが揺らめいているのを見たことがあります。

 もし、好奇心の強い探索者が、隣の家から聞こえる音の正体を調べようとするのなら、庭に面したブロック塀越しに中の様子をのぞくことができます。ただし、 《忍び歩き》に失敗すると、気配を悟られてしまい明かりは消え、音もしなくなってしまいます。
 気づかれずに近づけた場合、隣家の庭に面した部屋に、例のオレンジ色の明かりが灯っているのが見えます。それは、まるで炎のように揺らめき、時々、明かりに 照らされた人影がカーテンに映ります。
 揺らめく明かりと、波打つカーテンに映る人影は、大きくなったり小さくなったり、時には奇妙にゆがんだりして、まるでこの世の生き物とは思えない不思議な動 きをしています。
 カーテンは完全に閉まっているため、それ以上、中の様子をうかがうことは出来ません。その不思議な音は、夜明けの1時間ぐらい前にピタリと止みますが、おそ らくそんな時間まで、この家を見張っているような暇な探索者はいないでしょう。
 もし、深い意味もなくそんなことをする探索者がいた場合、パトロール中の警官に不審尋問でも受けることにして追い払ってやりましょう。

◆隣家の情報
 玄関の表札には「増田」と書かれてあります。
 家屋自体は、何の変哲もない古い家です。
 灰色の壁には捻れたツタが蔓延り、少し不気味な感じもします。
 家の大きさは5DKで、多くの庭木が植えられた5×10メートルぐらいの庭と、物置があります。
 塀は1.5メートルぐらいのブロック塀ですので、ちょっと背伸びすれば中の様子をうかがうことは簡単です。
 門は錆びた鉄格子で、高さは1メートルぐらいなので乗り越えることは容易です。また、下が20センチぐらい開いており、犬などは下からくぐり抜けることが出 来ます。
 5年前から、この家は現在のような空き家同然の状態が続いています。
 それより前は、ごく普通の会社勤めの家族が暮らしていましたが、彼らが転勤のため引っ越して、新しい住人が入居してから、この状態となりました。その新しい 住人については、誰もはっきりとは覚えていません(もちろん、市役所などに問い合わせれば別です)。


5,隣家の騒動

「4,シナリオの導入」のイベントから、数日後、このイベントが発生します。
 なるべくならば、この日は日曜日などの休日にすると良いでしょう。また、このイベントには、他の探索者たちも参加できるようにしてください。
 休日を自宅でのんびりと(もしかしたら、他の探索者たちと)過ごしている探索者は、隣の家から女性の悲鳴を聞きつけます。悲鳴の聞こえる時間は、何時でもか まいません。
 悲鳴を上げたのは、浅井寛子です。
 普通の探索者ならば、女性の悲鳴を聞けば、その様子を見に行くぐらいのことはするでしょう。
 浅井寛子は探索者の顔を見ると、「警察を呼んでください。この家に死体が……」と、取り乱した様子で叫びます。

◆浅井寛子の情報
 探索者がなぜこの空き家同然の家に訪ねてきたのかと問えば、彼女は自分の父である増田孝則に呼ばれたためだと答えます。
 数日前、彼女のもとに増田孝則からの手紙が届きました。
 手紙の内容は、身勝手から離婚して父親としての愛情を捧げてやることができなかったことへの詫びと、どうか一度、自分を訪ねてきてほしいというお願いです。
 封筒を見て《アイデア》に成功すると、封筒や便箋に古びた感じを受けます。
 実際、この手紙は書かれてから5年も経過しています。この手紙は増田孝則の弁護士が、依頼人から預かっていたものを約束に従い5年経過してから投函したもの です。詳しくは「8,増田孝則について」を参照してください。
 筆跡は調べてみればわかりますが、間違いなく増田孝則自身のものです。彼はひどいクセ字のため、娘の浅井寛子でも簡単に判別できます。
 彼女と増田孝則の関係を尋ねれば、自分の身の上を話してくれます(「4,NPC紹介」参照)。

◆死体の情報
 死体は和室2(ここをクリックすると、増田家間取り図が出ます)にあります。
 この死体は完全にミイラ化しています。服は着ていなく、全裸の状態です。そのため、この死体が男性であることだけは推測できます。
 その肌は紅茶のような色に変化しており、水分を失った体は干涸らび、シワだらけになっています。不謹慎ですが、その姿は魚の干物を彷彿とさせます。
 この無惨な死体を見た探索者は、1/1D4正気度ポイントを失います。
 死体の周りには、銀のフォークやナイフ、原色に近い派手な色のプラスチック製品、木の実や葉などが並べられています。
 また、まな板の上に鉄製の中華鍋が置かれてあり、その中には何かを燃やしたような燃えかすがたまっています。
 死体は明らかに死んでから数ヶ月以上経っていることがわかります。
 腹部には切開したあとがあり、内臓が抜き取られ、代わりに炭のようなものが詰め込まれています。
 死体のアゴの部分が切られ、口が大きく開いた状態になっています。
 腹部もアゴも、切断面の具合から、ミイラとなる前に切られたことがわかります。
《医学》×2に成功すると、死体は少なくとも死後1年は経過していること。年齢は40〜60歳であることがわかります。
 死体の周りにおかれたものを見て《オカルト》に成功した場合、これらの配色と配列には呪術的な意味があるのではないかと推測できます。このように光る金属、 派手な色をしたもの、特別な木の実を特別な配列に並べることは、原始的な呪術においてよく見られることです。

 また、和室全体を見回してみた場合、部屋の隅に無造作に薄い手帳のようなものが落ちています。
 これはミャンマー国籍のパスポートです。
 中を開いてみると、顔写真には醜い男が写っています。パスポートによると、ペートゥインという名前のミャンマー国籍の人物のようです。
 この顔写真を見て、《人類学》に成功すると、一見するとモンゴロイド系に見えますが、見れば見るほど現在人類学的に知られているどの人種にも当てはまらな い、不思議な骨格をしていることに気づきます。
《アイデア》に成功すると、この人物の顔がどことなく両生類に似ていると思えます。
《クトゥルフ神話》に成功すると、この写真の人間がチョー=チョー人の特徴を持っていることに気づきます。
 写真を見て《写真》に成功すると、この写真が顔立ちなどを少し修正してあることに気づきます。
 このパスポートをじっくりと見て《法律》1/2に成功すると、これか偽造パスポートであることに気づきます。また、ミャンマーの大使館などに問い合わせて、 《信用》に成功すれば、数日後にパスポートに該当するミャンマー(ビルマ)人はいないという答えが返ってきます。
 もし、探索者が部屋を見回すと言った行動を宣言しなかった場合、キーパーは探索者に《目星》をさせて、パスポートを発見するチャンスを与えても良いでしょ う。

 探索者が警察に連絡を入れれば、あっという間に警官たちが押し寄せてきます。
 近所の人たちは何事かと家の周りに集まり、大騒動となります。
 第一発見者である浅井寛子と探索者は、警官に事情聴取を受けることになります。
 もっとも、ミイラ化している死体の状況からして、死体の発見者と犯人の関係は薄いという判断から、その尋問は簡単なものに終わります。
 死体は警察によって運び出され、家は徹底的に警察によって調べられます。
 その結果は、簡単ではありますがニュースや新聞によって探索者のもとにも届きます。

◆家の状態
 好奇心の強い探索者が家の様子を調べてみた場合、奇妙なことが判明します。
 家には生活感はありません。
 トイレの水は乾ききっており、ホコリも厚く積もっています。
 流しには最近水を流したような跡が残っていますが、隅にはホコリが積もっており、日常的に使われていたとは思えません。
 ただ、死体のあった和室を中心に、人が出入りしていたような形跡が残っています。
 具体的には窓のそばに土が落ちていたり、和室にだけはホコリが無かったり、廊下に裸足の足跡が残されていたりしています。
 足跡を見て《追跡》に成功すれば、その足跡のサイズが20センチぐらいしかないことに気づきます。まるで子供のような大きさです。また、この足跡の形状を詳 しく調べて《医学》か《生物学》に成功すれば、この足跡がその大きさにもかかわらず成人した人間の特徴を持つこと(医学的には下垂体性小人症などが考えられま す)がわかります。
 土は和室から庭にでる窓の付近に多くあります。どうやら、この窓から何者かが出入りしていたのであろうと推測できます。
 なお、ここの窓の鍵は開いています。

◆ニュースやワイドショーの内容
 死体は家の持ち主である増田孝則さん(50歳)であることが判明。死体は内臓が抜き取られており、意図的にミイラ化させようという犯人の意志が見られます。
 家には最近まで誰かが出入りしていたような形跡があり、この人物の捜索に警察は全力を挙げています。
 また、増田孝則さんは家の管理を弁護士に依頼し、電気、ガス代等はすべて銀行から自動引き落としとしていました。まるで長い間、誰にも会わずに暮らせるよう に手配をしているようにも見られ、なぜ増田孝則さんがそのようなことをしたのか理由の捜査が進められています。


6,事件の後

 事件が発生してから、一週間ぐらいは警察関係の人間が多数出入りして大騒ぎとなっていますが、やがてそれもいなくなります。
 現実世界では、こんな猟奇的事件があった場合、警察の捜査はもっと長期間で徹底的なものとなるはずですが、ゲーム世界の警察というものは騒々しいだけで役立 たずなものなのです。
 しかし、それではリアリティが薄れる危険性もあるので、この近所で神話的事件とはまったく無関係な財界大物の殺人事件が発生したことにすると良いでしょう。 その捜査に人員がかり出されたため、数年前の殺人事件には手が回せなくなってしまっているのです。当然、マスコミもそちらの事件一色に染まっています。
 キーパーは、増田孝則の事件に対する警察のおざなりな捜査を強調して、まだ探索者が調査する余地があることを示唆してください。

 こうして静かな生活を取り戻した探索者ですが、そこに訪ねてくる人物がいます。
 それは浅井寛子です。
 なんと、彼女はしばらく隣の家で暮らすので、その挨拶にやってきたと言います。
 警察も引き上げたので、家に入ることはできますが、あんな変死体のあったところで若い女性が暮らすというのは、変わっているとしか思えないでしょう。
 そんな彼女を追ってきた人物もいます。
 彼女の母親であり、増田孝則の元妻である浅井千寿子です。
 探索者と一緒にいるときに、浅井千寿子がやってきたほうが良いので、キーパーはタイミングを見計らって彼女を登場させてください。
 浅井千寿子は、こんなところで暮らすことをやめさせようと静かに説得しますが、浅井寛子は「お父さんを供養するためにも、ちょっとの間だけでもここで暮らし たい。せっかく、お父さんが私のために遺してくれた家なんだもん。それに、ここからのほうが大学に近くて便利なのよ!」と頑として譲りません。
 浅井寛子はやや興奮しており、母親が説得すればするほど、反発するといった調子です。
 結局、娘の強情さに浅井千寿子は折れてしまいます。その様子を見ていた探索者が《心理学》に成功した場合、浅井寛子がここまでこの家に暮らすことに固執する には、何か供養以外の深い訳(実はチョー=チョー人の呪文の影響なのですが)があるのではないかと推測できます。もっとも、この時点では親子仲のもつれ程度し かに想像は出来ないでしょうが。
 さきほどの「私のために遺してくれた家」ということについて尋ねると、増田孝則は探索者の隣家の家屋を娘である浅井寛子に相続させるという遺言を残していた のだそうです。もっとも、築20年以上経っている古びた家なので、資産価値としてはさほどのものではありません。
 他の遺産についても法的に問題のない方法で分配をされており、その遺言は完全に法的に有効です。この遺言は増田孝則が家の管理を任せていた弁護士が管理をし ていました。

 結局、浅井千寿子は探索者(女性か年長の探索者)に娘のことをよろしく頼みますと言い残して帰っていきます。
 娘は心配であっても、この家からでは距離がありすぎてとてもいまの職場までは通勤できませんし、それにこの不気味な家に暮らすほどの勇気も無かったからで す。
 こうして、探索者の隣家に浅井寛子が暮らすようになります。
 キーパーは浅井千寿子にお願いをされる形で、探索者に浅井寛子に対する責任感のようなものを与えてください。
 彼女は、出来ることなら探索者の電話番号を聞いていきます。そして、その後、時々、探索者の家に電話をして娘の様子を尋ねます。


7,増田孝則の計画

 ここで、この神話的事件の真相についてのキーパー用の情報を明記しておきます。

 事件の発端は、12年前、増田孝則が千寿子と離婚をしたことでした。
 離婚理由は単純で、浅井千寿子が増田孝則に愛想を尽かしたからです。
 増田孝則は、多額の遺産を受け継ぎそれなりの資産家ではありましたが、働くことが嫌いな彼自身に生活能力はありませんでした。
 その財産に目がくらんで結婚をした浅井千寿子でしたが、男性的魅力ゼロのうえ、財産を食いつぶすことしかできない夫にすぐに愛想が尽きてしまいます。
 そこで世間知らずの夫を相手取り、やり手の弁護士を雇い、離婚裁判で有利な判決を勝ち得ると、多額の慰謝料と可愛い一人娘の養育権まで手に入れました。
 一度に多くのものを失った増田孝則は、ふぬけ同然となり、新興宗教を経て、オカルトに傾倒していきます。もともと、彼にはそういった超常的なものに興味が あったのです。
 やがて、彼はオカルトの力を借りて、奪われた娘を取り返そうと考えだしました。
 残された財産を湯水のように使い、様々な貴重な文献や、人づての情報から、彼はミャンマー(ビルマ)の奥地に本当の呪術を受け継ぐ部族が残っていることを聞 きつけます。
 その場所こそが、呪われたスン高原であり、忌まわしいチョー=チョー人たちの暮らす土地だったのです。
 増田孝則は執念でチョー=チョー人の部落を発見し、彼らと無事接触することができました。これは、増田孝則の正気度が著しく低下していたことが幸いしまし た。チョー=チョー人は増田孝則に自分たちに似たものを感じ取ったのです。
 彼は交渉の末、チョー=チョー人の呪術師と契約を結び、なんとソレを日本に同伴させたのです。そして、彼は探索者の隣家を買い取り、恐るべき神話的計画を実 行に移しました。
 松田孝則がチョー=チョー人に望んだことは、「娘が自分のものになること」でした。
 その申し出に対し、チョー=チョー人は代償として5年間、自分の呪文に協力するよう提案します。
 しかし、その呪文とは「チャウグナー・フォーンとの接触(改訂版ルールブック180ページ参照)」の呪文の一種である「チャウグナー・フォーンの代弁者」と いう恐るべきものだったのです。

◆呪文「チャウグナー・フォーンの代弁者」
 この呪文は「チャウグナー・フォーンとの接触」によく似ていますが、呪文をかけるたびに術者のPOWを1ポイント犠牲とする接触よりも、ある意味では効率の 良い呪文です。
 まず、この呪文には人間かチョー=チョー人の犠牲者がひとり必要となります。
 この犠牲者を特別な薬草で眠らせ、生きたまま内臓を抜き取り、代わりにその薬草を詰め込みます。
 この時点で、犠牲者は生物学的には死亡しますが、神話的にはまだ生きた状態なのです。儀式の結果、犠牲者は生きたままミイラと化します。
 このミイラこそが「代弁者」なのです。
 なお、抜き出された内臓は素焼きの壺に納め、土中に埋められ保存されます。恐るべきことに、この内臓は生きているのです。何十年経っても、まるで生きている かのように血を滴らせ、心臓は脈動まで続けています。
 このミイラを作成した術者は6ヶ月に一度だけ、この代弁者を使ってチャウグナー・フォーンとの接触を行うことができます。その際、術者のPOWではなく、ミ イラのPOWを使用することが、この呪文の大きなメリットです。ミイラの口はあらかじめ言葉を喋りやすいように裂かれています。半年に一度、ミイラは乾いた声 帯を震わせ、チャウグナー・フォーンの言葉を術者に伝えることができるのです。
 ミイラは接触を行うたびに、POWを1ポイントずつ消費していきます。そして、生前に所持していたPOWが完全にゼロとなったとき、代弁者としての役目を終 えることになり、ミイラはただの屍と化します。
 しかし、これからがこの呪文の恐るべきところです。
 ミイラが屍となると同時に、最初に取り出され保存されていた内臓は、次の代弁者となるべき標的を求めるのです。
 標的は、内臓の持ち主に近しい関係にあるもので、自分を愛しているものが選ばれます。そして、選ばれた標的は無意識のうちに内臓のある場所に引きつけられる こととなります。
 これは「精神交換(改訂版ルールブック179ページ参照)」によく似ています。ただし、POWの数値は犠牲者の生前の値を使用します。
「精神交換」と同様、この呪文が完全に完成した場合、標的の精神は完全に内臓の持ち主と入れ替わってしまい、POWを含む新しい肉体と同じ能力値を持って復活 します。そして、保管されていた内臓は自然の摂理に従い、通常通りの速度で腐敗を始めます。
 こうして代弁者は新しい肉体とPOWを手に入れることができますが、ほとんどの場合、新しい肉体を得た代弁者は自分の意志、もしくは術者の意志によって、再 び「チャウグナー・フォーンの代弁者」の呪文をかけられることとなります。
 こうして、術者はずっと「代弁者」を使役し続けることができるのです。
 この精神交換を阻止するには、現在の代弁者の内臓を破壊(八つ裂きにするか、黒こげになるまで燃やす)するか、術者を殺すしかありません。

 こうして、増田孝則は薬草で眠らされている間にミイラとされてしまいました。しかし、厳密に言えば、チョー=チョー人は約束を破ってはいません。彼の精神は まだ内臓と共に生きているからです。
 現在、増田孝則のミイラはPOWをすべて失い、新しい犠牲者を求めています。
 そこに浅井寛子がやってきたのです。このままでいけば増田孝則は望み通り、浅井寛子の肉体を彼のものにすることができることでしょう。
 もちろん、それは彼の望んだ形ではありません。浅田孝則はチョー=チョー人の邪悪な罠にはまってしまったのです。
 彼は、神話的存在が人間に幸福をもたらすことはあり得ないという原則を知らなかったのです。

 このシナリオでは、具体的にチョー=チョー人が何を求めて増田孝則を利用したのかまでは言及されていません。シナリオの規模から言っても、神話的存在に利用 された、哀れな犠牲者を物語る段階で終わらせたほうが構成的にすっきりとしているからです。
 このシナリオでのチョー=チョー人の最大の目的は、チャウグナー・フォーンとの接触を出来るだけ多くすることです。彼の最大の人生の目的は礼拝そのものであ り、神からの見返りではないのです。
 チャウグナー・フォーンがいったいいかなる宇宙的信託をチョー=チョー人にもたらしていたのか、それは我々には知る由もありません。おそらくは、彼らにとっ てのみ理解できるものであり、何にも代え難い素晴らしいものだったのでしょう。
 ただし、意欲的なキーパーは、このシナリオでチョー=チョー人が成し遂げようとしていた陰謀を設定してみても良いでしょう。しかし、そのためにはこのシナリ オを大きく変更しなければならないでしょう。肝心の黒幕であるチョー=チョー人は、シナリオの大部分において犬小屋で昼寝をしており、有用な情報源とはなって くれないからです。
 クライマックスでチョー=チョー人を逃亡させることにして、その行方を捜すという続編を作成するというのは気の利いたアイデアかと思われます。


8,増田孝則について

 探索者は増田孝則について興味を持つことでしょう。
 彼については、浅井母娘に尋ねるのが一番です。
 ただし、母と娘では、増田孝則に対する印象が微妙に異なっています。
 キーパーは下記の「キーパー用の情報」をベースにして、二人の口から増田孝則について語らせてください。

◆浅井寛子の話
 浅井寛子は父親のことを愛しています。それは、父親と過ごした幼い頃の思い出話を楽しげに語ることなどからうかがえます。
 また、浅井千寿子の話になると、たいした理由もなく離婚をして、その慰謝料に頼って生きてきた母親を軽蔑しているようなことを話します。
 彼女が自立した女性を目指し、現在、通訳となるため英文科で勉強をしているのは、そんな母親へのあてつけでもあるのです。
 ただし、その話を聞いて《心理学》に成功した探索者は、彼女の父親への愛情は幼いときから停止した、失ったものへの憧れと混同したものであり、親子の触れ合 いから育まれた健全な愛情ではないことに気づきます。
 おそらくは母親への反発が、いまはいない父親への憧れという形を作り出したのだろうと推測できます。

◆浅井千寿子の話
 離婚してから、12年も経過して、父親を捨てたことに対し娘が反発するようになると、彼女は自分の軽率な行為を反省するようになりました。
《心理学》に成功した探索者は、彼女が娘に対して引け目を感じていることに気づきます。そして、そんな娘に対して一歩引いたような態度が、母と娘の関係を遠い ものにしてしまった一因であると思えます。
 彼女は離婚した後の増田孝則のことについてはほとんど知りません。ただ、風の噂で宗教にはまったり、オカルト的なものに手を出し始めたりしたことを聞いてい ます。
 もともと、占いや超常現象に興味のあるほうだったので、娘を失ったショックでのめり込んでしまったのだろうと、後悔混じりの口調で話します。

◆家の管理をしていた弁護士
 賢明な探索者ならば、増田孝則が家の管理を依頼した弁護士に話を聞きに行くかもしれません。浅井千寿子に聞けば、弁護士の事務所の場所などを教えてもらえま す。
 その弁護士が所属するのは、大きな法律事務所で、実際に管理をしていたのは事務所に勤める事務員です。
 この弁護士について、探索者が必要以上に怪しいと感じてしまう可能性があります。そのことを誤情報として利用しても構いませんが、あまり回り道をさせてしま うのも考えものです。キーパーはプレイ時間などと相談をして、この弁護士のシーンを軽く演出するかどうか決定して下さい。

 増田孝則と実際に会ったことのある弁護士に話を聞くと、5年前に前金で依頼を持ってきたということを話します。
 依頼の内容は長期間海外に出かけるため、国内の家屋を含めた財産(一千万円弱の現金預金と、有価証券)の管理と、遺言の作成と保管といったものでした。
 もっとも、管理といっても法的手続きの更新などだけで、実印も預かり、増田孝則から全権を預かるという委任状もあったので、それは事務員でもこなせるような 容易な仕事です。
 契約期間は今年の末までで、まるで自分の死体が今年に発見されることを予知していたような用意の良さでした。
 依頼を持ってきたとき、増田孝則が深く思い詰めていた様子だったことを弁護士はよく覚えています。
 当然のことですが、弁護士はあまり依頼人のことについて他人に話たがりません。
 ただし、娘である浅井寛子の名前を出したり、犯人の手がかりになるかもしれないなどといったことをほのめかして、うまく話を聞き出せば、家の管理以外にも仕 事を引き受けていたことを話します。
 それは、5年経ったら浅井寛子宛に郵便を出すよう、封筒を預かっていたことです。この封筒は導入で浅井寛子が持っていたものです。


9,幽霊屋敷

 浅井寛子が隣家に泊まるようになってから、不思議な現象が起き始めます。
 この現象におびえた浅井寛子は、ワラをもすがる思いで探索者を頼ってきます。
 探索者が本腰を入れて動き出すのは、このイベントが発生してからでしょう。
 これは、いわゆる幽霊屋敷タイプのホラーでお馴染みの怪奇現象です。キーパーは神話的というよりは、もっと俗的な怪談のノリで演出をしてください。
 イベントは後になるほどエスカレートして(真相がわかりやすいものになって)いくので、できるだけキーパーは書いてある順番でイベントを発生させてくださ い。これらのイベントは一晩にひとつずつ発生させてもかまいませんし、一晩でいくつも発生させてもかまいません。
 プレイ時間と探索者の推理能力に応じて、キーパーはイベントの配分を操作してください。
 彼女はこのことを浅井千寿子には話そうとしません。自分の弱みを見せたくないため、意地を張っているのです。
 しかし、毎日のように浅井寛子に電話をしている浅井千寿子は、娘の声の調子から、自分に言えない何か不安を抱えているのではないかと、母親ならではのカンで 気づいています。
 浅井千寿子は探索者にこのことを相談するため、電話をかけてきます。そのとき、探索者が現象について話しても、話さなくても、彼女は心配のあまり浅井寛子の 様子を見に来ることになります。そのイベントについては「12,精神交換」を参照してください。

 なお、これらは浅井寛子と精神交換した増田孝則や、近所に潜むチョーチョー人がしでかしたことです。

◆勝手に開く窓
 しっかりと戸締まりをしたはずなのに、なぜか朝になると、庭に続く窓が開いていることがよくあります。
 鍵には不審なところはなく、開けたとしたら内側から開けたとしか考えられません。
 これは浅井寛子と精神交換した増田孝則が、自分で窓を開けたのです。

◆悪夢を見る
 毎晩、浅井寛子は悪夢を見ます。
 それはチャウグナー・フォーンに関係する夢ですが、ひどく断片的であるため、朝になってしまうとどんな夢だったかはっきり思い出すことはできません。
 覚えているのは、醜い小人たちや、松明が燃えさかる穴蔵、おぞましいゾウのような怪物、そして耳に残る角笛のような音だけです。その夢の内容を聞いて《ク トゥルフ神話》に成功した探索者は、それがチャウグナー・フォーンにまつわる夢であることがわかります。
 これは精神交換の標的とされた影響です。この悪夢を見るたび、浅井寛子の正気度は1ポイントずつ失われていきます。《精神分析》で、彼女の正気が悪夢によっ て蝕まれていることがわかります。しかしながら正気度を奪うほどの悪夢などは、精神医学的にはほとんど考えられないことです。もちろん、神話的にはよくあるこ とですが……

◆壁の文字
 壁にボールペンで落書きのようなものが書かれています。
 内容は読みづらいのですが、《アイデア》に成功すると「さがせ!」「だまされた」「あいつがいる」といった内容であることがわかります。
 文字の筆跡は、乱れてはいますが、増田孝則の独特のクセ字によく似ています。
 これは増田孝則が娘に警告を与えようと書き残しているものですが、彼の精神は正常でないため、なかなか有益な警告を書けないのです。

◆身体のアザ
 いつのまにか、肩や腕に覚えのないアザが出来ていることがあります。風呂に入って裸になって初めて気づく程度の薄いものですが、まるで誰かにつかまれたかの ように指の形をしているものもあり不気味な感じがします。
《医学》×2か《アイデア》に成功すると、もしこのアザが誰かにつかまれた跡だとすると、この手は子供ぐらいの大きさしかないということがわかります。
 これは精神交換の様子を見に来たチョー=チョー人と、浅井寛子と精神交換した増田孝則が争った跡です。

◆土に汚れた身体
 朝、浅井寛子が目を覚ますと、なぜか手足に土がこびりついています。
 布団や廊下にも土ついた足跡が残っており、自分の知らないうちに外を徘徊していたようなのです。
 増田孝則は自分の内臓の入った壺を探そうとしています。その壺を破壊することだけが、この恐るべき呪文を終わらせる方法だからです。
 浅井寛子の身体についた土は、浅井寛子と精神交換した増田孝則が庭を掘ったときについたものです。
 展開によっては、深夜、穴を掘る物音に気づいた探索者が、夢うつつで庭を掘り返している浅井寛子の姿を目撃するというイベントを発生させても良いでしょう。
 なお、探索者が近づこうとすると、彼女はその場に崩れ落ち、再び眠りについてしまいます。

◆掘り返された庭
 前述のイベントに関係あるものです。
 庭のあちこちが夜の間に掘り返されています。近くにはスコップも落ちており、掘り出された土には、庭に置かれてあるサンダルと同じ足跡が残っています。
 このイベントは庭を掘るというクライマックスへと直接繋がる情報なので、キーパーは発生させるタイミングに注意してください。

◆獣の気配
 深夜、悪夢で目を覚ました浅井寛子は、外に何かがいる気配を感じました。
 窓の外を見ると、人間ではなく腰ぐらいの大きさの「何か」が逃げていくのを見かけました。
 その「何か」は非常に素早くとても追いかけられるものではありません。
 これは犬の姿をしているチョー=チョー人の姿です。
 なお、このイベントは探索者が深夜に「何か」を目撃するという形で発生させても良いでしょう。


10,家宅捜索

 浅井寛子に相談を受けるようになれば、隣家を自由に探索することが出来るようになります。
 探索者が気にかかるのは、やはり増田孝則の遺留品でしょう。
 ところが、この家にはほとんど生活用品というものがありません。
 二階の部屋はいっさい使われていなかったようですが、現在は浅井寛子が和室3に暮らしています。わざわざ二階にいるのは、下の部屋で寝るのが何となく気味が 悪かったからです。

 洋室1の部屋には、段ボールが山積みになっており、その中には大量のオカルト本、わずかな着替え、幸せだった頃の家族のアルバムが入っています。
 オカルト本を調べて《オカルト》×2か《図書館》に成功した場合、たくさんの二流、三流の本の中に、オークションなどでしか手に入らないような高価な稀書も 紛れていることに気づきます。
 そして、その中の一冊はサセックス草稿の写本です。

◆サセックス草稿の写本
 英語。作者不明。出版年不明(18世紀中頃?)
 比較的質の良い紙に、青いインクでとても読みやすい筆記体で美しく写本されたものです。ただし、サセックス草稿全文の五分の一程度しか写されていません。
 薄い本ですが、後の時代につけられたらしい豪華で頑丈な革の装丁が施されています。
 ただ、数ページに血痕のような染みがついており、非常に読みづらい部分があります。ここには「チャウグナー・フォーンの代弁者」の呪文が記されています。
 正気度ポイント喪失は1/1D3。《クトゥルフ神話》に+3%。呪文倍数は×2。

 この写本には、増田孝則が内容を簡単に和訳したメモが挟まっています。このメモと写本を見比べながら読み進めていくと、この本にはミャンマー(ビルマ)の奥 地に異世界の生物と混血した、呪われた部族がいるということ。その部族は、チャウグナー・フォーンと呼ばれる異界の神を崇めることで、様々な呪術を操ることが できると記されていることがわかります。
 ただ、血痕のついているページのあたりは翻訳のメモが挟まっていません。あまりに読みづらいため、内容を飛ばしてしまったと予想されます。染みに隠れた文字 を丹念に拾い集めて翻訳してみる(約6時間をかけて《英語》に成功する必要があります)と、ここにはミイラをチャウグナー・フォーンの代弁者として利用する、 恐るべき「チャウグナー・フォーンの代弁者」の呪文が詳しく説明されています。キーパーは前述の呪文の説明を参照して、探索者にこの呪文の効果を説明してくだ さい。

 また、この写本と一緒の段ボールにはプラスチックの書類入れが入っています。これも英語で書かれていますが、こちらには増田孝則のメモは挟まれていません。 読むには約3時間をかけて読んだあと《英語》に成功する必要があります。
 これはスン高原に挑み、チョー=チョー人たちと邂逅したホークス探検隊の生き残りである、エリック・マーシュの手記のコピーの一部です。
 彼について、もっと詳しく知りたいキーパーは、ダーレス&スコラーの原作小説である「潜伏するもの」を読んでみることをお勧めします。
 このシナリオでは、この手記はミャンマー(ビルマ)の奥地にあるスン高原の大まかな場所と、そこに住むチョー=チョー人たちと遭遇した事実が記されたものと して扱います。

 この二冊の文献から、探索者はチョー=チョー人とチャウグナー・フォーンという忌まわしい存在に気づくことでしょう。
 探索者が《英語》に失敗した場合、キーパーは浅井寛子が英文科の学生であることを思い出させてあげても良いでしょう。

 サセックス草稿の写本は、このシナリオにおいて最大の情報源です。クトゥルフの呼び声に慣れているプレイヤーならば、この本の情報だけでチョー=チョー人と その陰謀についておおかたの予想をしてしまうことでしょう。
 そうなってしまうと、途中のイベントを飛ばして、いきなりクライマックスへ話が進んでしまう危険性があります。
 そのため、キーパーはプレイヤーの力量に応じてサセックス草稿の写本を登場させるタイミングを操作させても良いでしょう。
 具体的には、サセックス草稿の写本は弁護士が管理していた増田孝則の遺産書類と一緒に保管されているということにするのです。
 増田孝則の遺言や、遺産である有価証券は銀行の貸金庫に預けられていました。それらの書類と一緒にサセックス草稿の写本も保管されていたのです。
 浅井千寿子は貸金庫に保管するぐらいだからよほど貴重な本なのだろうと思いますが、英語が読めないため、探索者か浅井寛子に、この本が何の本であるかを調べ てもらおうと考えます。
 キーパーはシナリオの進展状況に応じて、財産整理をしていた浅井千寿子からサセックス草稿の写本の情報を探索者に与えると良いでしょう。ただし、どんなに遅 くても「12,精神交換」のイベントが終了したら、このサセックス草稿の写本は登場させるべきでしょう。
 なお、このような情報操作は露骨すぎると、プレイヤーにいくら努力して探索してもイベントが発生するまではシナリオが進展しないのだという無力感を与えてし まう危険性があるので注意してください。
 タイミングとしては探索者が浅井千寿子に情報を求めたときに、彼女が思いだしたかのようにこの本の存在を探索者に伝えるといったものが望ましいでしょう。


11,チョー=チョー人の居場所

 このシナリオの最大の敵である、忌まわしきチョー=チョー人は意外なところに隠れています。
 日本での彼は、「似姿の利用(改訂版ルール182ページ参照)」を使用して、犬の姿に変身しているのです。
 人間とは異質の精神構造を持つチョー=チョー人は、5年間もの間、平然と犬のふりをし続けて現代日本の住宅街に潜んできたのです。
 十分な食料に、暖かい寝床、敵のいない環境、チョー=チョー人の暮らすスン高原に比べれば、日本は温室のようなところでした。

 探索者の家のすぐ近くの家に、焦げ茶色の毛色をした、ボクサー犬の老犬が飼われています。
 大きさは体高65センチ、体長68センチ。体重は38キロ。SIZは5です。
 ボクサー犬というのは、頬はブルドックの垂れていますが、顔全体はブルドックのように丸くはありません。体毛は短く、身体はがっしりした筋肉質です。その性 質は穏和で、番犬として広く世界中で愛されている犬種です。
 チョー=チョー人の化けるボクサー犬も、玄関先に作られた犬小屋で飼われており、番犬としての役目を果たしているようです。
 しかし、このことは首輪の鎖さえ外せば、外に出るのは容易だということです。もちろん、人間並みの知能を持っている犬の手にかかれば、鎖ぐらい簡単に外すこ とは出来ます。

 外見だけからボクサー犬の正体を暴くことは不可能です。「似姿の利用」の変身は完璧だからです。
 普段、チョー=チョー人はほとんど動こうとせず、怠惰な老犬を演じています。このほうが立ち振る舞いから正体がばれる危険性が少ないからです。
 外を出歩くのも深夜に限られているため、家人を含め、誰もこのボクサー犬が怪しいとは思っていません。
 ただし、このボクサー犬が怪しいと考え、その行動をじっくりと隠れて観察して《アイデア》か《生物学》×2に成功すれば、どことは言い切れませんが、この犬 の動きが何か不自然な気がします。
 この犬の正体を暴く最も簡単な方法は、1ポイントでもダメージを与えることです。ダメージを受けると、「似姿の利用」の効果が失われ、チョー=チョー人の姿 に戻ってしまいます。その後、1D3時間の休憩をしなければ、再び犬の姿に戻ることできません。
 これは簡単で、非常に効果的な方法といえるでしょう。
 もちろん、チョー=チョー人もこのことは十分に承知しているので、探索者が危害を加えようとした場合、すぐに逃げだそうとします。

 キーパーはシナリオ内に、この犬を何度か登場させて、その存在を探索者に印象づけさせなければなりません。
 近所に聞き込みをしているときに怖そうな番犬がいると描写したり、飼い主が散歩をしているところに遭遇したり、玄関で寝そべっている犬に浅井寛子が興味を 持って頭をなでたりするといった程度でかまいませんので、これらは忘れずに行ってください。そうでないと、身近な犬がチョー=チョー人であったというクライ マックスのインパクトが薄れてしまうからです。
 犬の名前や飼い主の設定は、探索者の暮らしぶりに合わせてキーパーが独自に設定してかまいません。
 もし、探索者がアパートなどに暮らしている場合、このボクサー犬はアパートの管理人の飼い犬としておけば、さらに身近な存在となって、シナリオの最後を盛り 上げてくることでしょう。
 もしも、キーパーとプレイヤーが小学館から出版されている高橋留美子の漫画である「めぞん一刻」を知っているようでしたら、管理人は美人の若い未亡人である としておけば、プレイヤーは漫画のパロディーかと思い、飼い犬であるチョー=チョー人にも油断すると思われるのでお勧めです(フェアでないと不満に思うプレイ ヤーがいるかも知れませんが)。
 もし、「めぞん一刻」を知らない場合は、「山田さんちのペットのポチ」とでも設定しておいてください。


12,精神交換

「9,幽霊屋敷」のイベントについて聞かされた探索者は、おそらくは浅井寛子が夢遊病などにかかっているのではないかと推測することでしょう。
 その対策として簡単で有効な作戦は、夜まで浅井寛子を見張っていることでしょう。寝姿を見張るまではいかなくとも、家に誰かが出入りしないか見張るぐらいの ことはすることでしょう。

 深夜2時ぐらいになると、浅井寛子は夜中に起き出し、家をうろつき始めます。
 精神交換をされた浅井寛子に対し、探索者がじっと隠れて観察するという行動をとった場合、増田孝則と精神を交換した浅井寛子の身体は、「9,幽霊屋敷」で説 明されているような行動を取ろうとします。

 もし、探索者が浅井寛子に何らかの行動を起こしても、増田孝則の精神は探索者など目に入っていないかのような行動をとります。また、増田孝則の精神は発狂し ているも同然なので、意味の理解できるような言葉を喋ることもありません。
 以下に、増田孝則の言葉を明記します。

・違うんだ……
・壺はどこだ……
・だまされた……
・やつが見ている……
・ここにあるはずなんだ……

 幸いにも、いまのところ精神交換は4〜5分の間しか持続しません。時間が過ぎれば、精神は浅井寛子のもとに戻り、夢うつつのまま自分の布団へと戻っていきま す。
 この時点では、増田孝則の言葉からは有益な情報は何も得ることは出来ません。
 それどころか、常識的に言えば、単なる夢遊病なのではないかと思うほうが霊に取り憑かれているというよりも自然でしょう。ただし、《心理学》か《医学》に成 功すれば、ただの夢遊病にしては多重人格症的な症状も見られ、少しおかしいということがわかります。

 翌朝、探索者のもとに、突然、浅井千寿子がやってきます。「9,幽霊屋敷」での娘の態度が気にかかって、とうとうやってきてしまったのです。
 浅井千寿子は、この家で浅井寛子と一緒に暮らそうと考えています。
 賢明な探索者ならば、そのことに危険と不安を感じるでしょう。しかし、浅井千寿子の考えを改めさせることは非常に困難です。妥協案としては、正直に昨晩のこ とを話して、探索者と浅井千寿子が一緒に浅井寛子の様子を見守るという方法があるでしょう。
 今後の展開のために、キーパーはなるべく探索者と浅井千寿子を一緒に行動をさせてください。

 その晩、浅井千寿子と寛子はじっくりと互いのことを語り合うことになります。望むのなら探索者も同席して、二人の話し合いに参加してもかまいません。
 この場面はシナリオの神話的事件には関係の薄い、NPCに味付けをするためのちょっとしたイベントです。プレイ時間やプレイヤーの雰囲気に応じて、このイベ ントはさらりと流してしまってもかまいません。

 浅井千寿子は「不満があるのなら、はっきりと言ってちょうだい」と話を切り出します。
 それをきっかけに、浅井寛子は父親を愛していないのに結婚したこと、子供のことを考えずに簡単に離婚をしたこと、だますようにして多額の慰謝料を奪い取った こと、養育権に付随した慰謝料目当てで自分を引き取ったこと、うわべばかりで母親として何も自分にしてくれなかったこと、といった心の内にため込んでいた不満 を堰を切ったように話し始めます。
 そんな娘の正直な言葉を、浅井千寿子は母親らしいしっかりした態度で受け止めます。
 そして、悲しそうな顔でポツポツと話し始めます。
「あなたの言うとおり、お父さんと結婚したのはお金が目当てだったのかもしれない。子供だからといって、あなたに相談することなく、勝手に離婚をしてしまった ことも悪かったと思うわ。けど、これまであなたのことを思わないで何かをしたことはないつもりよ。どんなときだって、私はあなたの幸せを祈っていた。あなたが お父さんを愛しているのはすばらしいことだと思う。けど、私と二人で過ごしてきた時間も思い出してみて。そんなにいやな思い出……ばかり……だったかし ら……?」
 そこまで言うと、浅井千寿子は涙をこらえて、辛そうに席を外します。
 浅井寛子はその背中に何か言おうとしますが、途中でやめてしまい、ばつの悪そうな顔でその場に残ります。
 二人がここまで本心をさらけ出して話をしたことはありませんでした。もしかすると、増田孝則の家という奇妙なシチュエーションが、二人をいつもより素直にさ せたのかもしれません。
 この後、探索者が何かフォローを入れるのでしたら、それに応じて二人の仲が好転する可能性もありますが、それはさほどシナリオに関係の無いことです。

 さて、夜も更けてくると、昨晩と同様に浅井寛子と増田孝則の精神交換が開始されます。
 しかし、昨晩と違って、今回は浅井千寿子がいます。
 浅井寛子と精神交換をした増田孝則は、浅井千寿子と出会うと、その狂気に支配された心に、わずかな正気を取り戻させます。
 増田孝則は元妻を見て「おおお、千寿子……」と呟きます。この一言で、浅井千寿子はすぐに娘の身体に元夫の精神が宿っていることに気づきます。
 増田孝則は浅井千寿子の前に跪き、詫びと後悔の言葉を続けます。
「私は寛子と一緒になりたかった……
 しかし、決して、こんなことを望んでいたわけではない。
 私はだまされたんだ。
 壺を……壺を探してくれ!
 この家のどこか……土の中にあるはずなんだ。
 アレを破壊しないと、いずれ私は寛子を殺してしまう!
 許してくれ……
 私が悪かったんだ……」
 と、浅井寛子の身体で苦しげにうめき続けます。そして、自分の精神が娘の身体を離れようとしていることを悟ると、増田孝則はペンでふすまになにやら書き始め ます。そして、書き終えた途端、ばたりとその場に崩れ落ちます。
 浅井千寿子は悲鳴を上げて抱き上げると、浅井寛子はうるさそうに顔をしかめて目を覚まします。そして、自分がこんなところにいるのにとまどいながらも、壁に 書かれた文字に目をやります。
 そこには、増田孝則の独特のクセ字で、
「かあさんとしあわせにくらしてくれ。とうさんがわるかった」
 と、書き残されています。これは増田孝則が娘宛に書いた遺言なのです。
 これを読んだ浅井寛子は何かを問いかけるように浅井千寿子の顔を見上げます。すると、浅井千寿子は無言でゆっくりとうなずきます。
 このことで、これが父親の最後のメッセージと理解した浅井寛子は、母親の胸に顔を埋めて泣きじゃくります。探索者には、その涙の一粒ごとに、母親に感じてい た不当な反発が解けていくように思えます。

 ところで、いまは増田孝則の精神はすぐに元に戻っていますが、このまま精神交換を続けていると、元に戻るまでの時間が徐々に長くなり、やがては完全に浅井寛 子と増田孝則の精神は交換されてしまいます。精神交換という現象につして考え、《クトゥルフ神話》に成功した探索者は、その危険性について知っています。
 具体的には、浅井寛子のPOWと数値と同じ回数(すなわち8回)精神交換をされると、その精神は増田孝則のものとなってしまいます。
 そうなってしまったとき、元の身体の持ち主である浅井寛子の精神はどこへ行ってしまうのか……それはチャウグナー・フォーンのみぞ知るです。
 このことは増田孝則も十分に承知しています。そのため、探索者がのんきに構えて、何度も増田孝則から話を聞こうとした場合、焦って興奮した彼は無能な探索者 を責めて、勝手に自分の内臓を探しに行きます。
 出来ればこのようなみっともないことにならないよう祈りますが。


13,池の下に潜伏するもの

 探索者が内臓の入った壺を探すのは、なかなか困難なことです。
 なにしろ、内臓が埋められてから5年も経過しているのです。埋められた跡など、風雨にさらされ見分けがつかなくなっていることでしょう。
 さらに庭は手入れをされなくなって5年間も経ったため、庭木や雑草が好き勝手に茂っています。庭木の根が張り出しているため、意外と土を掘れる場所はありま せん。そこそこ大きな穴が掘れそうな場所は、花壇や物置小屋の脇ぐらいなものでしょう。
 しかし、そういっためぼしい場所は、すでに増田孝則によって掘られた跡があります。
 賢明な探索者が、すぐ見つかるような場所に埋められたわけではないと推測し、玄関脇の池に興味を持った場合、興味深い事実を発見します。
 この池は、穴を掘って水を溜めたものではなく、直径3メートル程度の円形をしたFRP製のタライを地中に埋めた造りになっているのです。賢明な探索者なら ば、このタライの下が怪しいと考えることでしょう。
 このタライを土から掘り出すことは、その気になれば容易なことです。溜まっている水を汲み出すのは面倒ですが、水さえ無くなってしまえば、縁を持って力一杯 持ち上げるだけですっぽりと土から抜けてしまうぐらいです。

 タライの下には、横に丸くなった姿勢でボクサー犬が土にめり込むように埋まっています。その姿は、まるで昆虫のサナギが冬眠をしているかのようにも見えま す。
 まわりの土の状態からして、かなり長い時間、土に埋まっていたはずなのに、犬の身体はほとんど腐敗していません。表皮に黒い地虫や、白い芋虫のようなものが 住み着いているだけです。
 探索者がボクサー犬を調べようとすると、突然、その犬は目を開きます。しかし、すでに柔らかな眼球は溶け落ちており、開かれたまぶたの奥にある虚ろな空洞が 探索者のほうに向けられるだけです。
 このボクサー犬は、チョー=チョー人が「似姿の利用」に使った犬のなれの果てです。
 邪悪なチョー=チョー人は、死んだ犬を「ゾンビの創造(改訂版ルール179ページ参照)」の呪文によって、ゾンビ番犬を作り上げたのです。この哀れなゾンビ 犬は、5年間もずっと土に埋められ、誰かが壺を奪いに来ないか見張っていたのです。
 ゾンビ犬は、穴から飛び出して四肢で立つと、まず身の毛もよだつような不気味な遠吠えを始めます。これは近所でボクサー犬を演じているチョー=チョー人に盗 人がやってきたことを告げているのです。

◆ボクサー犬のゾンビ
STR12 CON13 SIZ5
POW1  DEX9
移動9 耐久力 9
ダメージボーナス:なし
武器:噛みつき 30% ダメージ1D6
装甲:なし。ただし貫通する武器は1ポイントのダメージ、その他すべての武器はロールで出たダメージの半分のダメージしか与えません。
呪文:なし
正気度喪失:ボクサー犬ゾンビを見て失う正気度ポイントは1/1D6

 ゾンビ犬は、なかなかの強敵です。
 もし、探索者たちが貫通する武器を主に使用しているようでしたら、とても勝ち目がないので《アイデア》に成功したら、貫通する武器では効果が薄いことに気づ くとしてあげても良いでしょう。
 ゾンビ犬が遠吠えをしてから3ラウンド後、ボクサー犬の姿をしたチョー=チョー人が駆けつけます。
 チョー=チョー人は、まだゾンビ犬と探索者が戦っているのならば、元の姿に戻って戦闘に加わります。チョー=チョー人が犬から人間の姿に変身する神話的現象 を目撃した探索者は、1/1D3正気度ポイントを失います。
 一応、服も一緒に変身するため、元の姿に戻っても裸というわけではありません。チョー=チョー人は目の粗い麻布のようなもので出来た貫頭衣を、腰ひもで縛っ ています。首には30センチぐらいある儀式用の角笛を紐で首にぶら下げてています。チョー=チョー人は、この角笛を棍棒のように構えて、類人猿のような高い威 嚇声を上げます。
 邪悪で卑怯なチョー=チョー人は極力自分では戦闘に参加せずに、もっぱら「支配(改訂版ルール178ページ参照)」の呪文を使用します。命令の内容は、一 番、強そうな探索者(キーパーが決定します)を攻撃しろというものです。
 行動できる探索者がひとりになって呪文の対象がいなくなった場合は、チョー=チョー人は自ら儀式用角笛を棍棒のように使って攻撃をしかけていきます。この角 笛には魔力が付与してあるため、見た目よりも頑丈で、十分に武器としての使用が可能です。
 また、ゾンビ犬が先に倒されてしまった場合、チョー=チョー人はその場から逃げ出そうとします。

◆チョー=チョー人
STR15 CON11 SIZ7
INT15 POW16 DEX17
APP3  EDU6  SAN0
移動8 耐久力 9
ダメージボーナス:なし
武器:儀式用角笛 60% ダメージ1D4+1
   拳 60% ダメージ1D3
装甲:なし。ただし、チョー=チョー人は儀式用の角笛で攻撃を《受け》ることができます。チョー=チョー人の《受け》は60%です。儀式用角笛の耐久力は7ポ イントです。
呪文:チャウグナー・フォーンとの接触、チャウグナー・フォーンの呪い、チャウグナー・フォーンの代弁者、ゾンビの創造、動物に命令する、支配、他、門の創造 以外のキーパーが適当と思うもの
正気度喪失:チョー=チョー人を見て失う正気度ポイントは0/0

 もし、チョー=チョー人が駆けつけたとき、すでにゾンビ犬が戦闘不能に陥っていた場合、この小賢しい神話生物は戦況不利を悟り、こっそりと犬小屋へと逃げ帰 ります。犬小屋の下には増田孝則から奪った現金が100万円ほど隠してあるからです。この金を使って、チョー=チョー人は故郷のスン高原へ戻ろうとします。パ スポートは失っていますが、何年も犬の姿で日本に潜伏し続けてきた不屈の魂を持つチョー=チョー人のことです。どんなことをしてでも、日本海を渡り故郷へと帰 ることでしょう
 賢明な探索者が近所にゾンビ犬に似たボクサー犬がいないか考えた場合、すぐ近所の家にいることを思い出せます。そして、約30分以内に、急いで追いかけた場 合、ボクサー犬が犬小屋の下の土を掘り返しているところに出くわします。
 その様子を隠れてじっと見つめてれば、なんとこの犬はビニールに入った札束を掘り出して、どこかへ行こうとします。こんなことをする犬を怪しいと思わない探 索者はいないでしょう。
 もし、探索者がなんらかのアクションをかけた場合、チョー=チョー人は可能ならば逃げようとしますし、それが無理ならば元の姿に戻って探索者を殺そうとしま す。
 愚かな探索者が不用意に手を出そうとした場合、相手のボクサー犬は本気で走り出したら、とても人間では追いつかないほど足が速そうだと教えてあげても良いで しょう。最後の最後で、敵の親玉に逃げられるというのは、探索者にとって、どうにも気分が悪いものですから……

 なお、ボクサー犬のゾンビの埋まっていた土のすぐ下には、原始的な素焼きの壺が木の皮に包まれて埋まっています。
 中を見てみると、血まみれの内臓がぎっしりと詰まっています。内臓はビクビクと動いており、まるでついさっき摘出されたかのようです。
 この蠢く内臓を見た探索者は、1/1D6正気度ポイントを失います。


14,大団円

 壺に入った内臓を破壊すれば、増田孝則による精神交換は行われなくなります。
 また、術者であるチョー=チョー人を殺すことでも、同じ効果を得ることが出来ます。
 こうして、やっと増田孝則は本当の死を迎えることが出来たのです。
 お互いの理解を深めた浅井母子は、不思議な事件を解決してくれたらしい探索者に感謝して、再び浅井千寿子のマンションで暮らすようになります。
 そして、忌まわしい事件のあった隣家は、やがて取り壊されて、何もない空き地となります。

 チョー=チョー人の邪悪な罠から、浅井寛子を守った探索者は1D8の正気度ポイントを獲得します。
 もし、浅井寛子を守ることには成功したが、チョー=チョー人を取り逃がしてしまった場合は、残念ながら1D4の正気度ポイントしか獲得できません。



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