1,はじめに

 このシナリオは「クトゥルフの呼び声・改訂版」に対応したものです。
 シナリオの舞台は現代日本、海辺の古い洋館です。
 プレイヤーキャラクター(以降、探索者)は2〜4人ぐらいを推奨します。
 新しく探索者を創造する場合は、教授や学生といった自由な時間を作りやすい職業を選んでもらうとゲームに参加しやすいでしょう。シナリオの設定上、少なくと もひとりの探索者の祖父は、すでに死んでいることにしなくてはいけないので、この点を注意してください。
 なお、あらかじめ探索者同士が知り合いだったほうが、ゲームはスムーズに進みます。


2,あらすじ

 シナリオの事件の発端は、昭和初期に遡ります。
 当時、財界人や地方名士の子息たちが集い、ボヘミアンを気取って、文学、芸術、科学、冒険など、あらゆる娯楽を楽しむグループがありました。
 彼らは親の財力とコネを利用して、いろいろと物珍しい海外の品々を収集しており、そのの中に不思議な浅浮き彫りが含まれていました。
 メンバーは、そこに彫り込まれた奇妙な細工に心奪われましたが、この浅浮き彫りは「大いなるクトゥルフ」を奉じる古い教団が、神に生け贄を捧げるために造り 出した罠だったのです。
 メンバーの何人かは浅浮き彫りを通じて「大いなるクトゥルフ」の僕と成り下がり、浅浮き彫りに肉体さえも取り込まれてしまいました。しかし、浅浮き彫りは目 をつけたメンバー全員を取り込むことはできなかったのです。
 浅浮き彫りは70年以上経ったいま、再び生け贄を求め、すでに取り込んでしまったメンバーを手下として使って犠牲者をおびき寄せ始めました。
 その中の一人が探索者だったのです。
 すでに死去している探索者の祖父は、浅浮き彫りに目をつけられながらも、幸運なことにその魔手を逃れた人物だったのです。
「大いなるクトゥルフ」の僕となったメンバーは、探索者ともう一人の生き残りのメンバーにグループの共同財産である遺品があるので、一度、その相続の打合わせ をしないかと誘います。
 メンバーたちは、それぞれ自分が昔のメンバーの子供や孫であると偽り、探索者を油断させながら、浅浮き彫りに取り込もうとします。
 海辺の古い洋館に招かれた探索者は、同様に招待された客の不審な死や、地下室に隠された死体、誰も使った形跡の無い寝室など、様々な不審な点を発見すること になります。
 やがて、それらの証拠から探索者に陰謀を見抜かれたメンバーたちは、その本性をさらけ出すことになります。
 探索者は彼らの陰謀を逸早く察知し、メンバーと浅浮き彫りの魔手から逃れねばなりません。

 このシナリオは、いわゆる遭難タイプのシナリオで、探索者が外界とは隔絶された場所に孤立し、そこに潜む脅威と対決するというものです。
 こういったタイプのシナリオでは、一緒に外界から孤立したNPCの中から、自分たちを陥れようとする犯人を探すのがひとつの課題となりますが、このシナリオ ではそのパターンの裏をかいてほぼすべてのNPCが犯人という、アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」のようなオチが用意されています。
 キーパーは、探索者に犯人探しを楽しんでもらいつつ、最後に用意した意外な真相に驚いてもらいましょう。


3,NPC紹介ここをクリックすると印刷用の大きなイラスト が出ます

杉山 奈緒美/本名:杉山 早苗(25歳に見える)

 探索者たちに、今回の事件の発端となる招待状を出した女性です。
 少しウェーブした髪を腰のあたりまで伸ばし、体つきはほっそりとしています。
 その物腰はゆったりとしたもので、上流階級の雰囲気が漂っています。一人称に「わたくし」という言葉を使うなど、少しばかり浮き世離れした口調 で話をします。
 また、杉山芳子の服を借りて着ているため、服装が年の割に地味です。
 当時のグループ内では、その美しい容姿と、莫大な財産、そして洗練された会話と社交術によってメンバーのリーダー的な存在でした。
 細かく言えば、彼女は女傑として人を従えるリーダーではなく、グループのマドンナとしてみんなに崇められるリーダーでした。どちらにせよ、女性 の立場の低かった当時にしては、それはとても珍しいことです。

STR10 CON16 SIZ12
INT17 POW16 DEX12
APP16 EDU20 SAN 0
耐久力14 ダメージボーナスなし
技能:言いくるめ75%、オカルト50%、回避40%、隠す45%、隠れる50%、クトゥルフ神話15%、心理学60%、語学30%、信用 70%、説得60%、図書館30%、英語読み書き40%、目星30%
杉山奈緒美
杉山 芳子(68歳)

 探索者が招待された屋敷の、現在の本当の主人です。
 品の良い老婦人で、屋敷に一人で暮らしていました。
 彼女はゲーム開始時にはすでに杉山奈緒美によって殺されており、生前の彼女に会う機会はありません。
 血縁としては杉山早苗の妹の娘ですので、姪ということになります。 

金谷 譲治/本名:金谷 幸治(48歳に見える)

 鼈甲のメガネをかけて、白髪の混じった髪をオールバックにした中年の男です。
 背広にノーネクタイというラフなもので、あまり服装には気を配っていないようです。
 顔には深い笑い皺が刻まれていますが、その眼光は鋭く、少し話をしてみれば、彼が驚くほど教養深い人物であることがわかるでしょう。
 誰とでも気持ちよく話せる話技を持っていますが、それでいてどこか他人と距離を置いている感じがしないでもありません。これは彼が常に人を見下 しているという性格のせいです。
 グループの中では、一番、教養深く、いつも話題の提供者となっていました。
 しかし、そんな彼も家柄は名家ではありましたが、実質的な財産らしいものはほとんどなく、そのことにコンプレックスを感じていたようです。
 そのため、学問だけでも他人には負けないようにと勉学に励み、やがて大学教授となりました。
 どこから見てもインテリの彼ですが、柔道が得意という意外な面もあります。

STR16 CON13 SIZ15
INT13 POW10 DEX11
APP 9 EDU21 SAN 0
耐久力14 ダメージボーナス+1D4
技能:言いくるめ40%、回避50%、隠れる40%、クトゥルフ神話8%、考古学80%、語学60%、信用70%、人類学60%、図書館60%、 博物学85%、英語読み書き70%、歴史50%
武器:拳70% 1D3+db
   グラップル60% ダメージ 特殊
金谷譲治
藤田 綺羅子/本名:藤田 佐和子(22歳に見える)

 髪型はショートカットで、活発そうに見える女性です。
 ちょっと目は細めですが、そのせいでいつもにっこりと微笑んでいるように見えて、とてもチャーミングです。そんな表情に違わず、性格のほうも明 るく、若い探索者とも話が合うでしょう。
 スタイルも大変良く、特になかなか大きな胸をしており、男性諸氏の目を釘付けにすることは間違いなしです。
 彼女はレンズに薄い色のついたメガネをかけていますが、あまり似合っていません。服装は紺のブレザーに白いシャツと、ちょっと男性っぽいもので す。
 彼女は良家の子女でしたが、男性陣の中でも堂々と活躍する杉山早苗にあこがれ、彼女のグループに参加していました。
 当時、良識ある大人たちの間では、杉山早苗のグループは不良なイメージがあったので、彼女は両親と衝突することもしばしばでした。

STR 8 CON 8 SIZ10
INT13 POW 9 DEX12
APP14 EDU16 SAN 0
耐久力9 ダメージボーナスなし
技能:回避40%、隠れる65%、クトゥルフ神話5%、忍び歩き60%、信用30%、追跡60%、
武器:32口径リボルバー(1ラウンド3回)35% ダメージ 1D8
藤田 綺羅子
佐藤 政雄(88歳)

 いつでも人を上目使いに見つめるような視線をしている、陰気な老人です。彼は、当時のメンバーの生き残りです。
 いつも眉間に皺を寄せ、口元はしっかりと閉じられています。内臓を悪くしているのか顔色は悪く、アゴから下にかけて余った皮がたるんでいます。
 若い頃は資産家だった彼ですが、終戦と同時に破産し、いまではすっかりおちぶれた生活をしています。昔、とても仲の良かった仲間達は次々と行方 不明となってしまい、彼はずっと孤独の中を生きてきました。
 ほとんど自分からは口を開くことはありませんし、話し掛けられても必要最低限の返事しかしません。自分に自信の無い、気弱な老人です。
 さらに、老人特有の物忘れの傾向があり、最近では人の名前などをなかなか覚えられません。これがさらに彼を人嫌いにさせています。
 昔、参加していたグループの中では影の薄い存在で、個性豊かなグループのメンバーと一緒に過ごして、自分もその仲間だということを味わうだけで 満足するような、そんな情けない若者でした。
佐藤 政雄


4,シナリオ導入

 季節は残暑厳しい夏の終わり頃です。
 探索者のもとに、見ず知らずの相手から手紙が届きます(以降、この手紙を貰った探索者のことを「手紙を貰った探索者」と呼ぶことにします)。
 手紙の内容は以下の通りです。

「拝啓
 突然のお手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。
 私は、貴方様の祖父君と交友のございました、杉山早苗の孫で杉山奈緒美と申します。
 この度、お手紙を差し上げましたのは、祖母の残した書類を整理しておりましたところ、祖父君のご遺品を当家にてお預りしていることが判明しました。素人目な がらもとても価値のあるものに見受けられましたので、私の判断だけではどうすることもできず、こうして筆をとった次第です。
 このご遺品は、当時の貴方様の祖父君、私の祖母である杉山早苗、そして他のご友人の方々と共同所有をしていたもののようで、一時的に当家で保管をさせていた だいていたようなのです。
 ご遺品は、とても古い時代の木製のレリーフで、素朴ながらも、時代を経てきた味わいのあるものです。日本のものではなく、どこか外国のもののようなのです が、知人の話では、おそらくは数百年は経っているということでした。保存状態は大変良く、当時の製作者の息吹が感じられるようです。
 このようなせっかくの品ですので、このまま時に埋もらせるのはもったいなく思い、70年近く経ったいまですが、再びこの件にて所縁の方にお集まりいただき、 みなさまとご相談をさせていただきたいのですが、いかがなものでしょうか?
 ご多忙のところお手をわずらわせて誠に恐縮ですが、ご連絡をお待ちしております。

かしこ  

杉山奈緒美 」



 手紙は青いインクの万年筆で書かれています。やわらかな女性の字で、かなりの達筆です。
 品の良い和紙の封筒と、それに合わせた夏草の透かしの入った便箋が使われています。手紙の最後と、封筒の裏書には差出人の住所と署名があり、それは手紙の内 容通り「杉山奈緒美」となっています。
 なお、杉山奈緒美の住所はキーパーが自由に決定して構いません。
 場所の条件としては、探索者がそこまで行くのが面倒でない程度の距離で、太平洋の海辺に近く、そこそこ田舎であることが望ましいでしょう。
 東京を例とするならば、千葉の南房総あたりが適当です。

 手紙の返事を書くなり、書かれてある電話番号に電話をするなりすれば、杉山奈緒美から探索者の都合の良いスケジュールに合わせて、会合を開きたいとの返事が 返ってきます。
 ちなみに、遺品というのは、前述した浅浮き彫りのことです。
 もし、探索者が会合に乗り気でない場合は、「遺品」が高価なものであることをほのめかしたり、遺品の扱いに困っているので是非ご意見を聞かせてもらいたいと 頼むなどして、探索者を会合に参加させてください。
 探索者が望むなら、交通費などの経費はすべて杉山奈緒美が持ちます。
 ゲームに参加する気があるプレイヤーならば、このあからさまなキーパーの誘導を断り続けるようなことはしないでしょう。

 もしも、疑り深い探索者が杉山奈緒美の身元を調べたり、手紙の住所の人間を調べた場合、《法律》や《図書館》に成功しても、杉山奈緒美という名の人物につい て何も情報は得られません。しかし、名前だけから一人の人間を調べるのは素人には困難であることも事実なので、それほど不自然なことではありません。
 ただし、手紙の住所について調べてみて《法律》と《図書館》に成功すれば、この屋敷が「杉山芳子」という人物の名義になっていることがわかります。ただし、 彼女の年齢まではわかりません。
 
 キーパーは他の探索者も、この会合に参加させなくてはいけません。
 ゲームに参加している探索者すべてに上記の手紙が届いたことにするのもひとつの手ですが、あまり多くの探索者だと今後のシナリオの展開が不自然になります。 多くても、2〜3人が限度でしょう。
 よって、他の探索者か手紙を貰った探索者の友人や相談相手(遺品の相続について法律に強い学識人がいることは心強いでしょう)として同行したり、遺品の価値 を鑑定するための同行者(考古学や歴史に強い学識者など)としてもよいでしょう。
 単に海水浴がてら、海辺の洋館に友人を車で送るだけといったかかわりでも十分です。


5,事件の真相

 ここでキーパー用の情報として、この事件の真相を記します。

 話は約70年前、昭和初期にまで遡ります。
 当時、財界人や地方名士の子息たちが集い、ボヘミアンを気取って、文学、芸術、科学、冒険など、あらゆる娯楽を楽しむグループがありまた。
 メンバーは杉山早苗(当時25歳)、金谷幸治(当時27歳)、藤田佐和子(当時20歳)、佐藤政雄(当時18歳)、そして探索者の祖父です。
 彼らは貿易業を営んでいる親のつてなどを使って、美術品、工芸品、稀書、珍しい動物の剥製といった目新しい海外の品を手に入れていました。
 その中のひとつに、今回の手紙で「遺品」とされていた浅浮き彫りがあったのです。
 目の肥えていたグループのメンバーも、この不思議な浅浮き彫りには強い興味を持ちました。
 読書室に運んでは、この模様を彫った民族の正体を探ろうと文献を漁り、居間に飾っては、浅浮き彫りに描かれた遠い地の光景を眺めながら様々な空想に耽ったの です。

 しかし、この浅浮き彫りの正体は、名も知らぬ古い教団が造り出した「大いなるクトゥルフ」への生け贄を捧げるための道具だったのです。
 この浅浮き彫りは、狙った犠牲者の精神に深い影響を与え、やがては肉体までも浅浮き彫りの中に取り込み、大いなるクトゥルフの御許へ引き寄せてしまうので す。
 これを造った教団の人々(人間ですらないかもしれませんが)がいなくなったあとも、この浅浮き彫りは新たなる犠牲者を求めて、世界の好事家の手を渡り続けて きました。
 それがどういう経路を渡ってか、昭和初期の日本にも渡ってきたのです。
 この浅浮き彫りは、オーガスト・ダーレスの小説である「謎の浅浮き彫り(英題Sonetihing in Wood)」に登場し、ジェイスン・ウェクターを取り込んでしまったものと同質(同じものではありません)のものです。
 
 メンバーが浅浮き彫りに深く魅了されるにつれ、その中に潜む邪悪な存在は、彼らの匂いを嗅ぎ付け、目をつけたのです。
 最初の犠牲者は、浅浮き彫りを預かっていた屋敷の住人である、杉山早苗でした。
 彼女は浅浮き彫りを寝室に置いていましたが、ある晩、浅浮き彫りの向こうにある次元からの魔手に捕らわれ、行方不明となってしまいます。もちろん、彼女はそ のまま見つかることはありませんでした。

 続いて、数年後に杉山早苗を偲んで屋敷を訪れた藤田佐和子を取り込み、20年以上経ってから、浅浮き彫りの資料的価値に気付き屋敷を訪れた金谷幸治をも取り 込みました。
 その後、40年以上経ってから、浅浮き彫りは満たされない渇望のため、浅浮き彫りは取り込んだ人間を利用して残りのメンバーを引きずり込むこととしました。

 現代によみがえった杉山奈緒美たちは、まず昔の自分たちの集会場でもあり、浅浮き彫りが保管されていた屋敷に住んでいた杉山芳子を殺害し、探索者をおびき寄 せる場所として乗っ取りました。
 そして、しばらく現代人としての勉強した後、名前と立場を偽り、探索者たちに「4,シナリオ導入」の招待状を出して屋敷におびき寄せたのです。
 キーパーは彼らを演じる時、「3,NPC紹介」の当時の性格を参照してください。彼らは狂人ではありますが、当時の性格を残しています。
 金谷譲治の指導で、彼らは必要最低限の現代人としての立ち振舞いを身に着けていますが、流行言葉やトレンドには疎いままです。もっとも、それも流行に興味が 無いといえば不自然ではない程度のものです。
 ただ、アメリカの先代大統領の名前や、ドイツの統合、クェート侵攻といったことまでは勉強しきれていません。
 これらの一般常識の欠落は、探索者が彼らの正体を暴く手掛かりとして利用できることでしょう。
 
 彼らは完全なる狂人ですが、高度な知性をも備えている質の悪い存在です。それぞれ、不自然でないように自分を昔のメンバーの子供や孫と偽っており、その役を こなしています。
 しかし、実際には、杉山早苗には妹はいましたが娘はいませんし、藤田佐和子にも子供はいませんでした。
 彼らの最終目的は、浅浮き彫りが目をつけたメンバーと同じ人数の人間を浅浮き彫りへ取り込むことです。
 そうすることで、彼らは邪神からの褒美(?)として、深海に沈む呪われた都市で、ガマガエルに似た怪物の吹き鳴らすフルートに合わせて永遠に狂った踊りを舞 い続けることが出来るのです。
 彼らが赤の他人ではなく、わざわざ昔のメンバーの所縁の人間を選らんだのは、普通の人間よりも浅浮き彫りに秘められた神秘を理解してくれるだろうと思ったか らです。


6,杉山屋敷

 手紙にあった住所を訪ねようとすれば、地理的にはかなり不便な所にあります。
 自動車以外の手段ですと、最寄りの駅からタクシーで小一時間はかかり、途中、背の高い雑草に半分隠された未舗装の道を走らねばなりません。
 海から吹く風は強く、なんとなく苦い匂いがします。

 杉山奈緒美のの屋敷は、海辺に面した古い洋館です。
 年代物のレンガが多く使われ、高い切妻屋根と、大きなガラス窓が印象的な洒落た建物です。
 この洋館の造りを見て、《歴史》×2か《知識》1/2に成功すれば、大正末期頃に建築されたものであることがわかります。あちこちに改修のあとはあります が、建築当時の面影を崩すこと無く、いまもそのままの姿で残っているのは、とても貴重と言えます。
 屋敷の回りには人家はなく、見渡す限りススキの野原でとても寂しい土地です。
 少し高いところに登って見てみれば、土地全体が低いのかあちこちに湿地のように水たまりが残っているのが見えます。《地質学》×5に成功すれば、ここが水捌 けの悪い土地であることがわかり、こんな土地に70年以上前の建物が当時の姿を残しているのは、とても珍しいことだとわかります(これは大いなるクトゥルフの 由来のものである浅浮き彫りのご加護です)。


8,先客たち

 屋敷の玄関の呼び鈴を押せば、すぐに杉山奈緒美が迎えに出ます。
 彼女は薄いラベンダー色のワンピースを着ており、「(手紙を貰った探索者の名前)さんですね?」と確認してから、にっこりと微笑みます。
 その際、手紙を貰った探索者に連れがいたとしても、少しも動じた様子も見せずに、「お友達のかたですか? ようこそ、歓迎いたしますわ」と屋敷内の応接間を 兼ねた居間へ案内します。

 すでに屋敷には先客がおり、探索者たちは最後の客です。ちなみに客たちはタクシーで来たのか、外に車はありません。
 杉山奈緒美は「これでみなさん揃いましたね」と言って、先客たちも交えて自己紹介をしてもらいます。
 先客たちの外見等の説明は「3,NPC紹介」を参照してください。

 まずは、金谷譲治が挨拶をします。
「はじめまして、金谷譲治といいます。杉山早苗さんには、私の父がお世話になったそうで……このたびは奈緒美さんから手紙を頂き、参上した次第です。
 以前は大学で教鞭を取っておりましたが、いまは職無しの身で、気が向いた時に論文なんぞを書いています。専門は民俗学でしたが……今回の遺品は、とても興味 深いもののようですよ」

 次は藤田綺羅子です。
「こんにちは、藤田綺羅子です。私のお婆さんの遺品があると手紙をもらって……なんだか昔の話で実感はわかないんですが、杉山さんが困っているみたいだったの でお邪魔しました」

 次は佐藤政雄です。
「佐藤政雄です。杉山早苗さんとは昔、友人でしたが、彼女が行方不明になってからは杉山さんの家ともまったく付き合いが無く……この屋敷にくるのは50年…… いや70年ぶりぐらいでしょうか……
 それにしても、この屋敷は昔と変わっていない……物忘れのひどくなった老いぼれの頭にも、この屋敷のことはしっかりと残っている……ほんとうに、ここは何も 変わっていない……」
 佐藤政雄は顔を伏せて妙にオドオドした様子で自己紹介をすると、そのまま黙り込んでしまいます。そして、時折、杉山奈緒美と藤田綺羅子の二人を見ては、脅え たように目をそらしたりします。この二人に、70年前の杉山早苗と藤田佐和子の面影を見出したからです(本人なのですから当然です)。
 彼は次々とメンバーが行方不明となった因縁のあるグループの集いに参加するのは、本当は気が進みませんでした。しかし、生活の厳しさから、遺品の分け前ほし さにこの屋敷にやってきたのです。

 最後は杉山奈緒美です。
「本日は、お忙しい中、みなさまにはお集まりいただきましてありがとうございます。私がみなさんにお手紙を差し上げました杉山奈緒美です。
 では、さっそくお話にあった遺品をお見せいたしますね」
 そう言って、杉山奈緒美は二階に探索者たちを案内します。


9,屋敷の間取り

 屋敷の間取りを説明します。
 ここで説明されている部屋以外にもトイレや台所など、普通の屋敷にありそうな部屋はありますが、シナリオ上、重要ではないものは省いています。

★応接間兼居間
 屋敷の中は玄関から入ってすぐのところに、広い居間があり、そこが生活の中心の場となります。
 10人程度ならば十分に座れるだけのソファーが揃っています。
 それに少々行儀は悪いですが、やわらかく分厚いじゅうたんにクッションを置き、足を伸ばしてゆったりとするのも悪くありません。実際、杉山奈緒美は夜も更け てリラックスした雰囲気になると、じゅうたんの上でクッションに半身をもたれかけ、のんびりすることが多いです。杉山早苗たちのグループは西洋風の生活様式を 取り入れていましたが、別に西洋的礼儀作法にうるさいわけではありません。当時の良識ある大人が眉をひそめるような、気取った無作法さを彼らは好んでいたので す。
 応接間の調度品は超一流で、テーブルセットやサイドボードは、売れば新車が一台買えるぐらいの価値がありそうです。
 また、南洋のユニークな彫像や、エジプトの象形文字が刻まれた石版のかけら、すでに取引きが禁止されているような古い剥製などが飾られており、落ち着いた洋 館の居間をエキゾチックに色付けています。《考古学》や《生物学》や《博物学》に成功すれば、これらがすべて本物である事がわかります。これらの物品は、昔、 まだ法律が厳しくなかった頃に杉山家が独自のルートで輸入したものです。もちろん、違法の品ではありません。

★読書室
 図書館と言うほどの規模ではありませんが、それでも五百冊以上の古書、稀書が保管される立派な部屋です。
 深いつやのあるオーク材で造られた、年代物の小さな丸テーブルとイスは、かなりの値打物のようですが、この部屋ではいまも実用品として使われています。
 この部屋は本棚が場所を占領しているため、結構広い部屋にも関らず5人も入れば一杯です。 
 昔は、詩の朗読や文学の談義が花開いた場所だったのでしょうが、いまは埃っぽくあまり使われていないようです。

 読書室の本棚を調べてみて《目星》に成功すると、きちんと整理分類された本棚の中で、一冊だけ本が抜けていることに気付きます。《図書館》に成功すれば、抜 けている棚に並んでいる本のジャンルからオカルトに関する文献だったのではないかと予想できます。

 もう一度、本棚を調べて《目星》に成功すると、きれいに並んでいる本棚の中で一冊だけ背表紙が手前に出ている本があります。
 それは谷崎潤一郎の「痴人の愛」で、発行されたのは昭和2年と大変古いものです。この本を流し読みをして《アイデア》に成功すると、物語の登場人物に「奈緒 美」「譲治」「綺羅子」という名前があるのを見つけます。
 このことを杉山奈緒美たちに訪ねれば、それは自分たちの祖母や親たちの好きな小説で、その登場人物の名を借りて、自分の名前をつけたらしいこと。それにして も、みんながそうだとは偶然の一致にしてもおもしろい、といったことを愉快そうに笑います。
 実際には、杉山奈緒美たちは、自分たちの新しい名前のこの「痴人の愛」から借りてきたため、名前が一致しているのです。

 何か変わったものは無いかと探して、《図書館》に成功すれば、海外の新聞の切り抜きが貼られたバインダーを発見します。
 新聞は1930年代アメリカの「ボストン・ダイアル」紙で、かなり古びて黄ばんでおり、バインダーのほうも新聞とほぼ同時期のもののようです。
 切り抜かれている記事は、どれも音楽と芸術の批評家であるジェイスン・ウェクターという人物のものです。
 その名を聞いて、《知識》1/20に成功すれば、彼が音楽や芸術に対し、痛烈でいながら斬新な批評を発表し、世にセンセーショナルを巻き起こした人物である こと。そして、多くの物議をかもし出しながら、突如、行方不明になったことを知っています。
《英語読み書き》に成功すれば、記事の批評の内容はは確かに独創的で、かなり手厳しいものであることがわかります。また、批評の文中にたびたび「アハピ」「ア フムノイダ」「ポナペ派」といった意味の解らない単語が登場していることが気にかかります。また、これらの記事の切り抜きの最後は、ジェイスン・ウェクターが 突如、謎の失踪を遂げたという内容のものであることもわかります。
 これらの記事は、杉山早苗たちが、浅浮き彫りについて調べていくうちに発見した「ポナペ教典」に書かれた冒涜的な内容と、ジェイスン・ウェクターの一見理解 不能な批評に共通点を多く見いだし興味を持って収集したものです。ただし、本シナリオにおいては、あまり意味のある手掛かりではありません。クトゥルフファン へのサービスのようなものですので、このあたりはさらりと流してしまったほうが良いでしょう。

★食堂
 食事をする場所です。テーブルは広く、10人は楽に腰をおろすことが出来ます。
 ここは本当に食事をするためだけの場所で、食後のコーヒーや談話は居間や読書室で楽しむことになります。

★ゲストルーム
 ゲストルームは二階にあり、全部で5部屋あります。
 一人部屋が二つに、二人部屋が三つです。
 すべての部屋に小さな洗面所がついていますが、浴槽やシャワーはありません。身体を洗いたい人は、二階に客用の浴室があるのでそれを共同して使うことになり ます。
 杉山奈緒美の部屋は別にあり、他の客たちはすでに部屋を決めているので、残った部屋を相談をして部屋割りをする必要があるでしょう。
 参考までに、佐藤政雄、藤田綺羅子は一人部屋、金谷譲治は二人部屋を使っています。

★杉山奈緒美の寝室
 女性らしい淡いクリーム色をした壁紙の、古い洋風の部屋です。
 この部屋に、問題の「遺品」である浅浮き彫りが飾られています。
 他にはベッドと小さな書物机、ドレッサーが置かれてあり、部屋はそれらの調度品だけで一杯です。《目星》に成功すると、古い調度品はともかく、シーツやカー テンもかなり古そう(さすがに70年前のものからは、取り替えられていますが)であることがわかります。
 この部屋からは、生活感がほとんど感じらなく、奇妙に思えますが、少し調べてみればもっと沢山の奇妙な点を発見できます。

 まず、写真や日記、手紙などプライベートなものを探しても、不思議と何も見つかりません。ドレッサーには服が一枚も入っていなく、それどころかどこを漁って も私物らしいものは一切ありません。
 ただし、書物机の一番上の引出には、地下室の扉の鍵、探索者に宛てた手紙を書いた際に使用した必要最低限の筆記道具、そして英語版の「ポナペ教典」がありま す。これは当時、杉山早苗たちが金とコネに物を言わせて手に入れた稀書に紛れていた一冊です。
 流し読みをすれば、その中にポナペ島沖の深淵に在る忌まわしき海底都市ルルイエの記述を発見します。
 ルルイエには「大いなるクトゥルフ」が眠りにつきながらも常に生け贄を求め、世界の闇の海に潜む信者たちは、様々な手段で犠牲者を深き海底へと引き込もうと していることが記されています。

 これらの生活感のない部屋について尋ねられた場合、杉山奈緒美は最近、この屋敷に帰ってきたので、まだ私物を揃えているヒマがないのだと説明します。

★杉山芳子の寝室
 屋敷の二階の部屋を見てまわると、一室だけ鍵のかかっている部屋があります。簡単な造りの鍵なので《錠前》×2に成功すれば、鍵を開ける事は出来ます。力づ くで鍵を壊して開けようとするならば《STR》16の抵抗ロールに成功する必要があります。このロールには二人まで協力が可能です。
 部屋の中は、ベージュに統一された落ち着いた造りになっています。
 調度品などは最近のものが多く、金銭的価値も杉山奈緒美の部屋のものほどではありません。
 ドレッサーの中の服などを調べれば、ここが女性の部屋である事がわかります。《目星》に成功すれば、杉山奈緒美の部屋よりも、よほどこちらのほうが生活感が ある事に気付きます。
 書き物机を探すと、小さなアルバムと、探索者に届いた手紙に使用されていた便せんを発見します。
 アルバムには、杉山奈緒美に面影の似た老婦人の写真が納められています。
 これは杉山芳江の写真です。しかし、杉山奈緒美の写真はアルバムのどこにもありません。
 また、アルバムの写真を見て《目星》に成功すれば、写真の中で老婦人の着ている服の中に、杉山奈緒美が着ていたラベンダー色の服があることに気付きます。

 杉山奈緒美にこの部屋のことを尋ねると、自分の母の杉山芳子の部屋で、現在、病院に入院しているため部屋を閉めているのだと説明します。

★地下室
 屋敷の裏手には、目立たない場所に地下室の入口があり、そこから地下のボイラー室と物置を兼ねた部屋に行く事ができます。
 ここの詳しい説明は「14,屋敷の捜索」を参照してください。
  キーパーは「12,深夜の悲鳴」のイベントが起きるまでは、探索者が屋敷の外をうろついて地下室を探そうという行動をしない限り、この部屋があることを説 明しなくて構いません。


10,謎の遺品

 問題の「遺品」は、杉山奈緒美の部屋に飾られています。
 それは50×120センチぐらいの横長の木製の浅浮き彫りです。
 色は黒檀のように真っ黒で、木目は細かく渦を巻いています。
 表面に彫られた細工は絶妙で、水中にある巨石建造物から八腕目の未知の生物(大いなるクトゥルフ)が現れるさまが彫られています。底部には未知の言語でなに やら言葉が彫られています。《クトゥルフ神話》に成功すれば、この言葉が「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」と読 み、「ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり」という意味であることがわかります。
 何の木を彫ったものかは見ただけでは判断できません。《生物学》に成功すれば、恐ろしく重く堅い木で、自分の知識の範疇外のとても珍しいものであることがわ かります。
 この浅浮き彫りを見て、《芸術》に成功すれば、原始的な技工によって丁寧に彫られた歴史的にも貴重な作品ではあるが、全体の構図にはどこか物足りなさを感じ ます。なんとなく、これがまだ未完成のような気がするのです。
 金銭的価値を調べたい場合、《芸術》か《知識》1/5に成功すれば、珍しさと歴史的価値から200万円程度の値段がつくだろうと判断できます。
 探索者が全員判定に失敗しているようだったら、金谷譲治が代わりに価値を説明します。

 この浅浮き彫りを見た佐藤政雄は、
「やっぱりだ……70年前、確かに、私はこれを見た……この屋敷で、みんなと……」
 と、ブツブツと独り言を呟きます。
 金谷譲治は独特な細工に感心し、満足した様子を演じます。
 藤田綺羅子は彫られている不思議な光景には興味を持ったようですが、芸術作品としてはさほど関心が無い様子を演じます。


11,雨の中の団欒

 探索者が到着して落ち着いた頃、雨が降り出します。
 まるでバケツをひっくり返したような大雨で、テレビやラジオをつければ、この地域に突如として集中豪雨をもたらす雨雲が発生して、増水警報が出されているの がわかります。
 この屋敷まで走ってきた道は、あっというまに水に覆われ、まわりのススキの野原も池と化していきます。
 ところが、杉山奈緒美は落ち着いたもので、屋敷のある敷地はまわりの土地より少しだけ高いので、少々の増水なら問題はないと答えます。大正時代からずっとこ の地に立っているのだから折紙付だという言葉には、実に説得力があります。
 そして、その言葉に偽りはなく、あたりが湖のように増水しても、屋敷を中心とした50メートル四方の敷地内は水がたまることはありません。
 ただし、実際には、この雨は杉山奈緒美たちが探索者を足留めするために大いなるクトゥルフの力を借りて降らしているものであり、屋敷は神の加護によりいかな る水難からも守られているのです。

 外の雨はひどいものですが、屋敷の中は快適です。
 食堂では、杉山奈緒美と藤田綺羅子が作った豪華な料理が並べられます。
 この西洋風の屋敷に相応しく、鮮魚のマリネ、帆立貝のオーブン焼き、タンシチューといった洋食のメニューです。
 佐藤政雄は、料理が並べられると青ざめた顔をして、ほとんど口にしていません。その様子を見て、杉山奈緒美は、「ごめんなさい……佐藤さんには、もっとあっ さりとした料理のほうが良かったですね」と謝ります。
 すると、佐藤政雄はビクッと驚いて「い、いえ、大丈夫……タンシチューは私の好物です……」と、もごもごと口の中で呟きます。しかし、言葉とは裏腹に手は まったく動いていません。
 この佐藤政雄の態度は、70年前、杉山早苗たちとこの屋敷で食べたメニューそのままの料理が出てきた事にたいする戸惑いからきています。しかも、当時、彼が 好物だった料理だけが狙ったかのように並べられているのです。

 晩餐の後は、居間でコーヒーを飲む事になります。
 大型サイフォンでゆっくりと入れたコーヒーと、ジンジャー入りの杉山奈緒美の手作りクッキーは極上の味わいで、外の激しい雨などまったく気にならない別世界 のように感じられます。
 ゆっくりとお茶を楽しみながら、杉山奈緒美は佐藤政雄に自分たちの祖父(本当は自分たちのことですが)たちのことを尋ねます。
 佐藤政雄は昔と変わらない居間の雰囲気に心を開いたのか、珍しく饒舌に若い頃の話を始めます。
「私たちが、この屋敷に集まって交友を深めたのは、もう70年ぐらい前、昭和の初め頃です。
 あの頃、私たちは親の金やコネを利用して、いろいろと世界中の物珍しいものを集めたり、新しい芸術や文学を楽しむなどして、先駆的文化人なんてものを気取っ ていました。
 メンバーは杉山早苗さん、金谷幸治さん、藤田佐和子さん、そして(探索者の祖父)さんに、私です。
 そのころは、まだ私の家も相当な資産を持っていて、杉山さんのような名家ともお付き合いがあったんですよ」
 と言って、佐藤政雄は寂しそうに笑います。
「思えば、私の人生の中で、あの頃が一番楽しいものだった……
けれど、それも早苗さんが行方不明となり、数年後、後を追うように佐和子さんが姿を消してしまうと……自然と付き合いも少なくなってしまいました。あの戦争が 始まって、私の家もそれどころではなくなってしまったのです。
 仕事の都合で住所が定まらない時期もありまして、それからは幸治さんとも連絡が取れなくなりました。
 数十年も経ってから、彼らの身内のかたにこうして会えるだなんて、なんとも不思議な縁ですね」

 遺品の処分については、杉山奈緒美から、「みなさんおつかれのようですので」と、明日打ち合わせをするよう提案されます。
 今晩は遺品についての話し合いをしないことを知ると、佐藤政雄はもう長居は無用とばかり性急さで、「今日は疲れたので」と一言だけ言い残し、先にゲストルー ムへと戻ります。
 その後も、団欒は何事も無く続けられます。
 会話の内容は、主に金谷譲治による浅浮き彫りについての私見や、居間の変わった調度品の品評が主になるでしょう。
 彼の絶妙な語り口はいつまで聞いていても退屈しない楽しいものです。しかし、杉山奈緒美と藤田綺羅子の二人を観察して《心理学》に成功すれば、彼女たちが見 た目は熱心に話を聞いているようですが、その内心ではまったく話に関心を持っていないことがわかります。
 この団欒の時間は、探索者がNPCたちにいろいろと質問をする良い機会でしょう。


12,深夜の悲鳴

 深夜、みんなが寝静まった頃、突然、男の悲鳴と、ガラスの割れる音が屋敷に響きわたります。
 音は佐藤政雄の部屋のほうで聞こえました。
 部屋の鍵は内側から留め金が下ろしてあるようで開きません。《STR》16の抵抗ロールに成功すれば、扉を破る事が出来ます。このロールには二人まで協力が 可能です。
 中へ入ると、部屋には誰もいません。
 窓は破られ、大粒の雨が部屋に舞い込んでいます。
 ガラスの様子を見て、《目星》に成功すれば、破片の散らばり方から推測して、窓ガラスは内側から外に向けて破られたことがわかります。
 外は真っ暗で、何も見えません。豪雨により水浸しになったススキの野原は、まるで大きな湖のようで、自分たちは孤島に取り残されたかのような気分になりま す。
 佐藤政雄を探して《目星》1/2に成功すれば、屋敷からちょっと離れた地面に人影が動いたのに気付きます。

 屋敷の周囲を探せば、破られた窓の下から10メートルぐらい離れたところに、佐藤政雄を発見します。
 なお、キーパーはこのときに、屋敷の裏手に地下室の入口があることをさり気なく描写しておきましょう。
 最初にたどり着いた探索者が、彼を抱き起こしたりすると、
「帰れるのか……あの日に……輝いていた日に……
 いや、嘘だ!
 みんな行ってしまったんだ……私を置いて!
 なんで、きみはそんなにも美しいんだ?
 私はこんなにも醜く老いさらばえたというのに!
 嘘だ……嘘だ……もう、帰れない……帰りたい……」
 と、うわごとを呟きます。
 そして、最後に、
「………………なんだ、アレは!!!」
 と絶叫をあげると、口から噴水のように大量の水を吐き出し、仰け反って倒れます。
水は一分弱に渡って吐き出されます。そして、水が止まると、彼はすでに死亡しています。蘇生する可能性はありません。
 その死に顔はすさまじいもので、目は眼球が半分飛び出すほどに大きく見開かれ、口は絶叫を上げたままの形に固まっています。
 死因を調べてみて《医学》に成功すれば、なんと溺死であることがわかります。しかも、不可解なことに吐き出された大量の水や、胃や肺の中に残っている水は、 海水なのです。

 この事件は、佐藤政雄が浅浮き彫りが伸ばしてきた精神的触手に脅えて、後先を考えずに二階の窓を破って逃げ出したためです。
 しかし、矮小な人間が神に一度目をつけられて逃れられるはずも無く、このような独特な方法で無残に殺されてしまったのです。

 佐藤政雄が死んだことを杉山奈緒美に知らせたとき、《聞き耳》に成功すると、「残念だわ……これで二人目……」と小さく呟きます。
 これはすでに死んでしまった探索者の祖父と、佐藤政雄で、昔のメンバーが二人死んだことを言っているのです(なお、手紙を貰った探索者が二人だったら「これ で三人目」と台詞が変化します)。
 もし、探索者がその言葉の意味を尋ねても、「そんなことを言いましたか?」と惚けるばかりです。
 金谷譲治は冷静にこの事を受け止め、「だいぶ、精神がまいっているようでしたから……突発的な自殺ではないですかね?」と自分の推測を述べます。海水につい ては、首を傾げながら、「入水自殺をしようとしたが、失敗するか、途中で気が変わり、ここまで戻ってきたものの体力の衰えから心臓マヒでも起こしたので は……」と自信なげに語ります。
 藤田綺羅子は、哀れな老人の死にショックを受けたようで、「せっかく会えたのに……こんな風に死んでしまうなんて可哀想……」と涙を浮かべています。当時、 藤田佐和子と佐藤政雄は年齢が近かったため、仲も良かったのです。

 夕方から続く大雨による増水のため、とても外部との接触は取れそうにありません。
 いつのまにか電話線は切断され、大雨の影響なのか携帯電話も使い物になりません。もし自分は衛星回線の携帯電話を使っているからどんなときでも外部と連絡が 取れるはずだと強硬に主張するようなプレイヤーには、「宇宙からの暗黒霊気が、キミの電話の矮小な電波を遮っているらしい」と言ってやって構いません。
 もし、増水の中を助けを呼びに行こうとするならば、まさしく命懸けです。《泳ぎ》に失敗したら、溺死というぐらいの厳しさで十分でしょう。もちろん、屋敷に ボートなどはありませんし、もしあったとしても雨水に流されて海まで運ばれるのがオチです。
 よって、探索者は佐藤政雄の死体と一緒に水が引くまで屋敷で我慢することとなります。


13,奇怪な体験

 佐藤政雄が死んだ時間から、夜明けまではまだ時間があるので、杉山たちは仮眠を取ることにします。このとき、彼らと一緒に仮眠をとった探索者は奇怪な体験を することとなります。
 しかし、もしかすると探索者たちはこの屋敷に怪しいものを感じ取って、独自に調査を開始するかもしれません。その場合は、読書室での調査の最中など、ふと気 を抜いた隙を狙って奇怪な体験をすることとなります。
 なお、奇怪な体験をする探索者は「手紙を貰った探索者」プラス一人だけです。その一人はキーパーが適当に決めて構いませんが、なるべくなら屋敷の客たちと親 しくしている探索者を選ぶとよいでしょう。

 その探索者が眠っていた場合は《幸運》に、起きていた場合は《目星》に成功すると、自分の知らないうちにブツブツと壁から透明の泡のようなものがわき出して いることに気付きます。その泡は無数に集まり、透明なタコの手のような形をとって、ジワジワと探索者のほうに忍び寄ってきます。しかし、探索者がその存在に気 付くとすぐに消え失せてしまいます。
 そんな奇怪な体験をした探索者は自分自身に対し《精神分析》を成功して《アイデア》に失敗すると、これは単なる幻覚などではなく、別の次元から何者かが実体 化して現れようとしていたのではないかという宇宙的恐怖に満ちた推測が思い浮かんでしまいます。この驚くべき事実に気付いてしまった探索者は0/1D4正気度 ポイントを失います。
 また、《幸運》や《目星》に失敗した探索者は、ひたりと自分の首筋に何かが触れた感覚によって、恐ろしい恐怖を感じます。それは眠っていても、すぐに目を覚 ましてしまうようなおぞましい感触です。単なる温度的な冷たさではなく、直接、神経に異界の冷気が注ぎ込まれるような、そんな普通の人間が体験したことのない 感触なのです。
 その冷気を感じた探索者は、自動的に壁から伸びている透明な触手の存在に気付きます。そのおぞましい姿と冷気を感じた探索者は0/1正気度ポイントを失いま す。

 他の探索者は、すぐ近くにこの奇怪な体験をしている探索者がいても、そのタコのような触手を見ることはありません。それは浅浮き彫りに目をつけられた探索者 だけが見ることが出来るのです。

 この後、キーパーは様子を見て、このイベントを繰り返してください。
 ただし、そのシチュエーションは、その都度、少しずつ変えたほうが望ましいでしょう。
 例えば、風呂に入っている時に泡が触手に変わるとか、鏡の奥から何やらモワモワした霧のような触手が迫ってくるとか、みんなのいる居間で自分にだけ見える奇 怪な触手が追ってくるとかいったものです。その都度、正気度ロールをしなくてはなりませんが、回数が増すごとに手加減を加えても構いません。クライマックスを 前に狂気に陥ってしまってはおもしろくないからです。
 キーパーは、このイベントをあまりしつこく繰り返して、プレイヤーが恐怖に麻痺してしまわないよう注意してください。


14,地下室の捜索

 前項の「13,奇怪な体験」のイベントや、その他の奇妙な事件を体験した探索者は、よほど鈍くないかぎり、この屋敷と浅浮き彫りを怪しいと感じるでしょう。

 屋敷の外を調べてみれば、裏手にひっそりと地下室の入口があるのを発見します。
 扉には鍵がかかっており、開けるには《錠前》に成功するか、杉山奈緒美の寝室にある鍵を使用するか、もしくは最後の手段として《STR》31の抵抗ロールに 成功してぶち破るといった方法があります。この《STR》31の抵抗ロールは二人まで協力が可能です。
 ただし、杉山奈緒美などと一緒に行動していた場合、そこはプライベートな場所だからということで、礼儀正しく降りるのをやめるよう注意されます。それでも強 引に降りようとするならば、他の客たちを呼んで止めるのを手伝ってもらおうとします。
 他の客たちに静止されても、それでも力ずくで降りて行こうとするならば、もはや、誰も止めません。ただ、みんなその探索者の無礼さに呆れた様子で見つめるだ けです。

 扉を開けると、古いコンクリートの階段が下に続いています。
 天井の低い地下室で、大きなボイラーと雑多な生活用品が置かれてあります。
 薄暗い電灯しかなく、かなり雑然としているので、中を調べるのは一仕事です。それでも三十分ほど調べて《目星》に成功すれば、大きな段ボールの中にビニール 袋に包まれた老婦人の死体が隠されているのを発見します。
 この死体は、言うまでも無く杉山芳江の死体です。その表情は恐怖に歪み、とても無残なものです。
《医学》×5に成功すれば、首に指の跡がアザとなって残っていることから絞殺されたことがわかります。さらに《医学》に成功すれば、死亡したのが探索者に手紙 の届いた日から一ヶ月ぐらい前であることがわかります。
 指のアザの大きさを調べてれば、やや大きく力強いところから、それが男性のものではないかと推測できます。彼女を殺害したのは金谷譲治です。

 また、死体と一緒に肖像画も隠されています。
 肖像画には杉山奈緒美とそっくりの女性が描かれていますが、それは大変古いもののように見えます。サインは無名の画家のものですが、描かれた日付は昭和の初 めと記されています。
 この肖像画は、杉山早苗を描いたもので、最近まで屋敷に飾ってあったものですが、杉山奈緒美たちが自分たちの正体を隠すために、死体と一緒にここに隠したの です。


15,消えた女主人と残った客

 キーパーはタイミングを見計らって、杉山奈緒美を屋敷からいなくさせてください。
 できれば、探索者が杉山奈緒美を怪しいと断定したときが良いでしょう。例えば、杉山芳江の死体を発見したあとや、彼女の寝室の不自然さに気付いたときなどで す。
 なお、杉山奈緒美がいなくなってから浅浮き彫りを調べると、ある奇妙な点に気付きます。
 浅浮き彫りの中に、とても小さな人間のようなものが彫り込まれているのです。《アイデア》か《芸術》に成功すれば、以前に見た時には、こんなものは無かった ことに気付きます。前もって写真やスケッチをとっていれば、それは確実に証明できます。
 浅浮き彫りに人間の像が現れたことに気付いた探索者は0/1D3正気度ポイントを失います。
 その人物を良く観察すると、髪が長いことや体型などから、それが女性であることがわかります。そして、その姿は杉山奈緒美と重なる部分が多くあります。
 この浅浮き彫りを物理的に破壊しようとしても不可能です。銃弾すら跳ね返しますし、ガスバーナーで熱しても焦げることすらありません。

 残された金谷譲治や藤田綺羅子は、戸惑った様子で探索者に杉山奈緒美の行き先に心当たりはないかなどを尋ねたりしますが、これはすべて自分達を信用させよう とする演技です。
 二人は何も知らないふりをして、探索者を油断させようとしています。
 彼らは、探索者たちを分断しようとします。出来れば、余分な探索者は殺してしまいたいと思っているのです。
 その方法として、以下に例をいくつか記します。

 金谷譲治が外に杉山奈緒美の姿を見たと言って、探索者を外に連れ出します。
 大雨で見通しのきかない中、手分けして探そうなどと提案をして、こっそりと余分な探索者の殺害を試みます。
 彼は得意の柔道で無音の内に探索者を絞め殺そうとします。
 ここはひとつ、格闘の得意な探索者をわざと狙って、緊迫感のある一騎打ちをしてもらうのも一興でしょう。

 藤田綺羅子は、その魅力を十分に生かし、か弱い女性が強い男性に頼るといったごく自然な行動をとって、部屋に余分な探索者を招いたりします。
 腕力には自信の無い彼女ですが、昭和初期、彼女が冒険旅行に愛用していた小型拳銃(32口径リボルバー)を隠し持っています。彼女は探索者が油断していると ころを、クッションなどを防音材に使って射殺しようと狙います。
 もっとも、彼女は素人ですので、前もって警戒していれば十分に不意打ちに気付く可能性は十分にあります。具体的には状況に応じて、《幸運》や《聞き耳》など のロールを要求するのが適当でしょう。

 二人のどちらかが飲食物に薬を混ぜておくという手段もあるでしょう。
 ただし、専門的な劇薬などはこの屋敷には無いので、農薬などを強い酒や冷菜などに含ませるのが関の山です。素人の二人には、効果的に劇薬を飲ませる手段も思 いつかないのです。
 薬を盛られた探索者が《目星》1/2に成功すれば、喉に通す前に匂いや味から気付きます。もし、気付かないで飲み込んでしまったとしても《CON》8の抵抗 ロールに成功さえすれば、吐き気や目眩を催すなどの症状は出ますが、命に別状はありません。しかし、抵抗ロールに失敗した場合は、耐久力に5点のダメージを受 け、数日間は肉体的技能はすべて半分で判定するようになります。

 このシナリオのミソは、屋敷にやってきていた客のほとんどが敵であるというものです。
 よって、寝室の不自然さや、杉山芳子の死体、ポナペ教典などを利用して杉山奈緒美の怪しさを強調しつつ、実は、隣で一緒に脅えていた人物も自分たちの命を狙 う狂人だったという意外性をキーパーは効果的に演出してください。


16,浅浮き彫りからの魔手

 金谷譲治か藤田綺羅子の探索者を抹殺する行動が失敗に終わり、どちらか一人が行動不能(もしくは死亡)に陥った場合、残ったほうは最後の手段として浅浮き彫 りの超自然的な力に頼ろうとします。
 残されたほうは、部屋に閉じこもるなどして探索者から身を隠し、「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」という奇怪な 呪文を唱え始めます。その呪文を聞いて《クトゥルフ神話》に成功すれば、それが「ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり」という意味である ことが変わります。
 
 すると、屋敷の壁や天井、床と、ありとあらゆる場所から透明の泡のような触手が伸びてきます。浅浮き彫りが全力で探索者を捕らえようと、その力を発揮してい るのです。このおぞましい状況に遭遇した探索者は0/1D4正気度ポイントを失います。
 触手は誰彼構わず探索者を捕らえようとします。
 このときの触手は完全に物質化しているので、探索者はそれを振り切るか、撃退して屋敷を逃げねばなりません。屋敷に留まろうとすれば、いずれは浅浮き彫りに 取り込まれてしまいます。
 触手を振り切るには、《STR》10の抵抗ロールに成功させて強引に触手を引きちぎって進むか、《DEX》8の抵抗ロールに成功させて素早く触手を避けて逃 げ出すかを選択できます。このどちらかに成功すれば、探索者は屋敷の外へ脱出することが出来ますが、失敗すると、その探索者は捕われてしまいます。
 もし、探索者が窓などの近くにいて、それを近道に使って逃げ出そうとするならば抵抗ロールの必要はありません。ただし、探索者が二階にいた場合、《ジャン プ》に成功しなければ1D6のダメージを受けることになります。

 捕らえられたしまった探索者を助け出すには、群がる触手を戦闘で撃退しなくてはなりません。ただし、この戦闘には捕らえられた探索者は参加することは出来ま せん。
 以下が触手のデータです。触手は無数にありますが、判定を繁雑にしないため、探索者に襲いかかろうとする無数の触手を合わせて、一匹の神話生物として処理し ます。この触手の耐久力が0になったということは、群がる触手を一時的に撃退して屋敷の外に出るための血路をなんとか開いたという意味であり、決して浅浮き彫 り自体を倒したということではありません。
 1分も経てば、再び触手は復活して探索者を襲い始めます。

・浅浮き彫りの触手のデータ
STR16 CON16 SIZ20
INT10 POW15 DEX6
移動 0 耐久力 18
ダメージボーナス:+1D6
武器:触手×3 60% ダメージ1D4+db
装甲:なし 呪文:なし
正気度喪失:浅浮き彫りの触手を見て失う正気度ポイントは0/1D4

 不幸にも全員が触手に捕らえられてしまったら、このシナリオはバッドエンドとなります。探索者たちは、大いなるクトゥルフの鎮座する忌まわしい海底都市で、 永遠の魂の奴隷となることになります。
 探索者が捕られられてしまった仲間を見捨てた場合も、捕らえられた探索者は同じ運命を辿ります。


17,闇の海

 時間が昼間であろうといつであろうと、触手に追われて探索者が屋敷の外に出ると、あたりは真っ暗です。
 雨は更に強さを増して、生暖かい雨粒が探索者の身体を強く打ちます。空は完全に暗雲に覆い尽くされ、昼までも太陽の姿はまったく見ません。
 そして、海の方角には二つの不吉な光が輝いています。目が慣れてくるに従い、何も見えない闇よりも、さらに濃い闇がずんぐりとした人影のように海原に浮かび 上がっているのが見えます。
 それは入道雲のように大きく、さきほどの不吉な光はちょうどその人影の双眸の位置に輝いています。この光景を見た探索者は、その影から感じられる霊的な圧力 に圧倒されてしまい、1/1D10正気度ポイントを失います。
 この人影が大いなるクトゥルフを崇拝するクトゥルフの落とし子であるか、海神ダゴンであるか、はたまた長い年を経ておぞましいまでに巨大に成長したディープ ワンであるか、それはわかりません。
 ただ、矮小な人間ごときが太刀打ちできる存在でないことだけは確かです。

 探索者が海の方角に気を取られていると、今度は屋敷の窓をメリメリと音を立てて破り、例の透明な触手が屋敷の外にも溢れ出します。
 そして、その触手にからめとられ、半ば一体化した、杉山奈緒美、金谷譲治、藤田綺羅子の三人の姿が見えます。三人の内、誰かがすでに死んでいたら、その死体 が触手にからめとられています。

 杉山奈緒美は海にみえる巨大な影を見ると、驚いた顔をして、
「も、もう少し猶予を……70年も待ってくださったのに……なぜ、あと少しの時間を……大いなるクトゥルフよ!」
 と叫びます。
 すると、海から巨大な壁がせり上がってくるのが見えます。
 それは信じがたい規模の大津波です。一見しただけで、この場にいれば確実に波に飲み込まれるだろうことはわかります。
 この津波から逃れる方法はただひとつ、地下室に避難することだけです(魔術を使えば別ですが)。
 時間的余裕はありませんが、キーパーは探索者に考える時間を与えてあげましょう。そして、もし探索者が地下室に隠れるよりも巧い方法を思いついたのならば、 それを採用してあげて構いません。
 もし、愚かにも適当な避難方法が思いつかなかった場合、探索者たちは100%の確率で津波に巻き込まれて溺死することになります。なにしろ、この津波は大い なるクトゥルフの力を借りた「悪意のある水」なのですから。

 急いで地下室へ向かえば、津波が到着するまでにギリギリで到着できます。
 探索者が地下室に逃げ込んだあと、津波が襲ってくるのが地鳴りによって感じ取れ、やがてドドドドッという轟音とともに、わずかに地上に出ている出入口部分を 津波が飲み込みます。
 中の探索者たちは、津波が地下室の扉を叩きつける衝撃に耐えねばなりません。扉は外側に開くようになっていますが、津波の力は蝶番を破壊してしまうほどの破 壊力を持っています。
 扉が完全で、さらに地下室のガラクタを使って扉を押さえつけようとするならば、《STR》11の抵抗ロール(探索者は2人まで協力できます)に成功すれば、 津波の衝撃に耐えられます。
 扉が完全で、単に探索者が身体だけで扉を押さえようとするならば、《STR》18の抵抗ロールに成功すれば、津波の衝撃に耐えられます。
 以前に、探索者が無理に扉を開けて、鍵などをダメにしてしまっている場合で、地下室のガラクタを使って扉を押さえつけようとするならば、《STR》16の抵 抗ロールに成功すれば、津波の衝撃に耐えられます。
 以前に、探索者が無理に扉を開けて、鍵などをダメにしてしまっている場合で、単に探索者が身体だけで扉を押さえようとするならば、《STR》24の抵抗ロー ルに成功すれば、津波の衝撃に耐えられます。
 抵抗ロールに成功すれば、水は扉の隙間からチョロチョロともれ出す程度で、探索者たちにはまったく被害はありません。
 しかし、もし抵抗ロールに失敗した場合、大水は扉を破って地下室に流れ込んできます。扉を押さえていた、もしくは近くにいた探索者は、大水に巻き込まれてし まい《水泳》に成功しなければ1D10のダメージを受けます。《水泳》に成功すれば、ダメージは受けずにすみます。
 地下室の奥などで大水に警戒して、重いものにしがみついていたりした探索者は《STR》14の抵抗ロールに成功すれば大水に巻き込まれること無くダメージを 受けません。しかし、失敗した場合は、同様に《水泳》に成功しなければ1D10のダメージを受けます。
 水は地下室内に一気に流れ込んだ後は、地下室に溜まって動きを止めるため外に流されるようなことはありません。また、天井には空気が溜まっているので溺死す る恐れもありません。

 津波は5分もすればひいていきます。
 地下室の壁を震わせていた轟音や、地響きは徐々に弱まっていき、変わってサラサラという水の流れる音へと変わっていき、やがて地下室内はまったく静かになり ます。
 扉の外には土砂が流され積もっており、扉が閉まっているならばを開けるには苦労することでしょう。
 外は、まだくるぶしぐらいまで水が残っていますが、人が流されてしまうほどのものではありません。
 空を覆い尽くしていた暗雲は嘘のように消え失せ、昼ならば青空、夜ならば星空が見えています。
 屋敷は津波に飲み込まれ、わずかに土台が残るのみで跡形もありません。幸い、このあたりの土地には屋敷以外にはススキの野原しかないので、他に被害は出てい ないようです。
 足元をさらさらと海のほうへ津波と大雨の名残である水が流れており、屋敷のものだったらしい残骸がプカプカと浮かんでいます。
 その中に紛れて、額縁がゆらゆらと浮かんで、探索者の足元に流れ付きます。
 それは古い白黒写真の納められた額縁です。写真には5人(手紙をもらった探索者が2人だったら6人)の若い男女が写っています。額縁の裏側には、昭和初期の 年号と、「杉山邸にて」と書かれてあります。《知識》に成功すれば、服装等からここに写っている人々が昭和初期の頃の人物であることがわかります。また、写真 の背景は、これまで探索者たちのいた屋敷の居間です。
 写真に写っている二人の女性には、探索者は見覚えがあります。服装は古い時代のものですが、杉山奈緒美と藤田綺羅子に間違いありません。他の二人について は、《アイデア》に成功すれば、金谷譲治と佐藤政雄の若い頃は、こんな感じだっただろうと推測できます。
 そして、残りの一人は、なんとなく手紙を貰った探索者自身に面影が似ています。彼は探索者の祖父なのです。
 写真の若者たちは仲良さそうに肩を組んだりして、カメラに向かって笑っています。
 それは、この事件を企んだ狂人とは思えない、屈託の無い若者の笑顔です……


18,大団円

 誰も浅浮き彫りに取り込まれること無く、大いなるクトゥルフの大津波からも生還した探索者は1D10の正気度ポイントを獲得します。
 もし、ひとりでも探索者が浅浮き彫りに取り込まれていた場合、残された探索者は海に流された浅浮き彫りの中で犠牲になった探索者が彫り物の一部となり悲鳴を 上げているという悪夢にうなされることになり、残念ながら正気度ポイントを獲得することはできません。


19,探索者の例

 このシナリオは事件へ巻き込むための導入が難しいため、以下にこのシナリオに参加させやすい探索者の例を用意しました。
 事件に巻き込むためのマスタリングが面倒な方や、プレイ時間に余裕のない場合などに利用してみてください。

武田 良治(24歳・男)

 良家の生まれで、祖父(武田晋太郎)の代には大変な資産家でした。
 戦後、財産の大部分は失いましたが、それでも家には古くから伝わる年代物の骨董品が残されました。
 良治の両親は真面目だけがとりえの普通の会社員と専業主婦で、家の骨董品を大事に守ってきましたが、19歳の時、交通事故で二親とも失ってしま います。
 その後、良治は一流国立大学を一年留年して卒業しましたが、職に就くことも無く、だらだらと祖父の代からの古い屋敷で暮らしてきました。道楽に 耽るということもなく、日々の食費とちょっとした小遣いさえあれば満足という男だったので、家の骨董品を売りさばけば十分に生活できたのです。
 そんな彼だったので、今回の遺品の話には、金銭的に興味深い話でした。
 そして、なによりも暇をもてあましていたので、良い暇潰しになるだろうと考え、招待に応じようと思っています。
 性格はのんびり屋ですが、怠惰というほどではありません。
 自分の家柄を鼻にかけるようなことも無く、若いうちにすでに枯れてしまったような人当たりの良い男です。

STR9 CON11 SIZ15 DEX8 APP12 INT16 POW11 EDU18
隠れる70% 忍び歩き80% 乗馬35% 信用75% 追跡70% 英語読み書き80% +趣味の技能を160%振り分け

台詞「なんか面倒だけど、やってみるか」
武田 良治
水嶋 久美(22歳・女)

 大昔から武田の家に出入りしていた古物商の娘です。
 明治から続く由緒ある古物商で、武田の家が昔の栄華を失ってからも、その付き合いは続いてきました。
 そんな関係で、幼い頃から久美は武田の家に出入りしており、良治とも幼馴染です。
 良治が生活費に困って持ってくる骨董品を買い取っているのも、久美の家の古物商です。
 幼馴染の親しさから、良治のだらしない生活にずけずけと文句の言える数少ない人物でもあります。よって、良治は家の骨董品を持っていくたびに、 彼女の説教を受けています。
 家を継ぐため、大学と店とで骨董品の勉強もしており、時には店番を任されるほどの鑑定眼の持ち主です。良治の持ってくる品を鑑定するのは、彼女 の仕事です。
 今回の遺品の話を聞くと、良治が騙されたりしないよう、自分の目で遺品の正当な価値を見極めてやろうと思い、同行することにします。
 性格は明るく活動的で、空手を習っているなど男勝りなところがあります。藤田綺羅子と性格の面で気が合うことでしょう。
 小さな頃から良治にほのかな恋心を抱いていますが、20年経ってもそれを告白することはできませんでした。彼がまともな職に就いたら告白しよう かとも思っていますが、それはまだまだ先の話になりそうでイライラは募るばかりです。

STR14 CON10 SIZ11 DEX17 APP16 INT13 POW13 EDU16
芸術40% 考古学80% 値切り45% 法律25% 目星65% 英語読み書き20% 歴史60% +趣味の技能を130%振り分け

台詞「私の目は騙せないわよ」
水嶋 久美
石橋 孝二郎(42歳・男)

 武田家とは親戚で、祖父の代から代々、武田の家の顧問弁護士をしてきた一族です。
 もちろん、石橋孝二郎も優秀な弁護士であり、武田家の顧問弁護士を務めています。
 両親を亡くした良治の保護者的存在ですが、石橋のほうは久美と違って良治に仕事に就くように急っついたりはしません。
 良治が頭の悪い男でないことはわかっているので、今の生活に飽きたら勝手に自立するだろうと考えているからです。そして、その時にはいくらでも 力を貸してやるつもりでいます。
 弁護士としての腕は一流で、武田家の遺産の相続問題など難問をひとりで片付け、彼がいなければ良治が今のような悠々自適の生活をすることはでき なかったでしょう。
 弁護士などというお堅い職業に就いていますが、良治や久美の前では気のいい親戚のおじさんといった感じの男です。のんびり屋の良治と活発な久美 のちょうど中間に位置して、うまく二人のバランスを取っています。
 彼のいまのところの夢は、良治と久美の仲人をすることですが、いつもこの事を不用意に口にして、照れた久美に怒られています。
 このメンバーで、自家用車を持っているのは彼だけです。

STR12 CON16 SIZ14 DEX11 APP13 INT15 POW14 EDU22
言いくるめ85% 信用85% 心理学85% 図書館85% 値切り15% 法律85% +趣味の技能を150%振り分け

台詞「久美ちゃん、良治のことをよろしく」
石橋 孝二郎
柳沢 宏明(24歳・男)

 武田の高校時代の友人で、今は医学生の男です。
 良治とは対照的に真面目な男で、努力一筋で医者を目指しています。
 ただし、うぶでほれっぽいところが玉に傷で、意外に愛敬があったりします。妖艶な杉山奈緒美や、ナイススタイルの藤田綺羅子に一目惚れしてしま うという状況も考えられるでしょう。
 サイクリング旅行の最中、チェーンが切れて立ち往生していたところ、偶然、屋敷へ向かう良治たちと出会い、合流することになります。

STR17 CON15 SIZ16 DEX13 APP15 INT14 POW12 EDU20
医学85% 応急手当80% 信用45% 心理学35% 精神分析60% 生物学40% 薬学80% ラテン語読み書き10% +趣味の技能を 140%振り分け

台詞「いったいどうなっているんだ?」
柳沢 宏明


プレイヤー資料集
キーパーはあらかじめ印刷をしておいて、プレイヤーに渡して下さい


★杉山奈緒美からの手紙

「拝啓
 突然のお手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。
 私は、貴方様の祖父君と交友のございました、杉山早苗の孫で杉山奈緒美と申します。
 この度、お手紙を差し上げましたのは、祖母の残した書類を整理しておりましたところ、祖父君のご遺品を当家にてお預りしていることが判明しました。素人目な がらもとても価値のあるものに見受けられましたので、私の判断だけではどうすることもできず、こうして筆をとった次第です。
 このご遺品は、当時の貴方様の祖父君、私の祖母である杉山早苗、そして他のご友人の方々と共同所有をしていたもののようで、一時的に当家で保管をさせていた だいていたようなのです。
 ご遺品は、とても古い時代の木製のレリーフで、素朴ながらも、時代を経てきた味わいのあるものです。日本のものではなく、どこか外国のもののようなのです が、知人の話では、おそらくは数百年は経っているということでした。保存状態は大変良く、当時の製作者の息吹が感じられるようです。
 このようなせっかくの品ですので、このまま時に埋もらせるのはもったいなく思い、70年近く経ったいまですが、再びこの件にて所縁の方にお集まりいただき、 みなさまとご相談をさせていただきたいのですが、いかがなものでしょうか?
 ご多忙のところお手をわずらわせて誠に恐縮ですが、ご連絡をお待ちしております。

かしこ   
  
杉山奈緒美」

★三人の自己紹介

・金谷譲治の自己紹介
「はじめまして、金谷譲治といいます。杉山早苗さんには、私の父がお世話になったそうで……このたびは奈緒美さんから手紙を頂き、参上した次第です。
 以前は大学で教鞭を取っておりましたが、いまは職無しの身で、気が向いた時に論文なんぞを書いています。専門は民俗学でしたが……今回の遺品は、とても興味 深いもののようですよ」

・藤田綺羅子の自己紹介
「こんにちは、藤田綺羅子です。私のお婆さんの遺品があると手紙をもらって……なんだか昔の話で実感はわかないんですが、杉山さんが困っているみたいだったの でお邪魔しました」

・佐藤政雄の自己紹介
「佐藤政雄です。杉山早苗さんとは昔、友人でしたが、彼女が行方不明になってからは杉山さんの家ともまったく付き合いが無く……この屋敷にくるのは50年…… いや70年ぶりぐらいでしょうか……
 それにしても、この屋敷は昔と変わっていない……物忘れのひどくなった老いぼれの頭にも、この屋敷のことはしっかりと残っている……ほんとうに、ここは何も 変わっていない……」


★ポナペ教典の一節

 ポナペ島沖の深淵には、忌まわしき海底都市ルルイエが在る。
 ルルイエには「大いなるクトゥルフ」が眠りにつきながらも常に生け贄を求め、世界の闇の海に潜む信者たちは、様々な手段で犠牲者を深き海底へと引き込もうと している。


★浅浮彫りの外見

 サイズは、縦50×横120センチぐらい。
 横長の木製の浅浮き彫りです。
 色は黒檀のように真っ黒で、木目は細かく渦を巻いています。
 表面に彫られた細工は絶妙で、水中にある巨石建造物から八腕目の未知の生物が現れるさまが彫られています。
 また、その底部には未知の言語でなにやら言葉らしきものが彫られています。


★未知の言語

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん(日本語訳:ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり)」


★佐藤政雄の昔語り

「私たちが、この屋敷に集まって交友を深めたのは、もう70年ぐらい前、昭和の初め頃です。
 あの頃、私たちは親の金やコネを利用して、いろいろと世界中の物珍しいものを集めたり、新しい芸術や文学を楽しむなどして、先駆的文化人なんてものを気取っ ていました。
 メンバーは杉山早苗さん、金谷幸治さん、藤田佐和子さん、そして(探索者の祖父)さんに、私です。
 そのころは、まだ私の家も相当な資産を持っていて、杉山さんのような名家ともお付き合いがあったんですよ。

 思えば、私の人生の中で、あの頃が一番楽しいものだった……
けれど、それも早苗さんが行方不明となり、数年後、後を追うように佐和子さんが姿を消してしまうと……自然と付き合いも少なくなってしまいました。あの戦争が 始まって、私の家もそれどころではなくなってしまったのです。
 仕事の都合で住所が定まらない時期もありまして、それからは幸治さんとも連絡が取れなくなりました。
 数十年も経ってから、彼らの身内のかたにこうして会えるだなんて、なんとも不思議な縁ですね」


★佐藤政雄のいまわの際の台詞

「帰れるのか……あの日に……輝いていた日に……
 いや、嘘だ!
 みんな行ってしまったんだ……私を置いて!
 なんで、きみはそんなにも美しいんだ?
 私はこんなにも醜く老いさらばえたというのに!
 嘘だ……嘘だ……もう、帰れない……帰りたい……

 ………………なんだ、アレは!!!」


★探索者の紹介

・武田 良治(24歳・男)
 良家の生まれで、祖父(武田晋太郎)の代には大変な資産家でした。
 戦後、財産の大部分は失いましたが、それでも家には古くから伝わる年代物の骨董品が残されました。
 良治の両親は真面目だけがとりえの普通の会社員と専業主婦で、家の骨董品を大事に守ってきましたが、19歳の時、交通事故で二親とも失ってしまいます。
 その後、良治は一流国立大学を一年留年して卒業しましたが、職に就くことも無く、だらだらと祖父の代からの古い屋敷で暮らしてきました。道楽に耽るというこ ともなく、日々の食費とちょっとした小遣いさえあれば満足という男だったので、家の骨董品を売りさばけば十分に生活できたのです。
 そんな彼だったので、今回の遺品の話には、金銭的に興味深い話でした。
 そして、なによりも暇をもてあましていたので、良い暇潰しになるだろうと考え、招待に応じようと思っています。
 性格はのんびり屋ですが、怠惰というほどではありません。
 自分の家柄を鼻にかけるようなことも無く、若いうちにすでに枯れてしまったような人当たりの良い男です。
STR9 CON11 SIZ15 DEX8 APP12 INT16 POW11 EDU18
隠れる70% 忍び歩き80% 乗馬35% 信用75% 追跡70% 英語読み書き80% +趣味の技能を160%振り分け
台詞「なんか面倒だけど、やってみるか」

・水嶋 久美(22歳・女)
 大昔から武田の家に出入りしていた古物商の娘です。
 明治から続く由緒ある古物商で、武田の家が昔の栄華を失ってからも、その付き合いは続いてきました。
 そんな関係で、幼い頃から久美は武田の家に出入りしており、良治とも幼馴染です。
 良治が生活費に困って持ってくる骨董品を買い取っているのも、久美の家の古物商です。
 幼馴染の親しさから、良治のだらしない生活にずけずけと文句の言える数少ない人物でもあります。よって、良治は家の骨董品を持っていくたびに、彼女の説教を 受けています。
 家を継ぐため、大学と店とで骨董品の勉強もしており、時には店番を任されるほどの鑑定眼の持ち主です。良治の持ってくる品を鑑定するのは、彼女の仕事です。
 今回の遺品の話を聞くと、良治が騙されたりしないよう、自分の目で遺品の正当な価値を見極めてやろうと思い、同行することにします。
 性格は明るく活動的で、空手を習っているなど男勝りなところがあります。藤田綺羅子と性格の面で気が合うことでしょう。
 小さな頃から良治にほのかな恋心を抱いていますが、20年経ってもそれを告白することはできませんでした。彼がまともな職に就いたら告白しようかとも思って いますが、それはまだまだ先の話になりそうでイライラは募るばかりです。
STR14 CON10 SIZ11 DEX17 APP16 INT13 POW13 EDU16
芸術40% 考古学80% 値切り45% 法律25% 目星65% 英語読み書き20% 歴史60% +趣味の技能を130%振り分け
台詞「私の目は騙せないわよ」

・石橋 孝二郎(42歳・男)
 武田家とは親戚で、祖父の代から代々、武田の家の顧問弁護士をしてきた一族です。
 もちろん、石橋孝二郎も優秀な弁護士であり、武田家の顧問弁護士を務めています。
 両親を亡くした良治の保護者的存在ですが、石橋のほうは久美と違って良治に仕事に就くように急っついたりはしません。
 良治が頭の悪い男でないことはわかっているので、今の生活に飽きたら勝手に自立するだろうと考えているからです。そして、その時にはいくらでも力を貸してや るつもりでいます。
 弁護士としての腕は一流で、武田家の遺産の相続問題など難問をひとりで片付け、彼がいなければ良治が今のような悠々自適の生活をすることはできなかったで しょう。
 弁護士などというお堅い職業に就いていますが、良治や久美の前では気のいい親戚のおじさんといった感じの男です。のんびり屋の良治と活発な久美のちょうど中 間に位置して、うまく二人のバランスを取っています。
 彼のいまのところの夢は、良治と久美の仲人をすることですが、いつもこの事を不用意に口にして、照れた久美に怒られています。
 このメンバーで、自家用車を持っているのは彼だけです。
STR12 CON16 SIZ14 DEX11 APP13 INT15 POW14 EDU22
言いくるめ85% 信用85% 心理学85% 図書館85% 値切り15% 法律85% +趣味の技能を150%振り分け
台詞「久美ちゃん、良治のことをよろしく」

・柳沢 宏明(24歳・男)
 武田の高校時代の友人で、今は医学生の男です。
 良治とは対照的に真面目な男で、努力一筋で医者を目指しています。
 ただし、うぶでほれっぽいところが玉に傷で、意外に愛敬があったりします。
 趣味はサイクリングで、シナリオ開始時も、サイクリング旅行の最中です。
STR17 CON15 SIZ16 DEX13 APP15 INT14 POW12 EDU20
医学85% 応急手当80% 信用45% 心理学35% 精神分析60% 生物学40% 薬学80% ラテン語読み書き10% +趣味の技能を140%振り分 け
台詞「いったいどうなっているんだ?」



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