補 講

「今回も、楽しいゲームでしたぁ。
 みんなも、自分のキャラクターに愛着がでてきたようですし、私も、あのメンバーに慣れてきたみたいで、プレイヤーの皆さんがどんなゲームがしたいのかもつか めてきた気がします」
「そりゃあ、よかった」
「ところで、もう先輩にもらったシナリオがないんですが……新しいシナリオをください」
「ん、もうないぞ」
「へっ?」
「もう、俺の書いたシナリオはないと言ったんだ」
「そんなぁ〜」

「と言ったわけで、サダトア村のキャンペーンもめでたく終了というわけだな。
 ところで、あのシナリオは、第一話が春から始まって、それから一年を通したキャンペーンだって気づいてた?
 時々、導入部分とかで季節の描写なんかがあったろ?」
「そんなことより、このキャンペーンをもっと続けたいですぅ〜」
「そっ、そんな顔で見つめなくても。
 ちゃんと、さゆりちゃんのためにおもしろいプレゼントを持ってきてあるよ」
「わ〜い、新しいシナリオですねぇ」
「いや、もっとおもしろいものだよ。ほら」
「なんですか、この本……『ソードワールドRPGガイド』?」

「これは、ソードワールドの舞台であるアレクラスト大陸に関する資料だよ」
「へ〜〜、こんな本が出ているんですか?」
「ルールブックにも小さな地図が載っていただろう?」
「ええ、でも、あの地図じゃあなにもわかりませんよ。先輩のシナリオの舞台のアノス王国だった載ってないじゃないですか」
「まあ、そうだな。ソードワールドは世界観の補足を小説やリプレイとか、ルールとは別の部分でフォローしていたからね」
「いろいろと文庫がでていますよね。あまり読んだことないですが」
「まあ、自分の世界を勝手に創造するぶんには、あれらの資料は必要ないからな。けど、デザイナーの作った世界を利用して遊ぶというのも、なかなかおもしろいも のだよ」
「そうですか? なんか、面倒な気もしますけど」
「面倒と言えば、そうだけど……せっかく、プロが提供してくれる魅力ある世界を利用しないという手もないと思うけどね。ルーンクエストやトーグの世界なんかは 特に魅力的で、その世界でプレイしなければ、そのゲームをプレイする意味もなくなってしまうぐらいだ」
「でも、いまはソードワールドの話ですよ」
「おっと、話がそれたか。まあ、他にもデザイナーの提供してくれる共通の世界を使用することによって、他のマスターやプレイヤーとの共通の話題が出来るという のもあるよ。どこどこの王国で冒険者をしているんだとか、どこどこの遺跡でこんな発見をしたんだとか……自分の知らないところで、他のキャラクターたちも活躍 しているって思うと、ちょっと楽しくはないかい?」
「ふーん、そんなものですか?」
「そんなものさ」

「それで、この本にサダトア村のことが載っているんですか?」
「載ってるわけないだろ。あそこは俺のオリジナルの村なんだから」
「なんだ、そうなんですか?」
「まあ、この本で探すと……ほら、ここにソーミーって載っているだろ?」
「どこですか……あ、あった。こんなに小さく……」
「他にも、色々と地名がるだろう?」
「こうやってみると、アレクラスト大陸って大きいですよね。サダトア村だけでもキャンペーンが出来るのに、こんなに広い大陸を動き回るとしたら……どれだけシ ナリオを続ければいいのやら」
「地図と地名を見ているだけでも、いろいろとイメージが湧いてこないかい」
「そうですね、堕ちた都市とかユニコーンの森とか……シナリオのアイデアになりそうな場所がたくさんありますね」
「じゃあ、この本はさゆりちゃんにプレゼントしよう」
「ええっ?」

「これからも、このキャンペーンを続けるなら、やがては必ずサダトア村だけでは狭く感じるときが来る。その時は、この本を参考にするといいだろう。
 もちろん、さゆりちゃん自身が想像した世界を一から造り出すのもいいだろう。けれど、その時にも、この資料はさゆりちゃんの想像力をかきたてるための材料と して役立つと思う。ただ、注意して欲しいのは、書かれてある設定に縛り付けられるのではなく、利用してもらいたいということだ。
 不思議な名前の森や、見たこともない種族が住む洞窟。それらに命を吹き込むのは、マスターとプレイヤーたちの共同作業だ。
 村の領主は、どんな国に仕えているのだろう?
 山脈を越えたら、どんな世界がひろがってるのだろう?
 南への街道はどこまで続いているのだろう?
 東に流れる川は、どこに流れつくのだろう。
 このキャンペーンをやってきて、こんな疑問や興味の沸いたことがあるはずだ。
 そんな疑問や好奇心から、世界は生み出されていく。
 もし、プレイヤー達がこの世界が気に入って、この世界の住人たちが気に入ったのなら、この世界を広げるキャンペーンに出かけるときが来たんだ。
 無限の広さを持つ、この世界へね」
「じゃあ、まだまだ、このキャンペーンを続けることができるんですね」
「もちろん。ただし、今度は自分でシナリオを作るんだ。何本ものシナリオで構成される、ひとつの壮大な物語だって作れるだろう。
 それに、今回のキャラクターたちの物語が終わったとしても、また同じ世界で、別のキャラクターによるキャンペーンだって始めることができる。
 前回のキャンペーンでプレイした、自分のキャラクターや、名物NPCなどに出会うのは、プレイヤーにとっては実に楽しいものだ。
 同じ世界での、キャラクターを変えた別々のキャンペーン。これは、非常に面白いものだから、ぜひ一度は体験してほしいものだね」
「まだまだ、私の知らないRPGの世界があるんですねぇ。
 私も、がんばらなくちゃ」
「そうそう、今度キャンペーンを始めるときは、俺も仲間に入れてくれよ」
「はい、よろこんで。
 なんだか、一ヶ月前とは、RPGの考え方がまったく変わっちゃいましたぁ。これも、先輩のおかげですぅ」
「なんの、なんの。
 さゆりちゃんには、最初からマスターの素質があったからね」
「え〜、そんなの、うそですぅ。
 先輩だって、最初の頃は、ずいぶんとひどいこと言ってたじゃないですかぁ」
「いや、あれは厳しく教えたほうが身に入ると思ってね。それと、素質があったと言うのは嘘じゃないよ。
 だって、さゆりちゃんはみんなに楽しんでもらいたいから、キャンペーンがやりたいって言ったろう。
 もっとみんなに楽しんでもらいたいために何かに挑戦する。それこそが、何よりもマスターには大切なことなんだ。
 どうだい、さゆりちゃんがマスターの素質があるというのは、嘘じゃないだろ?」
「えっとぉ〜……はい、そうですぅ!」
「よろしい、合格だ!
 これからも、みんなが楽しんでくれるようなゲームを造るようがんばってくれ。そして、自分が楽しむことも忘れずにな」
「はい!」

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