休み時間「みんなの座談会」



 さゆりちゃんのゲームが終了したあと、いつもの喫茶店。
 だが、今回は、その喫茶店の個室を借りてさゆりちゃんのキャンペーンメンバーを集めて座談会を開くことになった。
 主催したのは、もちろんこの人。
 Y先輩である。

先輩「やあやあ、どうも、どうも。わざわざ集まってくれてありがとう」
聖堂戦士のプレイヤー(以下、聖堂)「別にゲームが終わった後、そのまま集まったんだからかまわんけどな」
騎士のプレイヤー(以下、騎士)「さゆりちゃんが、まだ来てませんね。どうしたのかな」
先輩「さゆりちゃんは用事があるから、少し遅れてくるそうだ。そこで、この時間を利用して……」
聖堂「『超人ロック』をやるんだな」
魔法使いのプレイヤー(以下、魔法)「どうせなら、『アクワイアー』がいい なぁ」
騎士「『クーハンデル』をやりましょう」
グラスランナーのプレイヤー(以下、グラ)「『フンタ』をやりません?」
先輩「こらー!ゲームを広げるなっ。
 今日は、そういう集まりではなーい……って……あれ、なんと『キングスコート』が あるじゃないか。いいなあ……ほしいなぁ」
魔法「じゃあ、久しぶりに『キングスコート』をやるかあ」
グラ「せっかく『フンタ』の大きい箱を持ってきたのに……まあ、いいや」
先輩「だからぁ、そうじゃなくてぇ……ああ、もうすでに、カードを配っているしぃ。いつのまにか、自分の手にカードが握られているしぃぃぃ」

 しばらく、空白の時間

先輩「メイデンがドラゴンを連れて……はっ、いかーん! こんなことをしている場合ではなーい!」
騎士「そうですよ。早く『タリスマン』を始めなくては、時間が……」
先輩「そうじゃなーい!」
魔法「なにを、そんなに興奮してるんだ?」

先輩「今日の集まりの趣旨は、いつものゲーム大会ではなく、さゆりちゃんのゲームについての座談会なのだ」
騎士「でも、主役のさゆりちゃんは、まだ来てませんが」
先輩「だから、この時間を利用して、マスター本人がいる前では話せないような、ゲームについての率直な意見を話し合おうじゃないかと、秘かに考えていたのだ」
聖堂「しかし、マスター本人がいないところで、そのゲームの感想を話し合うってのは、なんだか影口を言ってるみたいでいやだな。第一、意味がないじゃないか」
先輩「いやいや、別にマスターに聞かれてはならないような悪口を言い合おうというわけじゃない。
 俺が言いたいのは、マスターとプレイヤーの関係も大切だが、プレイヤーとプレイヤーの関係も大切にしてほしいということなんだ。たまには、こうやってプレイ ヤーだけが集まって、一緒にやっているゲームについて語りあうこともいいもんだよ」
騎士「確かにマスターがいると、そのマスターの手前、口が重くなるのは確かですねえ。なんでなんでしょう?」
聖堂「普通にゲームの話をしているつもりでも、マスター個人の批評をしているよう聞こえるんじゃないかって、気にするからじゃないのか」
先輩「たいていの人は本人を目の前にして、その人を批評したりするのは苦手だからな」
魔法「そうかなぁ、俺は平気だけど」
聖堂「おまえは、特別なんだよ」
先輩「まあ、といったわけで、さゆりちゃんのゲームについて、みんなの意見を聞きたいと思ったわけだ。さゆりちゃんのアドバイス係としてもね」
騎士「結局は、そういうことですかい」
先輩「そういうことなのだ。
 では、まず最初は、今日のゲームについての感想。ちなみに、あれはさゆりちゃんが俺のシナリオを改造して作った、半分オリジナルだからな」

騎士「う〜ん。全体的にファンタジーしてましたよね。ストーリーもそれなりだったじゃないですかね」
聖堂「戦闘が全然なかったから不満だ。まあ、ああいうシナリオなんだから戦闘がないのは仕方がないんだが、それでもどうもな……ファイターの立場というもの が……
 それと、ああいうのは、なんだかプレイヤーが悪役にしたてられたみたいで好かんなぁ。キャラクターとして努力のしがいがないというのか、NPC中心というの か」
魔法「ほんわかした雰囲気だったな。日本の昔話みたいな」
グラ「良くあるパターンの話だよね。アニメみたい」
先輩「なんか、いまいち評判が良くないな〜」
騎士「そうかなあ? 僕はおもしろいと思ったけど。最後で、村人たちが松明を持ってスキュラの沼に押し寄せたシーンなんて、群集の狂気って雰囲気が良く出てた と思うけど。
 はたしてロイドが狂人なのか、それとも村人たちが本当の狂人なのか。そして、僕らは本当に正気なのか。そんな心理ドラマを感じてしまいました。
 あそこで、僕のキャラクターがスキュラの真意に気づいて、かっこよく村人を説得するため熱弁をふるう。
 う〜ん、思い出しても、あのシーンはかっこよかったなー」
神官「おまえがかっこよかったかどうかは知らんが、たしかに雰囲気はあったな。
 だが、それをプレイヤーが望んでいるかってのかが問題だな。
 ストーリーとしてはおもしろくても、実際にゲームするプレイヤーにとってはおもしろいか。言い換えれば、優れた小説が、優れたゲームのシナリオになるかとい うというと、プレイヤーの行動と偶発性によるゲームという部分のバランスが……」

グラ「わかりやすくて、おもしろかったけどなあ。どっちが悪役なのかなって。でも、最後はなんで怪物はきこりのことを襲ったんだろう??」
魔法「って、ぜんぜんわかってないじゃないか」
グラ「ええ〜、なにが〜?」
神官「まだ、オレの話が途中なんだが」
魔法「いやいや、おまえの言いたいこともわかるんだがね。
 俺としては、さゆりちゃんらしいゲーム。さっきの言葉で言うと、ファンタジーしているゲームで良かったと思うよ」

騎士「あなたがいうと、何か、僕の思惑と違う気がするから言いますけど。
 僕が言いたいのは、確かにさゆりちゃんらしいゲームであったけど、それ以上に、さゆりちゃんは上手くゲームマスターをやっていたということなんですよ。
 あなたの言い方だと、さゆりちゃんらしいから少々の失敗は許してやろうといってるように聞こえるんですけど」
魔法「誤解だな〜
 そんなことは、言ってるつもりじゃあないんだが。しかし、今日のゲームだって完璧とは言い難いゲームだったろう。現に、神官戦士様は不満だといっている」
神官「俺は、完璧を求めているわけじゃない。ただ、マスターの趣味を押しつけるようなのは どうかと言っているんだ」
騎士「でも、マスターは自分がやりたいことをやるものですよ。やりたくもないストーリーのシナリオなんて、マスターをする気になるはずがない」
神官「しかし、マスターはプレイヤーを楽しませなくちゃあいけないはずだろ」
騎士「マスターの与えてくれた世界で、いかに楽しく遊ばしてもらうかを模索していくのが、 プレイヤーの礼儀だと思うんですけど」
神官「でも、どうしても楽しめない世界ってこともあるはずだろう……って、さゆりちゃんのゲームのことを言ってるわけじゃないぞ」

魔法「おまえは、戦闘があればいいんだろ?」
神官「人を殺人鬼みたいに言うな! 確かに戦闘は好きだが、敵がどんなものであろうと倒す理由がなくてはやる気がしない。
 その理由を作って、プレイヤーにやる気をださせるのがマスターの仕事だろう。これは、戦闘に限ったことじゃないぞ。いかにプレイヤーにシナリオをクリアーし てやろう、という気持ちにさせるか、それはマスターの重要な仕事のはずだ」
先輩「いいこというね〜」
神官「よって、プレイヤーから主導権を奪い、マスターのひとりよがりなストーリーを押しつけ、決定したエンディングまでプレイヤーを連れまわしているような ゲームじゃあ、おもしろいはずがないというわけだ」
先輩「ごほんごほん、まったくだね。以後、気をつけるよ……」

騎士「でも、それは求めすぎじゃないんですかね。みんながみんな、いきなり上手いマスターってわけじゃないんだから」
神官「おまえこそ、さゆりちゃんだから許そうって考えが見え見えじゃないか?」
騎士「いまの意見は、さゆりちゃんのことじゃないですよ。さっきから、僕は、さゆりちゃんは上手いマスターだといってるじゃないですか」
神官「自分のプレイスタイルにあってるからな」
騎士「自分にあったスタイルのマスターが好きなのは、当然でしょ」
神官「しかし、プレイヤーは複数なのだ。どんなプレイヤーでも、みんなが満足できるようなゲームが、本当に良いゲームだと思うが」
騎士「そりゃあ、遠い理想ですよ」
神官「しかし、目指すべき目標だと思うな。
 せめてマスターならば、そうなるように努力すべきだ。自分はこういうゲームが好きだから、こういうゲームしかやらない。こういうゲームが嫌いな人は、やらな いでも結構。こういう姿勢のマスターを良く見かけるが感心しないな」
騎士「程度の差ですよ。そんなマスターだって、自分のゲームに入ってきたプレイヤーには、みんな楽しんでもらいたいと思っているはずです。
 それがいやなら、前もって、自分はこういうゲームをするから、こういうプレイヤーは来てくださいと言っておけばいいんだ」
神官「プレイヤーを選べるコンベンションや、大きなサークルならいいが、ずっと同じ友達同士で、自宅でプレイしているような人だっているんだぞ」
騎士「いまは、僕らの話をしてるんでしょ?」
神官「俺は、RPG全般について話してるつもりだったが。まあ、どっちでもいい。とにかく、プレイヤーを楽しませる努力を放棄して、自分の殻に入ったマスター は失格だということに変わりはない。そんなマスターでは、プレイヤーが楽しもうと思っても楽しめない」
騎士「そりゃあそうですけど」

神官「ついでに言わしてもらうと、その殻を、自分のプレイスタイルだからという逃げ文句で 飾り立てる人間が多い気がする。プレイヤーを含めてな」
騎士「むう、僕のことを言ってるんですか」
神官「いいや、さいわいこの中には、そういうような奴はいないと思うが。もちろん、さゆりちゃんだって違う」
魔法「要は、協調性がないんだよな」
神官「おまえが言うなよな」
魔法「きついことを言うねぇ」
神官「真実を言ったまでだ」

先輩「ちょっと、話がずれてきたな。RPG全般の論議も聞いてて楽しいんだが、今回はさゆりちゃんのゲームに的を絞ってくれ。でないと、きりがない」
騎士「はい、わっかりましたぁ。
 では、もう一度意見を聞きま〜す。
 今日のさゆりちゃんのゲームは、裏表なしに率直におもしろいと思った人」
先輩「俺は、ちょっとパスするよ。自分のシナリオだったし」
騎士「いいでしょう。他の人は?」
神官「ゲームがおもしろかったかを『イエス』『ノー』で判断することには疑問があるが……まあ、あえていうなら、俺はあまりおもしろくなかったな」
魔法「俺は、満点ではないにしろ。おもしろかったと断言できるな」
グラ「おもしろかったよ〜」
騎士「最後に僕だけど、もちろん、おもしろかったと言いましょう」
魔法「三対一か。まあまあの結果かな」
神官「ゲームにおいて、多数決をして評価するなんてことに何の意味があるんだ?」 
魔法「目安にはなるさ」
神官「判断を狂わす目安にな」
騎士「まあまあ、ただ意見を再確認しただけですよ。では、具体的に、どのような部分がおもしろかったかを……」
グラ「森の中で、いろいろできたことぉ〜」
魔法「相変わらずの意見だが、つまり自由度の高いスタイルだったと言うことだな。
 たしかに、それは今回のシナリオがおもしろかった理由のひとつだな。あれぐらいの自由度がなくては、今回のシナリオはただストーリーのなぞるだけの退屈な ゲームになってしまうだろうからな」
グラ「だから〜、いろいろできたことだって言ってるのに〜」

騎士「たしかに、今までになく自由度は高かったですね。おかげで、最後は僕がかっこよく決めることができた。
 今まではシナリオを読んで、考えながらやるって感じだったのに、今回はスムーズにいったしね。こっちが何かを聞いても、すぐに答えが返ってくるし」
神官「つまり、アドリブが上手くなったというわけか。
 昔やったときの、さゆりちゃんのマスターはアドリブのときはしどろもどろになるから、すぐにわかったもんだがな。
 そんなときには、こっちでも、なるべくシナリオの本筋に戻るよう気をつかったりしてな」
魔法「おまえ、そんなこと気にしてたのか。プレイヤーが無理にシナリオをなぞることもなかろう」
神官「慣れていないマスターにとっては、アドリブで話を進めるのは悪夢に近いんだぞ。それなら、プレイヤーサイドで気をつかってもいいんじゃないのか」
魔法「それは、どの程度までをマスターにとって苦痛なアドリブと言うのかだな。まさか、シナリオ設定にないから、村人Aの台詞を考えることも苦痛だなんていう んじゃないだろうな」
神官「それならプレイヤーにとって、どの程度の行動が自由であり、身勝手な行動ではないのか、おまえが知っているとは思えないが」
騎士「魔法使いさんは、かなり無茶しますからねえ」
先輩「まあまあ、個人攻撃は止めて。話を戻そう」
騎士「おっと、そうでした。
 では、今回は自由度が高かった。裏返せばさゆりちゃんのアドリブが冴えていた。このことに反対の人はいますか?」

魔法「アドリブが冴えていたというよりも、マスターに慣れてきたというほうが正しいんじゃないのか」
神官「そうそう、大胆なアドリブが多くなったな。度胸がついてきたと言うのかな」
騎士「でも、アドリブにしては、話がきちんとまとまってましたよね」
先輩「さゆりちゃんが、マスターとしての度胸がついてきたのもそうだが、今回は、上手くシナリオを消化していたという感じだったな。
 自分にあうように改造したおかげで、すんなりとシナリオの道筋を把握できたんだろう。NPCがどのような考えで行動しているのかさえわかっていれば、自然に アドリブの利いた台詞は出てくるものだ」
魔法「人が書いたシナリオというやつは、NPCが何を思ってこんな行動をしているのかがわからないときがあるからな。探せばどこかに書いてあるのかも知れない が、ゲーム中に探すなんて事はできないし」
騎士「結論としては、自分にあったシナリオに改造したおかげで、そのシナリオの登場人物の 気持ちを理解することができたのが、冴えたアドリブの原因となった……って、ところですかね」
先輩「やはり、人のシナリオを使うなら、じっくり読み込むか、自分なりに改造するかして、そのストーリーを熟知しておかないとろくなことがないね」
騎士「そうですね、ゲーム前の準備を整えることは、本番のゲームをする際の自信にも繋がりますから」
先輩「昔、一度も読んだ事のない市販のシナリオをマスタリング中に読みながらぶっつけ本番でゲームをやったことがあるが、あれはひどいゲームだったなぁ。途中 で、前にアドリブで言った台詞との矛盾が出たりしてな。何といっても、マスターすら結末を知らないんだから。
 まあ、それを、なんとかこじつけるのが、結構おもしろかったんだけど」
神官「うん、あれは、いま思い出してもひどいゲームだったなぁ……」
先輩「そんなに、しみじみと言わないでくれよ〜」

騎士「では、次は反対意見を出した、神官戦士さんに、なぜかを聞きたいんですけど」
神官「だから言ったろう……」
魔法「戦闘がないからだ」
神官「きさまは、黙っとれぃ!
 そうだな。まず言いたいのは、ストーリーの都合で、キャラクターの立場が押しつけられて いるということだ」
騎士「どういうことです?」
神官「つまり、今回のシナリオは、みんなが言うように自由度は高く、アドリブも利いていて、正体のわからない怪物に怯える村人たちの雰囲気もよく出ていた。
 だが、結局、我々がどのように行動したとしても村人の反応や、情報操作によってキャラクターはスキュラを退治する悪役側になってしまう。ストーリーの都合で な」
騎士「最後には、それが入れ代わるんだからいいじゃないですか」
神官「それは、つまりマスターの都合にあわせて、キャラクターが動かされているということだ。それでは、過程を楽しむRPGの楽しさがないんじゃないのか」
騎士「しかし、どんなゲームでもキャラクターはマスターの手の上で遊ぶんですし、楽しい方 向に導いてもらえるように、マスターに上手くだまされるのがプレイヤーだと思うんですけど」
神官「楽しい方向というのに、マスターの主観が入りすぎているときはどうするんだ?」
魔法「つまり、今日のゲームはさゆりちゃんの主観が入りすぎて、おまえには共感できるところがなかったというわけだな」
神官「ああ、そうだ。言葉は悪いが、感動の押し売りって感じだったな」
騎士「なら、あなたはどうしたかったんですか。あの終わり方じゃあ、不満だったと」
神官「いや、あのシナリオは、あの終わりかた以外には考えられない。なぜなら、ストーリーがあのように終わるために、それまでのストーリーが作られ、そのよう にストーリーは流されていたからだ」

騎士「ちょっと待ってください。最後に、僕達がスキュラが悲しそうにしているのに気づいて、それでスキュラはロイドのためを思って攻撃をしているんだとわかっ たんでしょ。もし、それを僕らが気づかなかったらどうしたんでしょう。その辺のところは、シナリオにあったんですか」
先輩「うーん、俺のシナリオとはだいぶ変わっていたからわからないが、たぶん、その場の雰囲気に任せるってやつだったんじゃないかな。まさに、アドリブってや つだ」
騎士「じゃあ、最後の展開を決めるのは、やっぱりプレイヤーだったんじゃないですか。別に、ストーリーを押しつけられているわけじゃあなかったんですよ」
神官「いや、そういう単純な問題ではなくてな……マスターは、それまでのストーリーによる情報操作によって、そのような展開以外の選択肢がプレイヤーの意識か ら消すことができるんだ。よって、我々はその選択肢を自分で選んだのではなく、無意識のうちにマスター選ばされたわけであり……これは、幼いときから画一的教 育の場で押しつけられた借り物の道徳心などが身に染み付いている日本人の体質を悪用したものであり、これは現代常識人の凝り固まった視野の狭い……」
魔法「そんなこと、さゆりちゃんが考えてたと思うのか?」
神官「……いや、思わん」
魔法「だろ? とにかく、おまえの言い分もわかるが、今回はおまえの負けだな」
神官「勝ちとか負けと彼の問題じゃなくてなあ……そういえば、あのシナリオはYが作ったって言ったな。おまえだったら、意識してやったとしてもおかしくない。
 だいたい、おまえのシナリオは、いつもいつも貴様のねじ曲がって、ひねくれた価値観がにじみ出してくるような、ひとりよがりで、排他的で、プレイヤーの思惑 を無視したシナリオで……」
先輩「なっ、なんだか。話が、変な方向にいっちゃったな。
 おっと、皆さん主役の登場だ」


 ドアを開けて、さゆりちゃんが怖々入ってくる。


さゆり「わたし、喫茶店の個室に入るのは初めてですぅ。
 それに、皆さん集まって、いったいどうしたんですか?」
騎士「Yさんとさゆりちゃんのデートを邪魔しに……」
先輩「こらぁーっ!
 くだらん事を言ってるんじゃなーい!」

魔法「実は今日のゲームについて、熱く語りあってたんだよ」
グラ「僕はおもしろいって言ったのにねぇ〜 神官戦士さんは……」
神官「こっ、こら、よけいなことを……
 はっはっはっ、さゆりちゃん。
 だいぶ、マスターに慣れてきたようだが、精進を怠ってはならんぞぅ」

騎士「最後のシーンでの俺のせりふ。かっこよかったでしょ〜」
魔法「俺はシナリオの中盤で怪物の正体に気づいてたからな。誰かは、最後までハーピーだなんて言ってたけど」
さゆり「なっ、なんか、みなさん楽しそうですねぇ」
グラ「それでね〜、神官戦士さんったらねぇ〜」
神官「黙れといっとろーに」 

先輩「ふ〜……結局、なんだかんだいって、みんな、さゆりちゃんのゲームが大好きなんだよな〜。もちろん、さゆりちゃんのことだって……」
さゆり「先輩、何か言いました?」
先輩「いや、別に……」
神官「なにを、まとめに入ってるんだぁ!
 まだ、貴様への話はおわっとらんぞ!」
騎士「そうそう、まだまとめるには早いですよ」
魔法「そのとおり。まだまだ、話はこれからだからな」
グラ「だって、僕たち……」
さゆりちゃんを除く全員、声を揃えて

「あーる・ぴー・じーが、だ〜い・すきなんだも〜ん」

さゆり「は、はあ……みなさん、お元気ですねぇ」
 呆気にとられるさゆりちゃん。
 やはり、まだこの連中のノリについていくには修業が足りないようだった。もっとも、そんな修業はしなくてもよい気がするが……

6時限目へ続く……


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