『冒険の概略』
古代王国時代の魔法兵器が、偶然にも悪党の手に渡ってしまいました。
悪党は、その魔法兵器を使ってある村を脅迫しており、冒険者達は、その村から悪党退治を依頼されることとなります。
幸いなことに、悪党は魔法兵器の正しい使い方を理解してはいませんが、その恐るべき兵器は自力で力を蓄え、長い眠りから目を覚ましつつあります。
冒険者達は、魔法兵器が完全に目を覚ます前に悪党を撃退しなくてはなりません。もし、魔法兵器が完全に復活すれば、大変な災厄を巻き起こすこととなるでしょ
う。
この冒険シナリオは冒険者レベル1〜3のキャラクター、3〜5人を想定しています。ゲームマスターは、冒険者であるプレイヤー・キャラクターの強さに応じ
て、登場する敵の強さや数を調整してください。
『冒険の舞台』
このシナリオは、アレクラスト大陸の極東地方に属するアノス王国を舞台としております。より細かく言えば、アノス王国の南西部の街であるソーミーのさらに西
に伸びる山脈の麓にあるサダトア村を舞台としています。
サダトア村は、このキャンペーンの拠点となる村です。
村の位置する地形が、以後のシナリオに関わる状況も多いので、村の場所を変更することはお奨めできません。もし、どうしても他の地域でのプレイをゲームマス
ターが希望した場合、出来る限り地形的に似た場所を選んでください。
特に、近くに山脈があることが重要です。
『NPC紹介』
ウィルフレッド(人間・男・37歳)
村を脅迫している悪党です。
くすんだ赤毛と、不健康そうな肌。背は低く、いつも眉をしかめたような表情をしており、あまり人好きする外見ではありません。
性格もその外見に相応しいもので、邪悪、卑劣と呼ばれることに躊躇を感じません。
ずっと旅人狙いの追い剥ぎをして生きてきましたが、偶然に発見した魔法兵器を使って、一儲けしようと考えています。
邪悪な者同士、数匹のゴブリンたちを仲間として行動しています。もっとも、その仲間関係も一時的なものに違いないのですが。
ジェービズ(人間・男・27歳)
古くからこの地方を治めている地方貴族です。
細身の長身で、短く刈られた黒髪に形の良い眉の、なかなかの二枚目です。
サダトア村とその周辺のブドウ畑を領地とし、まじめで有能な領主だと、村人達にも慕われています。
このたびの事件で頭を悩まし、最後の頼みとして冒険者たちを雇うこととなります。
アジェンタ(人間・女・19歳)
領主の屋敷で働くメイドです。
薄い色の金髪に、静かな物腰。祖母の代から領主の家に仕えているため、生まれついてのメイドとして完璧な礼儀を身につけている女性です。
この屋敷ではメイドの立場はそれほど低くなく、時には領主の相談役となることさえあります。その意味では、執事に近いと言えるかも知れません。
また、彼女は秘かに領主に想いを寄せており、苦悩する彼の姿を見て心を痛めています。
ブレンダン(人間・男・40歳)
村で唯一の酒場「マリーの酒場」を経営している、酒場の主人です。無名ですが、ワイン造りの名人でもあります。
人の良い親父さんで、ちょっと気の弱いところがあります。奥さんに先に逝かれてしまっており、一人娘のマリーを溺愛しています。
マリー(人間・女・16歳)
ブレンダンの一人娘で、父親思い娘です。
とても明るく可愛らしい少女で、村の人気者です。
酒場の名前は、そんな彼女の名から付けられました。
『冒険への導入』
シナリオは、ソーミーの冒険者の店からスタートします。
冒険者たちが店で暇そうにしていたり、仕事について主人に尋ねた場合、ちょうど良い仕事があると仕事の斡旋をしてくれます。
仕事の内容は、サダトア村に居座っているゴブリン退治です。
より詳しい内容は依頼主である、その土地の領主に直接聞いてくれとのことです。
成功報酬はパーティーに1200ガメルです。
サダトア村はソーミーから西へ続く街道を徒歩で行って、三日で着く距離です。山脈の麓にある特徴のない村ですが、「冒険者レベル+知力」を基準とする目標値
8の成功ロールに成功すれば、この村には無名ですがおいしいワインを作る職人がいるということを思い出します。
酒場の主人や、サダトア村に寄ったことのある旅人に聞いても、ワインの話が聞けます。
また、酒好きのキャラクターなら、そのワインのことを無条件で知っていても良いでしょう。そして、そのことを思いだした冒険者ならば、いても立ってもいられ
ず村へ行きたいと考えることでしょう。
ゲームマスターは、この導入以外の方法でシナリオをスタートさせても構いません。
冒険者達が旅の途中出会った場合は、偶然、サダトア村に立ち寄って、冒険者を求めていることを聞いたということにしてもよいでしょう。
もし、導入が面倒臭いと思うなら、突然「路銀も乏しくなった君たちは、ゴブリン退治をしてくれる冒険者を探している、サダトア村という村に向かっている」と
始めても良いでしょう。
『本編』
1,街道にて
依頼を受けた冒険者は、サダトア村へ向かうこととなります。
西へ行くに連れて、彼方に見えた山脈が徐々に大きく見えてきます。
季節は春の初めで、山脈の頂には残雪が白く残っているのが見えます。暖かな日差しに空気は柔らかく、長い冬でこわばった身体をほぐすには、ちょうど良い旅と
なるでしょう。
目指すサダトア村は、山脈の麓にあります。やがて殺風景だった街道は、春を迎え若葉が生えだしたブドウ畑へと変わっていきます。
これが、サダトア村の特産であるワインの原料となるブドウを作る畑です。
レンジャーの「動植物鑑定」で目標値10の成功ロールに成功すれば、この畑のブドウの木に活力がないことに気付きます。
また、シャーマンの「サイレント・スピリット」などで、このブドウ畑の精霊力を調べた場合、何らかの自然ならざる要因によって、このブドウ畑一体の生命力が
弱まっていることがわかります。ただし、精霊達の言葉は曖昧で、それ以上のことはわかりません。
もうじき村が見えるというところで、遠くのほうで男の悲鳴が聞こえてきます。
声の主はブレンダンで、二匹のゴブリン(データはルールブックを参照)に追われているところで、よろよろと街道のほうへ逃げてきます。
ゴブリンはいち早く冒険者の存在に気付き、すぐに慌ててブレンダンを置いて逃げ出してしまいます。かなり距離があるところでゴブリンは逃げ出してしまうの
で、魔法などの手段で足止めをすることは出来ません。あとを追おうとしても、ブドウ畑の中を巧みに逃げていくゴブリンを追うのは非常に困難です。地面が乾いて
いるため、レンジャーの「足跡追跡」でも追うことは不可能です。
ここでゴブリンが捕まってしまうと、シナリオの後の展開に支障を来すので、なるべくゲームマスターはゴブリンを逃がすようにしてください。
2,ブレンダンの容態
ブレンダンは自分が助かったことに気付くと、緊張の糸が切れて、そのまま意識を失ってしまいます。彼の容態を見てみると、外傷はないのにひどく弱っていま
す。
レンジャーの「応急手当」で目標値10に成功するか、シャーマンの「センス・オーラ」で調べてみると、まるで重病人のように彼の生命力と精神力が弱っている
ことがわかります。「キュアー・ウーンズ」と「トランスファー・メンタルパワー」で、彼の生命力と精神力を回復させてあげれば、彼の容態は安定します。
しかし、それでも意識を取り戻すことはありません。再び、レンジャーの「応急手当」で目標値8に成功すれは、彼の疲労は一時的なものではなく、魔法的な治療
だけでは不十分であることがわかります。つまり、彼に必要なのはしばしの療養というわけです。
彼は荷物などは持っていません。その格好から、サダトア村の住人ではないかと予想できます。
3,サダトア村
サダトア村は緩やかな山の斜面にある、やや大きな村です。
西の山脈方面には深い森が広がり、ブドウ畑と麦畑が村を取り囲むように扇形に広がっています。
坂の多い村ですが、水は豊富で、村人達はそれなりに裕福な様子です。
ブレンダンを連れてサダトア村へ着けば、村人達は驚いて冒険者達を取り囲み、いったい何があったのか矢継ぎ早に質問をしてきます。
冒険者がブレンダンのことを尋ねた場合、彼がこの村の酒場の主人であることを教えてくれます。
冒険者がすぐに領主に会いたいと考え、村人にブレンダンのことを任せれば、彼らは好意的に引き受けてくれます。また、その酒場へ彼を連れていきたいというの
ならば、冒険者をマリーの酒場まで案内してくれます。
4,マリーの酒場
村唯一の酒場である「マリーの酒場」は、村の中央に位置する広場に面したところにあります。
一階は酒場、二階は宿屋、地下はワイン貯蔵庫となっています。酒場は村人達がよく出入りしており、宿屋のほうは街道を通って山脈越えをする旅人たちがたまに
利用しています。
もし、探索者がブレンダンを連れて店に入れば、店番をしていたマリーが迎えに出てきますが、ブレンダンの様子を見ると驚いて駆け寄ってきます。
とりあえず命に別状がないことを知ると、マリーはほっとした様子で、冒険者達に礼を述べます。
マリーにブレンダンのことを尋ねると、ブドウ畑のことが気にかかって、ひとりで様子を見に行ったのだが、と話します。
彼女には、ブレンダンがこのようなことになってしまったことの心当たりはありません。ただし、最近、ブドウ畑に元気がないことを心配しており、その心労がた
たったのかも知れないと語ります。彼が魔法で回復しないのは、その疲労がたまっているせいのようです。
ブレンダンのことを村人に任せて、先に領主のほうへ行った場合も、村人達から冒険者のことは聞かれているので、感謝の言葉を述べてみんなを歓迎してくれま
す。
おそらく、冒険者はここに宿を借りて、事件の調査にあたることでしょう。ブレンダンを助けてくれた冒険者達のことを、マリーは最高のもてなしで歓迎してくれ
ます。
噂に違わぬ上物のワインと、マリーの自慢料理は、きっと冒険者の胃袋を満足させることでしょう。
5,領主の依頼
領主の屋敷は村外れの、さらに山脈に近い高台にあります。
建物自体はそれほど大きくなく、ずいぶんと古いものです。
呼び鈴を鳴らせば、メイドのアジェンタが応対に出ます。彼女にソーミーの冒険者の店から仕事を紹介されたと告げれば、領主へ取り次いでもらえます。
この屋敷の主人である領主のジェービズは執務室で待っており、冒険者達がやってきたことに安堵の色を見せます。
彼は、今回の事件は自分たちでは手に負えない難問でるあると正直に打ち明け、冒険者達の協力を仰ぎます。その態度から、村のことを親身に案じていることが伺
えます。
ゲームマスターはプレイヤーたちが領主に対して良い印象を受けるようマスタリングをしてください。なぜなら、このシナリオでは依頼と報酬以外にヒキがないの
で、なるべく冒険者の同情心に訴えたほうがゲームがスムーズに進むからです。
・依頼の内容
サダトア村の重要な収入源であるブドウ畑が、最近になっておかしくなりました。天候もよく、病気にかかっている様子もないのに、畑全体に生気がなくなってし
まったのです。
時を同じくして、領主の屋敷に手紙が投げ込まれました。
その内容は、村のブドウ畑に呪いをかけたというもので、現在のブドウ畑の変化はその呪いのせいだというのです。
手紙には、二万ガメルを用意すれば呪いを解いてやるともあったのですが、領主としてはそのような邪悪な取引に応じるつもりはありません。
しかし、相手が呪いとなると、魔法的な知識を持たない領主や村人達だけではどうしようもありません。そこで、このような厄介事に強い冒険者達を雇ったので
す。
領主は最近、村の周辺をうろついているゴブリン達が怪しいと話しますが、知能の低いゴブリンがこのようなまわりくどい策を立てるのは不自然なので、その背後
に別の黒幕がいるのではとも思っています。
最後に、冒険者がこの村にやってきたのは単純なゴブリン退治のためということにして、この事件の真相は村人たちに内緒にしてくれと頼みます。ブドウ畑の呪い
のことは村の存亡に関わることなので、不用意に村人達を不安がらせたくないという考えからです。
6,調査
問題のブドウ畑を調べてみれば、とりあえず「1,街道にて」に書かれていることがわかります。
より詳しく調べてみようとするならば、ブドウ畑の様子を数時間歩き回って調べてみる必要があります。
畑の状態を見て回った後で、セージの「知識」で目標値9の成功ロールに成功すれば、これが魔法の力によって大地の生気が吸い上げられているのではないかとい
う推測に達します。つまり、単純に呪いによって生気が減退されているのではなく、何者かがブドウ畑一帯の精気を奪っているということです。
もちろん、そんなことができる魔法は現在には存在しません。もしあるとすれば、古代王国の魔法技術しか考えられないでしょう。
ただ、現時点では、その何者かがどこにいるのかはわかりません。シャーマンの「サイレント・スピリット」でも、この土地のあらゆる精霊力が弱っていることはわ
かるものの、その元凶たるものの存在まではわかりません。
村人達に事件のことを聞いても、ほとんど有用な情報は得られません。
ブドウ畑にゴブリン達が姿を現したのは、約二週間ぐらい前で、ブドウ畑の様子がおかしくなったのもちょうどその頃です。勘の良い村人達の中には、ブドウ畑の
異変とゴブリンを結びつけて考えているものも出始めています。
ところで、ゴブリン達は頻繁に村の近くに姿を見せるわりには、村人達に手を出すようなことはまったくなかったそうです。まるでゴブリン達は、ブドウ畑を見張っ
ているような様子だったと村人達は不思議そうに話します。
このことを聞いた冒険者は、ブレンダンがゴブリンに襲われていたことを奇妙に思うことでしょう。
7,ブレンダンの話
事件の調査を終えた冒険者は、切りの良いところでマリーの酒場へ戻ることでしょう。
すると、意識を取り戻したブレンダンが冒険者の前に姿を現し、感謝の言葉を述べます。
ゲームマスターはブレンダンが意識を回復するタイミングに注意して、ある程度、プレイヤーが事件の調査と推測が完了したところで、このイベントを発生させる
ようにしてください。なぜなら、このあとすぐにシナリオはクライマックスへと移行するからです。
冒険者がブレンダンにゴブリンに襲われたときのことを尋ねれば、以下のようなことを話します。
・ブレンダンの話
ブレンダンはブドウ畑の異変が気にかかって、一人でその様子を見に行きました。ワイン職人である彼は、村人以上にブドウ畑のことが心配だったのです。
彼は、畑の中でも一番良いブドウを実らせる「南の畑」と呼ばれる場所を見に行きました。
そのときに、そのブドウの株の根元に拳大の真ん丸な赤黒い石を偶然に発見したのです。これまで、見たことの無いような不思議な色をした石で、奇妙に思ったブ
レンダンは石にちょっと触れてみました。
その途端、急に体が怠くなり、めまいがして立っていられないようになってしまいました。さらに、まるて待ち伏せをしていたかのようなタイミングでゴブリンた
ちが現れて、自分を捕まえようとしてきたのです。
ブレンダンが力を振り絞って必死に街道のほうへ逃げ出したところを、冒険者に助けられたというわけです。
これまで、村の辺りをうろついていたゴブリンが人を襲ったという話を聞いたことがなかったので、油断していたとブレンダンは反省しています。
8,ブドウ畑の奇石
ブレンダンに詳しく場所を教えてもらえば、その奇妙な石のあったところへ行くことが出来ます。
昼夜に関わらず、ゴブリンとウィルフレッドはこの奇石を見張っています。
彼らの作戦は、まずは遠くから石に近づくものはいないかを見張っています。そして、石のことに気付かねばそのまま見逃しますが、万が一、石の正体に気づいたも
のがいた場合は襲撃を仕掛けてきます。
その際にも、相手が不用意に石に触るのをじっと待っています。そうしたほうが、ずっと安全に襲えるからです。
彼らの待ち伏せに気付くには、レンジャーの「危険感知」で目標値14の成功ロールに成功しなければなりません。また、もし成功しても、どこからか視線のよう
なものを感じるといった、漠然としたことしかわかりません。
ブレンダンの教えてくれたところへ到着すると、確かに根元に奇妙な石があります。あまり目に付かないような所にこっそりと置かれており、普通ならば見逃して
しまうようなもので、このブドウ畑を特に気にかけているブレンダンだからこそ発見できたものです。
ただ、この時点で奇石の大きさは拳よりも二回りぐらい大きくなっています。これは奇石がブレンダンの生命力と精神力を吸収して成長したためです。石の大きさ
の相違は、単なるブレンダンの思い違いと片づけられてもよいような問題ですが、ゲームマスターは伏線としてプレイヤーの頭にこの事実を印象づけさせてくださ
い。
ソーサラーの「センス・マジック」に成功すれば、この石が強烈な魔力を蓄えており、間違いなくマジックアイテムの一種であることがわかります。
シャーマンの「センス・オーラ」をすれば、この石の中にあらゆる精霊力が混沌として渦巻いていることがわかります。それは、魔法によって精霊力がねじ曲げら
れた非常に不自然な状態です。
セージの「知識」で目標値13の成功ロールに成功すれば、この石の正体が分かります。詳しくは「11,奇石の正体」の記述を参照してください。
冒険者が不用意に素手で石に触れると(ガントレットをつけていても無駄です)、突然、全身の力が抜き取られたような感覚を覚え、体が怠くなります。数値的に
は、生命力と精神力が共に1/6切り上げになってしまいます。ただし、冒険者はタフなので「キュアー・ウーンズ」等で回復してもらえば、いつも通りに動くこと
が出来ます。
石を動かすには、素手で触れないように木の棒や紐で上手く運ぶといった方法を取れば、安全に運ぶことが出来ます。石に数センチぐらいの近くまで寄ると、直接
触れていなくても、その影響を受けてしまうことになります。
ただし、冒険者が動かそうとしてもなかなか石は動きません。てこなどを利用すれば、石はメリメリと音を立ててやっと動きますが、なんとその裏側には黒い木の
根のようなものがびっしりと細かく地面に張り出しています。
その根は石から生えており、ニョロニョロと蠢き、空中をまさぐるようにしています。その様子は、なんとも不気味なものです。
ゲームマスターは、この不可思議な奇石の正体と、ブドウ畑の異変との因果関係などをプレイヤーに推理させる時間的余裕を与えてください。この後は、どんどん
と展開が進んでしまうので、この機を逃すと事件の真相をじっくりと考える時間が無くなってしまうからです。
そして、ある程度、事の真相がプレイヤー達にも見えてきたところで、ウィルフレッドとゴブリン達の襲撃を仕掛けてください。
9,ウィルフレッドとゴブリン
・ウィルフレッド
器用度=15(+2) 敏捷度=18(+3) 知力=15(+2) 筋力=12(+2)
生命力=15(+2) 精神力=12(+2)
所有技能:シーフ3、セージ2
生命抵抗力:5 精神抵抗力:5
冒険者レベル:3
武器:ショートソード(必要筋力8) 攻撃力5 打撃力8 追加ダメージ5
楯:スモールシールド(必要筋力1) 回避力7
鎧:ハードレザー(必要筋力8) 防御力8 ダメージ減少3
会話:東方語、共通語、ゴブリン語
・ゴブリン×4匹(データはルールブック参照)
ウィルフレッドは、まずゴブリン達を先に戦わせて、自分は後方で見守っています。冒険者が自分に近づこうとしても、上手く逃げてゴブリンと戦わせようとしま
す。彼を直接狙うには魔法しかありません。遮蔽物や交戦中の敵味方がいるため、飛び道具は使えません。
彼は生来の卑怯者なので、滅多なことがない限り自ら危険を冒そうとは考えません。
ゴブリンが最低でも一匹倒されてから、戦いの途中に「冒険者レベル+知力」で目標値10の成功ロールに成功すると、石から生える根のようなものがゴブリンの
首筋に少しずつ絡みついているのに気付きます。一ラウンドをかけて「センス・オーラ」でゴブリンの体を見てみれば、ゴブリンの生命の精霊が急激に石に吸い取ら
れていくのがわかります。また、それにつれ奇石の精霊力が一段と大きくなり、見た目にも石が大きくなっていることがわかります。最終的に、奇石は人の頭ぐらい
の大きさまで成長します。
ウィルフレッドはゴブリンが少なくなり、自分が直接戦わねばならなくなるか、もしくは魔法などで生命力が半分以下に減らされてしまった場合、すぐに降伏しま
す。
ゲームマスターは、冒険者の攻撃で彼が死んでしまわないよう早めに降伏するよう注意してください。クリティカルなどのアクシデントが重なった場合も、データ
を変更するなどして対応をしてください。
10,ウィルフレッドの告白
四匹のゴブリン達を倒した冒険者達の手際に、ウィルフレッドはすっかり戦意を喪失しています。もともと、脅迫などというこそくな手段で金儲けをしようとして
いる人間なので、自分の身に危険が及ぶのには慣れていないのです。
もし、冒険者が奇石のことを尋ねれば、ウィルフレッドは包み隠さず以下のような話をします。この奇石をどうにかしなくてはブドウ畑を元通りにすることは出来
ないのですから、すぐにウィルフレッドを殺してしまおうなどと考える冒険者はいないことでしょう。
・ウィルフレッドの話
この奇石は、ウィルフレッドがとある古代遺跡の廃墟で偶然に発見したものです。
見たところ、何の価値も無さそうな石でしたが、その効力は彼自身が触ってみることで身をもって明かされました。また、この石が周辺の木々などから生命力を吸
い取る効果があることも発見しました。
そのことに気付いたウィルフレッドはゴブリン達を手なずけ、手近なサダトア村を脅迫しようと考えたのです。
ウィルフレッドは、この石の正体をまったく知りません。この石がどのような目的で造られたかよりも、どのように利用して金儲けをするかしか考えていないから
です。
また、この奇石をブドウ畑から取り除く方法も白状します。もっとも、直接、手に触れずに運びだすだけでよいのですが。
ウィルフレッドが古代遺跡から石を盗み出してきたという話を聞いた冒険者は、セージの「知識」で目標値11の成功ロール(今度は手掛かりがあるので、目標値
が下がっています)に成功すれば、この石の正体が分かります。詳しくは次項の記述を参照してください。
11,奇石の正体
ブドウの木の根元に置かれた奇石は古代王国時代の魔法の物品で、当時の魔法使いたちには、「ケイオス・シード」と呼ばれていました。
これは魔法兵器として特殊なゴーレムを製造する道具ですが、その製造過程に特徴があります。
ケイオス・シードは外界から正常な精霊力を自ら吸収し、蓄えることで成長します。精霊力ならばどんなものでも貪欲に吸収し、混沌としたひとつのエネルギーに
変換してしまいます。また、あたりに精霊力が満たされている場合、より効率良く吸収するために植物の根のような触手を張り出すこともあります。
その姿が植物の種子に似ている為、このケイオス・シードという名前をつけられたのです。
ケイオス・シードは蓄えたエネルギーが必要量を満たすと成長を始め、恐るべき魔法的擬似生命体となります。その最終的な姿は、人型とも不定形であるとも言わ
れており、定かではありません。
現在、ブドウ畑にあるケイオス・シードはあと一歩のところまで精霊力を蓄えており、非常に危険な状態です。
12,復活した古代魔法兵器
ウィルフレッドが降伏したところで、冒険者達はほっと一息つくことでしょう。
しかし、本当の恐るべき敵がまだ潜んでいたのです。
ゴブリンの生命力を吸い取って、急激に力を蓄えたケイオス・シードは、最後の獲物として降伏したウィルフレッドと冒険者達を狙い始めたのです。
冒険者達がウィルフレッドから事件の顛末を聞き終えた頃を見計らって、ゲームマスターはケイオス・シードを行動に移らせてください。
まず、しなやかなムチのような触手が目にも止まらぬ素早さでウィルフレッドの首を切断します。頭部を失った身体からは勢いよく血が吹き出し、まわりにいる冒
険者は多量の血しぶきを浴びることとなるでしょう。
そして、驚く冒険者の隙をついて、ケイオス・シードはまるで生き物のように触手を使って素早く移動し、ウィルフレッドの失われた頭部の代わりに取付こうとし
ます。
その行動を阻止するためには、とっさにケイオス・シードを剣などで叩き落とさねばなりません。そのためには、攻撃点の目標値18に成功する必要があります。
成功すれば、ケイオス・シードは地面に落ち、ほぼ無力な存在となります。いまの行動に蓄えた力のかなり消費してしまったため、さきほどのような素早い行動は出
来なくなってしまっているのです。
その後、ケイオス・シードをどう扱うかは冒険者次第です。もちろん、単純に武器で叩き壊すことも可能です。
もし、冒険者が素手で取り押さえようとした場合、触手が腕に巻き付き、精神力が0点になるまで一気に吸い取られてしまうため、ケイオス・シードを取り押さえ
ることは不可能です。その後、ケイオス・シードはウィルフレッドの身体にとりつきます。
ウィルフレッドの身体にとりつくことに成功したケイオス・シードは、すぐさま触手を身体に深く食い込ませ、まるでウィルフレッドの頭になったかのように接合
してしまいます。
まだ、この状態のケイオス・シードは完全な形態ではありません。これから、冒険者たちの生命力と肉体を奪って、さらなる成長を続けるつもりなのです。
この恐るべき魔法兵器を倒すチャンスは、成長が不完全な今しかありません。
ケイオス・シード(ウィルフレッドの肉体を元とした形態)
モンスター・レベル=5 知名度=13 敏捷度=8 移動速度=10
出現数=単独 出現頻度=きわめてまれ 知能=低い 反応=敵対的
攻撃点=13(6) 打撃点=8 回避点=10(3) 防御点=6
生命点/抵抗値=21/14(7) 精神点/抵抗値=12/12(5)
ケイオス・シードの正体はあらゆる精霊力の混沌としたエネルギー体です。
そのため、ケイオス・シードには直接対象に仕掛けるような精霊魔法は一切通用しません。それらの精霊力は自らのエネルギーへと変換してしまうからです。ただ
し、古代語魔法や神聖魔法は通常の効果を発揮します。
また、ケイオス・シードの攻撃は直接生命の精霊力を奪い取るものなので、通常の鎧では効果がありません。そのため、ケイオス・シードの攻撃のダメージは冒険
者レベルでしか減少できません。
また、素手で攻撃するなどしてケイオス・シードに直接触れた場合、自動的に生命点に8点のダメージ(冒険者レベルで減少は可)を受けることになります。必要筋
力が3以上の武器を使用すれば、ケイオス・シードに触れずに攻撃をすることが可能です。
生命点か精神点が0となるとケイオス・シードは動きを停止し、ウィルフレッドの身体からぽろりと落ちます。そして、みるみるうちに小さくなっていき大豆ぐら
いの大きさになってしまいます。
このケイオス・シードをどう取り扱うかは冒険者次第です。
武器などで叩き割れば、ケイオス・シードは完全にその機能を失います。
もし、この状態のケイオス・シードに直接手で触れた場合、何の影響もないことがわかります。
丸一日時間をかけて調べてみれば、この小さくなったケイオス・シードが精神力を蓄える乾電池のような役目を果たすことがわかります。
ケイオス・シードに対して、使用者は希望するだけの精神点を消費することで、消費した精神点−1点分の精神点を最大6点まで蓄えることができます。もちろ
ん、蓄えた精神点は魔晶石のように自由に使用することができます。魔晶石より優れている点は、消費した精神点を容易に補充することが出来るところです。
一見、とても便利な道具のように思えますが、実はケイオス・シードは精神点が補充されるたびに自らの精神点をも蓄えているのです。具体的には、精神的が一回
補充される毎に、もしくはケイオス・シードを所持している冒険者が精霊魔法を受ける毎に、ケイオス・シードは1点の精神点を蓄え、累積していきます。
この精神点の合計が6点に達したとき、ケイオス・シードは再び行動を開始することができるようになりますが、実際にケイオス・シードが本性を現すタイミング
はマスターの判断に任されます。
以後のシナリオ中で、思わぬタイミングでの思わぬ敵の登場は、さぞかし冒険者達を驚かせることとなるでしょう。
『冒険の結末』
ケイオス・シードを倒せば、この事件は解決です。
ケイオス・シードによって奪われていた大地の精霊力も回復し、数日後にはブドウ畑は元の姿を取り戻すことでしょう。
事件の真相と、その原因を根絶したことを領主に報告すれば約束の報酬1200ガメルは支払われます。
また、事件が解決したので、領主の口からブドウ畑の異変についての真相も話されます。このことを知った村人達は、村を救ってくれた冒険者達に感謝を込めて、
大宴会を催してくれます。
もろちん、酒宴の主役はサダトア村のワインで、領主の屋敷の人々も参加して、それは盛大に行われます。
ケイオス・シードを見事打ち倒し、事件を解決した冒険者達は経験点1000点を得ます。もし、何らかの理由でケイオス・シードを倒すことに失敗した冒険者は半
分の500点しか経験点を得ることは出来ません。